第百五十七話:父と子の会話
裁定の余韻が残る中。
グランディルが、静かに口を開く。
「アラン、その前に話がある」
侍従が一歩進み出る。
「応接間は整っております。そちらへ」
「うむ」
頷き、それからリディアへ視線を向ける。
「リディア嬢、少し席を外させていただく」
一拍。
「アラン……何、堅苦しい話では無い」
「はい」
リディアは静かに頷く。
「……ぐっ……はい、陛下……」
アランは、わずかに表情を歪めながら応じる。
そのまま、二人は応接間へと向かった。
応接間。
扉が閉まる。
静寂が落ちる。
「で?」
グランディルが、唐突に言う。
「……陛下……で、とは?」
「誰もおらんのだから、父上と呼びなさい」
「父上、主語が抜けています」
即答だった。
「せっかくギーゼロッテ嬢を使って」
「お前の想い人を引きずり出そうと思ったら」
一拍。
「意外や意外」
「まさか、あの天才宰相レオナールが転生した少女とはな」
「侯爵令嬢を当て馬に使えるのは、陛下ぐらいですね」
「父上と呼びなさい」
「……父上」
わずかに間を置いて、言い直す。
「お前も、こうして王太子としては立派なのだが」
一拍。
「如何せん、子供らしく無いというか」
「私も記憶が無いとは言え」
淡々と返す。
「帝国最後の皇帝、フリードリヒ・エルンスト・アスティリアの転生体らしいですからね」
「……は?」
グランディルの動きが止まる。
一瞬、完全に思考が空白になる。
「あの、レオナールが唯一仕えた」
「若き賢王の?」
「言っておりませんでしたか」
アランは、平然と続ける。
「ユリウスが、私の事を伯父上と呼んでいるのは」
「報告に上がっているものだと」
「……」
沈黙。
グランディルが、じっと息子を見る。
それから。
「……アラン」
「はい」
「お前、リディア嬢の居る前と」
「それ以外では、性格が違わないか?」
「気のせいです」
即答だった。
揺るぎなく。
それが、余計に怪しかった。




