第百五十六話:王の裁定
沈黙が、満ちる。
すべてが出揃った。
過去も。
現在も。
選択も。
逃げ場は、ない。
「――裁定を下す」
グランディルの声が、落ちる。
低く。
揺るがず。
それだけで、場が支配される。
「ヴァル」
名を呼ぶ。
「貴殿は、過去において罪を犯した」
事実を、置く。
飾らず。
歪めず。
「その罪は、消えぬ」
一拍。
重く、落ちる。
「だが」
続ける。
「現在において、貴殿はこの者を守る存在である」
視線が、リディアへ向く。
「そして」
一拍。
「その役割を、全うしている」
評価を、与える。
否定しない。
「よって」
言葉が、定まる。
「過去の罪を理由とした、即時の断罪は行わぬ」
ざわめきが、広がる。
だが、止まらない。
「ただし」
一拍。
「その罪は、消えぬ」
繰り返す。
意味を、刻むために。
「今後」
視線が、鋭くなる。
「貴殿の命は、この者に捧げられるものとする」
重く、言い切る。
「守れ」
一言。
命令として。
「命に代えても」
沈黙が、落ちる。
逃げ場はない。
「……ああ」
ヴァルが、短く応じる。
それだけで、十分だった。
誓いは成立する。
「……」
グランディルは、次へ移る。
「リディア・アルヴェーヌ」
名を呼ぶ。
「貴殿は、すべてを知った上で選択した」
「はい」
迷いはない。
「……よろしい」
短く、頷く。
「その選択、認める」
はっきりと、言い切る。
王として。
公に。
「加えて」
一拍。
「貴殿の才覚」
視線が、場を貫く。
「本試験において、十分に示された」
評価が、確定する。
「よって」
言葉が、落ちる。
「宰相資格を、付与する」
場が、揺れる。
だが、まだ終わらない。
「なお」
一拍。
「王妃と宰相の兼任については」
わずかに、間を置く。
「法の整備をもって、これを認める」
決定だった。
未来を含めた。
王の意思。
「……アラン」
最後に名を呼ぶ。
視線が向く。
「この者を選ぶのであれば」
一拍。
「王としての責を、同時に負え」
静かに、言い切る。
「支えるのではない」
「並び立て」
重く、落ちる。
「それが出来ぬなら」
一瞬の間。
「選ぶ資格はない」
完全な沈黙。
すべてが、終わる。
裁定は、下された。
王によって。
この場にいる全員の。
運命ごと。




