第百五十五話:明かされる前世
わずかに緩んだ空気を。
再び、引き締める声が落ちる。
「……十分だ」
グランディルだった。
場の全てを見渡す視線。
揺るがない。
「この件」
一拍。
「余が判断する」
誰も、異を唱えない。
「……だが」
視線が、動く。
リディアへ。
そして。
ユリウスへ。
「前提が、足りぬな」
短く、言う。
「説明しろ」
命令だった。
「……」
ユリウスが、静かに息を吸う。
一歩、前に出る。
「承知いたしました」
敬語は崩れない。
「……この件を理解するには」
一拍。
「前提が必要です」
言葉を選ぶ。
「リディア嬢は」
わずかに視線を向ける。
「前世の記憶を持っています」
ざわめきが走る。
「その前世とは」
一拍。
「帝国宰相、レオナール・ヴァイスです」
空気が、止まる。
「……事実です」
ユリウスは続ける。
「そして」
一拍。
「私は、その息子です」
重い沈黙。
「……」
グランディルの視線が、リディアへ向く。
「……肯定するのか」
「ええ」
リディアは答える。
「それが、私です」
揺るがない。
だが。
それだけでは、終わらない。
「……」
グランディルの視線が、さらに動く。
もう一人へ。
「……では」
一拍。
「そちらは」
ルカを、見る。
「……何者だ」
場が、再び張り詰める。
「……」
ルカは、少しだけ間を置く。
視線を伏せるでもなく。
逸らすでもなく。
ただ、受け止める。
それから。
「……エリザベート」
短く、答える。
「……前世の、だ」
それだけだった。
余計な説明は、ない。
だが。
十分だった。
「……」
空気が、変わる。
今度こそ。
完全に。
偶然ではない。
事実として。
そこに、並ぶ。
「……なるほど」
グランディルが、ゆっくりと息を吐く。
思考が、繋がる。
「……ならば」
一拍。
視線が、ヴァルへ移る。
「辻褄は合う」
低く、言う。
納得の色を含んで。
そして。
場を見渡す。
王として。
判断するために。




