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分路

いつもお読みいただきありがとうございます!


今回は、それぞれの“向かう先”が決まり始める回となっています。


ここまでの流れで、それぞれが違うものを感じ、違う方向に進み始めていましたが、今回はそれがはっきりと“分かれ道”として見え始めました。


修験道、古い街並み、旧道、そして人の営み。

同じ大阪の中でも、向かう場所によって空気感がかなり違うので、そのあたりも楽しんでいただければ嬉しいです。


あと今回は、久しぶりに少しだけ陽向視点らしい日常感を入れられた気がします(笑)


それでは、第59話『分路』をお楽しみください!

ダムから屋敷に戻ってから、まずは風呂に入ろうということで皆で浴場に向かった。

その中で、今日のダムでの様子を見て、それぞれに課題のある場所に向かおうということになった。

詳しい予定については、食事の時に説明されるということで、一先ずは湯船でゆっくりすることにした。


「陽向よー、泰ちゃんとは仲良くできとるやんなぁ?」

「ん?普通に仲良くやらしてもうてるで?」

「よっしゃ、それならええんや。」


祖父が、納得したように言っているところを見ると、俺の方は泰源さんと行くことになるだろうなと思った。

どんな課題を出されるのか心配なところではあるが…。


風呂から上がって、居間の方に行くと女性陣が既に戻ってきていた。

たしかに、今日は長風呂だったなと思ったが、女性陣全員が戻ってきているとは思わず、少し驚いてしまった。


「みんな、えらい早いな?」

「梓ちゃんが、野乃花ちゃんのスタイルに妬いちゃって大変だったのよ…。」


疲れた姐さんの様子を見ると、恐らく姐さんも襲われたのだろうということは予想がついた。

野乃花ちゃんと姐さんはびっくりスタイルなので、成長過程の女子のやっかみを受けたのだろう。

一方の野乃花ちゃんの方は慣れたもので、ニコニコしたままだった。


「お姉ちゃんくらいなら気にならないですけど、真琴さんとか野乃花さんとかは反則です~!」


そのうち地団駄でも踏みそうな勢いだった。

余程気にしているのだろう…。


そうしているうちに、祖父が居間に到着した。

片手にそのあたりに置いていた広告と、ペンを持ってテーブルに着いた。


「とりあえず、明日はそれぞれ別行動にしてもらおうと思てるから、ちょっと説明するわな。」


そう言って、広告の裏にメンバーの名前と組み合わせを書き始めた。

境と澪ちゃん、俺と朔弥、姐さんと梓ちゃん、静流と野乃花ちゃん、礼音と澄玲ちゃんという組み合わせになっていた。

俺のところだけ男所帯だったので少し納得いかないものはあったが、何か思うところがあるのだろう。


「まずは、組み合わせはこの通りやねんけど、それぞれの行先やな。」

「自分たちは、土地勘がないんですがどうしたらいいですか?」


境が祖父に質問した。

確かに境の言う通りで、俺と祖父母は土地勘があるが、他のメンバーに土地勘はないのは当然だ。

そう考えると、誰かが同行しないと色々と問題が出るのではないかと思った。


「せやな、まず、境君たちにはワシが付いていく。」

「宗玄さんがですか?」

「せや、色々と思うところがあるさかい、一緒に行く必要があるねん。」


一度は驚いていた境だったが、色々考えた結果、それが妥当だろうと思ったのだろう。

祖父の話を聞いて納得したような表情になっていた。


「せやから、陽向にはワシやなくて、泰ちゃんに引率してもらうようにお願いした。」

「風呂で聞かれたで、何となく予想はしてたけども、どこ行くん?」

「山手の寺に修験道のがあるさかい、そこに行ってもらうように頼んどいたわ。」


なるほど、確かに三十三か所か何かに選ばれたやつがあった覚えがあった。

泰源さんは車に乗るのが苦手なので、運転は俺がするようにということで、話はついていると、先ほどの言葉に続けて言われた。

乗せたことの無い人だから少しは緊張するが、致し方ないかなと納得した。


「今回初で緊張するかも知れんけど、真琴ちゃんと梓ちゃんは婆ちゃんと、もともと城下町やった商店街を見てもらおうと思う。」

「え、私たちだけ毛色が違いませんか?」


姐さんは真面目なもので、即座に質問を返してしまった。

そりゃそうだろうなという表情の祖父が、続けて説明する。


「婆ちゃんの人脈がある、古い商店街やから、少し色んな人に会うて貰いたいんよ。」

「そのお店の人たちに色々あるんですね。」

「せやな、婆ちゃんと一緒に行ったら分かると思うわ。」


少し解せない感じの姐さんではあるが、祖父への信頼もあるので、一先ずは行ってからじゃないと分からないと納得していた。

恐らくあそこだろうというのは分かっているが、俺の方から説明するのも変なので当日のお楽しみにしてもらうことにした。

祖父にとっても、姐さんはお気に入りなのだろう。だから、祖母の人脈を紹介するという話だと思った。

まぁ、祖父の表情などを見ていても、姐さんの事を気に入っているんだろうなということは分かるのだが。


「で、静流君と野乃花ちゃんやな、自分らはちょっと古い街並みを探索してもらおうか思とる。」

「どのあたりになるんですか?」

「ちょい北の方に文化財あるで、その周辺やな。自分らやったら大丈夫やろうから、電車とバスで行ってもうてええか?」

「電車バスは大丈夫です。こっちも行ったら分かる感じですか?」

「せやな、それこそ行ってみたら、すぐに分かると思うわ。」


静流は祖父の言葉をあっさりと受け入れていた。

いつも通りというか、こういったところがスマートにできる静流は凄いなと、いつも感じてしまう。

野乃花ちゃんが一緒というところが少し心配ではあるけれども。


「岡部君のご指名やねんけど、礼音君と澄玲ちゃんは岡部君と隧道の方に行ってもらうことにしたんよ。」

「隧道ってどこでしょう?」

「県境付近にある旧道があるんやけど、そっちやったら自転車で行けそうなんや。」

「え、自転車ですか?」


礼音が場所を聞いたのに、祖父が回答したのだが、行先よりも自転車を使うところに澄玲ちゃんが反応した。

岡部さんからご指名ということで、途中までは岡部さんが自転車を積んだ車で同行してくれるらしい。

その先も同行はしてくれるのだが、自転車に乗っての移動になるので少し大変そうだなと思った。

まあ、若者だから頑張るのが良いと思う。


「せやな、マウンテンバイクをちゃんと準備する言うてたわ。」


そう言いながら祖父が豪快に笑った。それに対して礼音は無感情に受け止め、澄玲ちゃんはびっくりして固まっていた。

二人とも自転車に乗れないということは無いだろうが、山道を自転車というのは辛そうだなと思った。

礼音はなんともなさそうな表情をしているが、帰ってきてからの話が楽しみになってきた。


「境君には昨日と同じ車、陽向にはステーションワゴンを準備しとくから、二人は車で移動してもろてええか?」

「はい、自分は大丈夫です。」

「ああ、俺もええで。」


車移動組については車の準備もされるようなので問題なさそうだった。

電車組についてもICカードが共通化されているので問題はないだろう。

ただ、自転車を使う二人は、無事に帰ってこれるのだろうかと少しだけ不安になってしまった。


「ほな、明日に備えて今日はくつろごか~。」


祖父の一声で皆の緊張が少し和らいだようで、夕食を摂りながら色々な話をしていた。

個人的に一番気になったのが、女風呂で荒ぶった梓ちゃんの話ではあった。

予想通り、姐さんと野乃花ちゃんが犠牲になったそうだが、梓ちゃんの応援として澪ちゃんまで参加していたことは意外だった。

女子の間では色々あるんだなということを改めて感じた夜だった。


—— それぞれが向かう先には、違う“気配”が待っていた。

第59話『分路』でした!


今回は、次回以降に向けた“準備回”に近い内容となりました。


ただ、単純な説明回ではなく、それぞれのキャラクターが“どんな方向へ進み始めているのか”を描く回として書いていました。


境は“境界”へ。

陽向は“修験”へ。

静流は“違和感”へ。

礼音たちは“自然の奥”へ。


そして真琴さんたちは、“人の営み”の中へ。


それぞれが別のものに触れていくことで、この合宿そのものの意味も少しずつ見えてくるような構成になっています。


あと今回、自転車組が完全に危険な香りしかしないですね(笑)

礼音は普通に対応しそうですが、澄玲ちゃんが既に不安そうなのが書いていて楽しかったです。


一方で、静流&野乃花組は、静かな違和感を拾っていくような雰囲気になりそうです。

派手ではないけれど、じわっと怖い方向になりそうな予感があります。


そして、宗玄さん。

ここに来て完全に“導く側”として動き始めています。

何を見て、何を感じているのか。

そのあたりも、今後少しずつ描いていければと思っています。


引き続き、よろしくお願いします!

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