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照合

関西での出来事を経て、ようやく日常へ戻ってきました。

……とはいえ、何も持ち帰っていないわけではありません。


それぞれが見たもの、受け取ったもの、感じた違和感。

今回は、それらを少しずつ突き合わせていく回になります。

結果的に、一週間ほどの旅行を経て事務所に帰ってきた。

高校生も一緒だったので、連休を利用したのだが、連休をほぼ使い切る形になっていた。


静流の方は少し先に戻ったらしく、一緒に行った二人をそれぞれ送ってから連絡がきた。

一方、陽向はまだ戻っている最中らしく、真琴さんの方から電話がかかってきた。

とりあえず、みんな疲れているだろうということで、集合は明日にした。


紬ちゃん、澪と自宅まで送っていき、事務所に戻ってソファに寝転んでいる。

事務所のソファは来客時にも使うので、流石にソファベッドというわけにはいかないが、寝転べるくらいに大きいものにしてある。

考え事をするときや、疲れ果ててしまったときにちょうどいいからだ。

今もこうして色々と考えを巡らせている。


件の少女が、今回は少し具体的な言葉を遣っていた。

“まざる”というのはどういうことだ?

今までの出来事をそのままとらえると、少女のいるところと自分のいるところが“まざる”ということだろうか。

兎に角、明日になれば、それぞれの成果が集まるので、何かが分かるのではないか。

と、自分の中で結論付けて、今日のところは休むことにした。



「来たで~!」


朝っぱらから陽気な大声で目を覚ました。

一番最後まで移動していたはずの陽向が、今回一番元気なんじゃないかと思う。

陽向よりも前に到着していたらしい静流が、コーヒーメーカーでコーヒーを淹れていた。


「あ、起きたね。勝手に使わせてもらってるよ。」


まあ、この二人の事なので気にしていないが、相変わらず自由な奴らだなと思う。

それぞれに収穫があったのか、行く前よりは幾分かすっきりしているように見えた。


「二人とも、何かあったか?」

「せやな、色々と共有しときたいと思ててん。」

「俺の方も、とりあえずみんなで成果報告しようか。」


それぞれに何らかの現象は発生したこと。

ただ、現象がバラバラで、そこから受け取った内容が異なっていたことを話した。


「全員の共通点は、実際に見える空間の中に何かが入ってくるような感覚だな。」

「そうだね、形はどうあれ、実際にある目の前が、他の何かになるような感覚があるんだと思う。」


事象の大小や、直接的に作用する形の違いはあるが、一様に目の前に映っているものに何かが起こっていた。

件の少女に“まざる”と言われたことを思い出した。

もしかするとこれがそういう事なのだろうか…。


「少女に“まざる”と言われたんだが、もしかすると…」

「俺の方は少女に会わなかったけど、“まざる”っていうなら、そういう事なんだと思うよ。」

「せやな、多分、“俺らのいるところに混ざってる”って話ちゃうか。」


色々と話を整理してみると、そう考えるのが一番しっくりくる。

少女がいる場所が彼岸なのか此岸なのか、あるいは、そのどちらでもないのかはわからない。

ただ、自分たちがいる世界線と異なる何かに存在しているのだろう。


「あと、静流んとこと、こっちは“狐面”が出てきよったな。」

「そうだね、何と言うか、和風の白い狐の面で、赤い隈取みたいなのが印象的だったよ。」

「聞いた感じ、能面で使用されるようなデザインみたいだな。」

「せやせや、昔になんかの漫画とかでも出てきてた、あの能面みたいなやつや。」


イメージ通りとしたら、子供たちに白狐面ということなんだろうと思う。

となると、何か儀式的な意味があったりするのだろうか?

偶然にしては、あまりにも揃いすぎていた。


「多分、お面自体に意味はあらへんと思うわ。子供が顔を隠すための手段やったんちゃうか。」

「俺の方も面はしてたけど、儀式みたいな気持ち悪さは感じなかったよ。」


もう少しその時の詳細を聞いてみたが、単純に似たような面をしていただけのようだった。

そちら系の感覚が分かる陽向が、そういった重みを感じなかったのだから間違いないだろう。

静流の考えでは、顔を隠すことが目的で、面でも何でも良かったのだろうと。

ただ、少女のおつきの子供は同一人物か、同じ集団に属しているモノだろうということだった。


「あと、これはみんなで話せんといかんけど、爺ちゃんがみんな連れてこい言うてたわ。」


唐突な話にキョトンとしてしまった。

陽向の祖父には、以前に何度かあったことがあるのだが、向こうから呼ぶというのは初めてだ。


「何かあったのか?」

「いや、今回の色々で、勉強会やるでって言うてた。」

「ふぅ…、ということは色々と荷物はしっかりして行かないとね。」


勉強会という言い方をするということは、何かあったときのために訓練をしておくということだろう。

自分が探偵業をやるという話をした時も、護身術を一式叩き込まれた。

あの人は護身術と言っていたが、後々振り返ってみると、どう考えても古武術の一つだと思う。

ただ、“呼んだ”ということは、それだけ事は重いということなんだろう。

静流のため息も、その時に巻き添えを食らった思い出がフラッシュバックしたのだろう。


「せやな、ただ、今回は“みんな”言うてたから、女性陣も含めてみたいやわ。」

「お婆ちゃんのリクエストかい?」

「いや、ようわからんけど、なんせ関係者全員みたいやで、離も使って言うてた。」


離まで使うということは、十人単位が来ても大丈夫なように考えているのだろう。

前の勉強会も夏休みで、あの時は母屋の部屋で3人ともお世話になった。

それでも、まだ部屋はあるから大丈夫と言われたのを覚えている。


「いつもの6人と梓ちゃんたち三人、後は男子が二人と言ったところか。」

「せやな、梓ちゃんとこのグループで合計五人になるんちゃうか。」


梓ちゃんと澄玲ちゃんの相棒みたいな二人がいるのだが、先日の遠征の時には参加していなかった。

話を説明したり、細かい調整をする暇がなかったからで、仲間外れにしたわけではない。

本人たちは言わずともわかっているとは思うが。


「あ、そうだ!」


静流が珍しく大きめの声を出した。


「境、前の指輪どうなってる?」

「ん、ああ、ちょっと出してみるか。」


鞄の中にしまっていた指輪を入れた袋を取り出した。

そこから指輪をテーブルの上に転がす。


「ん?こんな蒼かったか?」


陽向が眉間にしわを寄せる。

言われてみれば、どんどん蒼く濃くなっていっているように見えた。


「やっぱりね、確認はまた明日になるけど、澄玲ちゃんに預けているものがあるんだ。」

「何かあったのか?」

「最後にイヤリングを拾ったというか、受け取った感じになったんだよ。」


そこで陽向が何かをひらめいたように顔を上げる。

危うく後頭部であごを砕かれるかと思った。


「せや、うちの方も何やチョーカーもどきみたいなんを見つけたわ!組み紐なんやけども…」

「それは誰が持ってるんだ?」

「爺ちゃんの勧めで、姐さんに持ってもらってる。身に着けてもらってるって言うんが正しいかも。」


ということは、この指輪を含めて、それぞれに何らかのアクセサリを受け取った形だ。

どれも身につける物である以上、肌身離さず持っておけということなのだろう。


「明日また、集合したときに並べてみようか。」


静流が提案した内容で、明日もう一度、全員が集まった状態で話をすることになった。

アクセサリが一通りそろった状態の方が話をした方が良いという判断からだ。


そこからはいつも通り、雑談やゲームをしたりと、事務所の中で自由にくつろいでいた。

流石に今日は、女性陣はそれぞれの自宅で休んでもらうように話しているので、いつもの三人だけだ。

近くの銭湯に行き、帰りに酒屋に寄って、夜にくつろぐための準備を整えていた。

いつも通りの日常、夜遊びだった。

——ただ、今日は誰も本当にくつろいではいなかったと思う。

身に着けるものを、それぞれで受け取った形というのにざわめきを感じていた。


—— アクセサリのそれぞれが、その色の深みを示していた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


旅の後ということで、今回は少し落ち着いた空気の中で、各地で起きた出来事を整理する回となりました。

それぞれ別々に見えていた現象が、少しずつ一本の線としてつながり始めています。


そして、指輪・イヤリング・チョーカー。

偶然なのか、意味があるのか――その答えも近づいてきました。


次回は全員集合。

揃った時に何が起こるのか、ぜひ見届けていただければ嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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