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余白

今回は少し寄り道のお話です。


これまでの流れから少し離れて、

日常の中での時間を描いています。


……ただ、何も起きていないようで、

本当にそうなのかは分からないものですね。


今日は陽向くんのおばあちゃんの勧めで、関西空港の近くにあるモールに向かうことになった。

陽向くんらしい気遣いで、おばあちゃんへの孝行と、私たちの体調を気にしたみたいだった。


おばあちゃんの話では電車でも行けるらしいんだけど、帰りに荷物が多いと困るので車で行くことに。

レンタカーかカーシェアリングサービスを使おうと思っていると、車も貸してもらえる流れになった。


「ありがとうございます、何から何まで…」

「いんえ~、折角の関西やから、少しでも楽しんでほしいからね~。」


おばあちゃんが車庫まで案内してくれて、少し古い木造の納屋のようなところに車を置いているようだった。

古い日本の家屋のような作りの小屋には、似つかわしくない高級ミニバンが停まっていた。


「ちょっと偉いお客さんが来たりするから、そん時に必要って買いよったんよ。」


仕方ないなぁという雰囲気で、おばあちゃんが車について話してくれた。

うちにもほしいなあと思ったりするけれど、土地柄、ここまで大きいと大変な気もした。

折角なので、運転させてもらうことになり、助手席におばあちゃん、後ろに梓ちゃんを乗せることになった。


「梓ちゃんも大丈夫?」

「はい、すごく快適です!」


陽向くんがいなくてよかった。

彼の前で行ってしまうと、丸一日へこんでしまいそうなセリフだった。

まぁ、確かにすごく快適なんだけど…。


「真琴ちゃんは、陽向とは長いん?」

「はい、大学内外問わずに仲良くさせてもらってます。」

「あの子、変なところで気を遣うやろ?」


さすが、昔から知っているおばあちゃん。陽向くんの性格をよく分かっていらっしゃる。

確かに、何でも背負い込んで、それでいて明るく振舞うところがあった。

それが良いところではあるんだけど、彼自身の負担が心配になる。


「でも、真琴ちゃんみたいな娘が近くにいてくれたら、安心できるわ~。」

「そう言ってもらえると嬉しいです。」


こうして年配の方に褒められたり、必要とされると真実味があって嬉しかった。


「梓ちゃんは、どういった関係なんかな?」

「陽向さんのお友達が、お姉ちゃんの恋人なんですよ。」

「お姉ちゃんとお友達は、今回、どうしたん?」

「別に調べることがあるみたいで、手分けすることになったんです。」


なるほどなるほど、といった風に頷きながらおばあちゃんは話を聞いていた。

確かに、梓ちゃんだけがこちらに来たというのは、意外な采配だった。


そこからしばらく、女子らしく恋バナをしながら目的地まで進んでいった。


「アウトレットも一緒にあるんですね。」

「そうやねん、シークルの方も歩いて行けるから、色々一緒に回ろか。」


おばあちゃんはスタスタ歩いて行ったので、私たちもそれに続いた。

陽向くんの年齢を考えても、おばあちゃんは結構なお年なはずなのに、私たちと変わらないくらいしっかりとした足取りだった。

私もああいう元気なおばあちゃんになりたいなと思った。


アウトレットの方から入っていったので、そのあたりは女子らしく衣類やアクセサリのお店を見て回った。

梓ちゃんは来る途中にもファストファッションを買い足していたけど、ここでもバンバン買っていた。

富裕層のお買い物という感じで、欲しいと思ったらかごに入れているんじゃないかという勢いに圧倒された。


「梓ちゃん、大丈夫なの?」

「え?はい、お小遣いの範囲で買っているので大丈夫です!」


その気軽さにも衝撃を受けた。

とはいっても、ハイブランドのモノを買いあさっているという感じではなく、しっかりと値段の下がったものを選んでいた。

デザインは確かにこだわっているみたいだったけど、金銭感覚が破綻しているというほどではないかなという印象だった。


「真琴ちゃんは、何か欲しいもんないのん?」

「いえ、あまり無駄遣いはしないようにと思って…」


梓ちゃんと比較するとあまり買っていないように映るが、欲し物は少しずつ買っていた。

あくまで比較すると少なく見えるというだけで…。


「今日は、少しプレゼントするわ~。」


そういうと、おばあちゃんがとあるブランドショップの奥に入っていった。

ほどなくして店員さんを連れて戻ってくる。


「この子に似合うのを2,3着見繕ったって。」


そういうと、私は試着室に押し込まれ、店員さんは色々な服を探しに走っていった。

おじいちゃんだけじゃなく、おばあちゃんも豪快でアグレッシブだなぁと思った。

完全に勢いに押されていた。


「よし、これにしよか!」


おばあちゃんの勢いに流されるまま試着を繰り返し、おばあちゃんが3セットほど服を選んでくれた。

その流れのまま会計も済まされ、紙袋を渡されてしまった。


「あ、ありがとうございます!」


慌ててお礼を言ったが、かなり挙動不審になっていたという自覚はある。


「ええって、ええって。今後も陽向と仲良くしたってな。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」


元々、このまま一緒に行動することが自然だろうと思っていたけど、改めて言われると意識してしまう。

そのうち、ちゃんと整理しないとと、自分の中での決意表明をしていた。


梓ちゃんが大量の紙袋を持って戻ってくると、この後で観覧車の方に行こうという話になった。

観覧車に乗ると色々なものが見えるということで、みんなで是非という流れで観覧車に乗り込んだ。


買い物をしているうちに夕方になっていたので、観覧車は電飾が光ってきれいだった。


「真琴さんって、高いところ平気なんですか?」

「え?私は特に、好きでも嫌いでもないわよ?」


そう言っている梓ちゃんも苦手そうには見えないし、おばあちゃんも楽しんでいる感じだった。


「お兄さんが、高いところ苦手らしくて、それも早い乗り物は大丈夫だけど、ゆっくりだとダメらしいんですよ。」

「境君が?意外な弱点ね。」


思わず少し笑ってしまった。

苦手なものをそういう風に笑ってはいけないと思いながら、そのギャップに笑いをこらえられなかった。


観覧車から外を見ていると、夜景のほかに行き来している飛行機の光も見えた。

飛行機を見ていると、光の位置関係が、ほんのわずかに噛み合っていないように見えた。

ただ、観覧車の窓越し見ていたので、窓越しだったせいかもしれない、と自分に言い聞かせた。


「海の方は暗いですけど、なんだかロマンチックな感じがしますね。」

「せやねぇ、男の子がいるのもいいけど、女の子だけいうのも乙なもんやわぁ。」

「そうですね、昼間でも海がきれいで楽しそうな気がします。」


三者三様に、観覧車から見る夜景を楽しんで、楽しいリフレッシュタイムは終わりを迎えようとしていた。


—— あの飛行機、気のせいよね…

そう思ったのに、もう一度見る気にはなれなかった。

「余白」、いかがだったでしょうか。


大きな出来事はありませんが、

こういう時間があるからこそ、次の出来事がより際立つのかなと思っています。


少しずつですが、違和感は日常の中にも入り込んできています。

気のせいで片付けられる程度のものかもしれませんが、

それが本当に“気のせい”なのかどうかは、まだ分かりません。


次回からは、また場所を移して進んでいきます。


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