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確定

いつもお読みいただきありがとうございます。


これまで積み重ねてきた違和感が、ひとつの形を持つ回になります。

「観測」とは何か、「確定」とは何か。


その一端を感じていただければ幸いです。


「おはようございまっす!」


朝一から元気すぎる挨拶をしてきたのは、言わずと知れた紬ちゃんだ。

山道を歩くという話はしていたので、ちゃんとした装備できた様子だった。

いつもの半ズボンやスカートだと流石に危ない。


元気な声が目覚ましとなって、陽向と静流も目を覚ました。

相変わらず寝ぼけている陽向と、寝起きすっきりな静流の対比が面白い。

それぞれに洗面所に行って、軽く身支度を整えてから定位置に座った。

走行しているうちに、澪と真琴さんも降りてくる。


「おはよう、相変わらず元気ねぇ。」


真琴さんが紬ちゃんに声をかける。

実年齢よりも年の差を感じる会話だった。


夜中に感じた指輪についての違和感も、朝になると気にならなくなっていた。

明るくなっているので、光にごまかされてしまっているのかも知れない。

今日は指輪をちゃんと布の袋に入れておいた。


そうしているうちに野乃花ちゃんが到着した。

気が利くと言っていいのか、近くのパン屋さんで朝食用のパンを大量に買ってきてくれていた。

大半が甘いパンで占められていたのが彼女らしいなと思いつつ、出発の準備を始めた。


「さぁ、行くわよ。」


一通りの荷物を積み終わって、真琴さんが運転席に乗り込んだ。

それに続いて女性陣が乗り込み、自分と静流が乗り込む。最後に陽向が助手席に乗り込んだ。


つい先日も通った道筋だが、その先に存在するものが分かっているだけに不穏な空気が流れる。

今回が初めてになる三人は、そこまで不穏な感じがしていないようだったが、こちらの空気を感じているようだった。

しばらくすると、先日と同じ車を停めることのできるスペースまでたどり着いた。


まだ、朝だというのに、自然の中で感じるようなさわやかさはなく、重く暗い雰囲気が漂っていた。

祠への道も同じようにあるのだが、果たしてどこに続いているのかという気持ちになってくる。

以前と同じように陽向が先頭になって、祠までの道を進んでいった。


「流石にあの時のままだな。」

「せやな、何も変わってへんように見えるわ。」


陽向が祠の周りをチェックする。

特に変わったことは無かったようで、すぐに戻ってきた。


——その時、祠の中にある鏡に影が映った気がした。


「えっ…」


澪が異変に気付いて驚いた。

こちらから何もしていないのに、祠の周りに灯篭のような明かりが現れた。

それとどちらが早いか、件の少女が祠の前に立っていた。


「どういうことだ?!」


流石に慌てる。

今までは自分の方から接触しようとする必要があった。

今日は、まるで待っていたかのように、不意打ちで接触してきた。

何かはわからない。

ただ、あの少女は今までよりもこちらを意識していたことは間違いないだろう。


「あの子っすか?」


紬ちゃんが口に出して、少女を認識していることを伝えてきた。

そもそも、噂程度にしか聞いていなかった彼女が、ここまではっきりと認識しているとは思わなかった。

それほど、あの少女は希薄な感じがしていたのだ。


『やっと……届いた』


少女の言葉が以前よりもはっきりと伝わってくる。

周りを見てみると、普段であれば全く感じない、見えないという静流でさえ認識しているようだった。


「届いたて、どういうことや?」


陽向が疑問を口にする。

今までは、伝わってきた内容に対して自信が持てなかったのだが、今回はクリアに伝わってきたので、疑問にも自信を持てた。

以前から繰り返して伝えてきている中に『届いた』という言葉がある。

自分と陽向だけではなく、そのやり取りを聞いている他のメンバーも同じ内容が伝わっているようだった。


『これで……届けられる』


少女の視線の先には自分の他に、紬ちゃんがいた。

届けられるというのは、今までよりもクリアに聞こえるこの言葉の事だろうと思うのだが、視線の先の紬ちゃんが気になった。

彼女の反応に違和感があったのだ。

この状況に驚いている感じがせず、只々、状況を見ているように感じた。


「何か、思ったよりしっかりしてるっすね。」


しばらくの沈黙の後、紬ちゃんが唐突に口を開いた。

彼女の視線の先にはあの少女が立っている。

全く視線をずらさずに、しっかりと少女を捉えていた。


ふと、少女が安心したように微笑んだ。


いつの間にか灯りは消え、元の祠に戻っていた。


「紬ちゃん、どいうことですか?」

「何て言うか、もっとボヤっとしていると思ったんすけど、はっきりと女の子がいたっすよ。」


そう言われて気が付いたのか、それぞれに見えていた少女の像が変わっていたのだ。

自分にはセーラー服で、腰まである長髪の少女に見えた。

以前の少女よりも、意思が固く凛とした雰囲気をまとっているように見えた。


「せや、前と違ってセーラー服着とったで!」

「そうだね、俺は初めて見るけど、セーラー服に長髪の少女だった。」

「私も初めてだけど、きれいな黒髪でセーラー服の似合う女の子だったねー。」


陽向、静流、野乃花ちゃんと同じ形の少女を見ているようだった。

今まではそれぞれに年頃さえ異なるモノを見ていたのだが、今回は同じモノを見ていると分かる。


「はい、背丈は少し小さめですけど、確かに中高生くらいの少女でした。」

「そうね、私も前と違うけど、皆が言っている特徴と同じ少女が見えたわ。」

「全員が同じ少女を見たことは間違いなさそうだな…」


澪、真琴さんまで同じ少女を見ている。ここまで一致するとは思いもしなかった。


「ま、とりあえず事務所で話しよか!」


今までの緊張が解けたのか、陽向が車に戻る道を歩き始めると、次々とそれに続いた。


「ちょっとその前にっと!」


紬ちゃんが祠の写真を撮っていた。

ちょっと不躾な気もしたが、彼女の性格を考えると仕方ないかと思い、そのままにしておいた。


「まだ、あそこに居るんすよねぇ…」


紬ちゃんが呟いていたが、すぐにこっちに走ってきたので気にせずに車に向かった。


それぞれに疲れはあったが、同じものを見たという安心感からか、場の空気は軽かった。

この後で事務所に戻るということで、途中で少し買い出しをしてから帰ることになった。



——気づかぬうちに、指輪はさらに蒼くなっていた。



ここまでお読みいただきありがとうございました。


今回、「確定」という形で一つの区切りを迎えました。

ただ、それが何を意味するのかは、まだはっきりとは見えていません。


むしろここから、少しずつ広がっていくものがあるのかもしれません。

引き続き、違和感の行き先を見守っていただけると嬉しいです。


今後ともよろしくお願いします。


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