第4章 【そぐわぬ者】 1. 只者 パート2
久々の投稿です。
お読みいただき、ありがとうございます!
前回はルシアスとグレイスの会話を通じて、物語の裏側を少し覗いていただきました。
今回は再び、フィン、エリシア、ノクスの三人の旅へと戻ります。
それぞれに背負うものはありますが、そんなことはお構いなしに、今日も三人の掛け合いは賑やかなようです(笑)
新たな目的地を目指す三人の旅路の様子を
どうぞお楽しみください!
大きな街道から外れた、人の往来も少ない細道。
そこを歩く三つの人影があった。
険しい道のりとは裏腹に、その足取りは軽い。
ダラ神殿の街【ノクト】を出発して、どれくらい経っただろうか。
『水も食料も少なくなってきた。フィンの狩猟だけでは限界も近いか…そろそろどこかで補給をしなければならんか。』
不意にエリシアが呟いた。
『確かにそうだな。もう南の国の領地だし、街に寄っても問題ないだろ。』
『南の国は五年前の戦争で、領地の半分を帝国に奪われていますからね……。帝国領を避けてきた分、かなり遠回りになりましたね。』
フィンとノクスが、その呟きに応える。
『まぁ……南の国は五年前の帝国の侵攻を、侵略戦争と捉えているだろうし、今も国内には【監視役】として帝国の軍人が置かれている。市民は帝国人に対して、よい感情は持っていないだろう。私にとっても、自由に動ける国ではないと考えた方が良いだろうな。』
エリシアの言葉に、しばし沈黙が流れた。
やがて、彼女は再び口を開く。
『…正直、あの当時のことを思い出すのは辛いな。あの頃は帝国の快進撃に心を躍らせていたんだがな。』
その声には、自嘲するような響きがあった。
『すいません……嫌なことを思い出させてしまいましたね。』
ノクスが申し訳なさそうに口を開く。
当時のエリシアにとって、あの戦争は兄【ルミオン】の命を奪った者たちへの復讐だった。
だが、その裏で何が起こっていたのかを知った今、あれが単なる侵略戦争ですらなかったことを理解している。
様々な思いが脳裏をよぎり、エリシアの表情がこわばった。
ふと、しゅんと肩を落とすノクスに気づく。
エリシアは慌てて笑顔を作ると、優しく声をかけた。
『いや、こちらこそスマン。気を使わせたな。』
『まったくだぜ。』
やれやれ、とでも言いたげに溜息をつき、フィンが両手を胸の前で広げる。
『いや、お前は気を使ってないだろ! ノクスを少しは見習え!』
『へいへい。』
『まぁまぁ、お二人とも落ち着いて。』
苦笑いを浮かべながら、ノクスが二人の間に入った。
こんなやり取りは、旅が始まってから何度目だろう……。
ノクスは思わず遠い目をする。
『ノクス、どうした? 腹でも痛いのか?』
フィンが少し心配そうに顔を覗き込んできた。
『フィンさん……たぶんエリシアさんが言っているのは、そういうところだと思いますよ。』
『そうだぞ、フィン! 反省しろ!』
『ちぇっ、面白くねぇなぁ。』
その一言に、エリシアとノクスはとうとう堪えきれず、声を上げて笑い出した。
そんな二人につられ、フィンの顔にも自然と笑みが浮かぶ。
『そうそう、冗談は置いといて、エリシア。ここからどうすんだ?』
『ん……冗談?』
エリシアは一瞬、怪訝そうな顔をしてフィンの顔を見たが、そこで何かを諦めた。
『……ああ。地図では、あと二、三日歩いたところに【カストルム】という街があるはずだ。そこにいるであろう人物に協力を仰ぎ、東の国を目指す。』
そう言うと、エリシアは広げた地図に打たれた赤丸を指さした。
『名は【メデウス】。槍の名手であり、かつて私の部隊で戦線指揮を執っていた切れ者だ。』
『バッカのおっさんみたいなもんか。そりゃ、期待できるな!』
『確かに、バッカライさんのような人物であれば信頼できますね。』
どうやら、フィンもノクスもバッカライに対する信頼は相当に厚いようだ。
『その通りだ。少々、"真面目で几帳面"なところはあるが、東の国へ抜けるには計画性が必要になってくる。うってつけの人物だろう。』
説明するエリシアの表情は、どこか誇らしげだった。
『真面目で几帳面ねぇ……。バッカのおっさんがガサツで、いい加減すぎるだけなんじゃねぇか?』
『フィンさん! バッカライさんに失礼ですし、フィンさんは人のことは言えませんよ!』
ノクスが口元に人差し指を当て、フィンをたしなめる。
『違いない! ノクスの言う通りだぞ、フィン!』
『ちぇっ! またかよ……。』
先ほどと同じようなやり取りに、三人は思わず足を止め、クスクスと笑い合う。
やがて笑い声が収まると、再び歩き始める。
目指すは、【砦の街カストルム】。
三人の足取りは、先ほどよりもさらに力強くなっていた。
お読みいただき、ありがとうございました!
久しぶりに三人の旅へと戻ってきました。
エリシアの過去に触れる少し重い場面もありましたが、フィンがいると、どうしてもこういう展開になってしまいます(笑)
作者としては、もう少し真面目な会話になる予定だったのですが……。
まぁ、彼ららしいと言えば彼ららしいですね。
さて、次なる目的地は【砦の街カストルム】。
そこにはエリシアのかつての部下、【メデウス】がいるようです。
真面目で几帳面な人物とのことですが、果たしてフィンたちとうまくやっていけるのでしょうか?
次回も三人の旅を楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また次のお話でお会いしましょう!




