第四章 【そぐわぬ者】 1. 只者 パート3
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長い旅路を経て、ようやく【砦の街カストルム】へとたどり着いた三人。
しかし、そこで目にした光景は、想像していたものとは随分違っていたようで…
そして、エリシアが頼りにしている人物【メデウス】。
果たして無事に出会い、協力を得ることができるのか?
それでは、お楽しみください!
【砦の街カストルム】
かつては南の国を守る要衝として、多くの兵士や商人で賑わっていた街。
しかし、五年前の戦争によって、その姿は大きく変わっていた。
街を囲む石垣は所々崩れ落ち、かつて堀だった場所には雑草が生い茂っている。
広大な街の中には、今も多くの建物が残されていた。
だが、人の姿はまばらだった。
閉ざされたままの店。
人の気配がない家々。
かつての賑わいを想像させる広い通りには、ただ風だけが吹き抜けていた。
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そんな事情も知らない三人は街の入り口に辿り着いていた。
『【砦の街】とか言うから、どんな厳つい街なんだよって思ってたけど……只の田舎町じゃねぇか。』
『確かにな……。』
『いや、よく見れば堀とか石垣とかあるじゃないですか……立派な砦の街ですよ。』
ノクスが苦し紛れに、かつて堀だったらしい場所と崩れかけた石垣を指差す。
『ノクス……無理すんなよ。』
『……確かにな。』
『エリシア、お前さっきから「確かにな」しか言ってないぞ。』
『確かにな。』
フィンは思わず、やれやれといった様子で頭を掻きむしった。
『……すまん。あまりにも意外でな。』
『そんなに意外なんですか?』
ノクスが尋ねると、エリシアはコクコクと小さく頷いた。
『メデウスは戦功、武功ともに帝国でも指折りの人物だ。【一番槍のメデウス】と言えば、敵どころか味方さえ震え上がるほどだった。
帝国に忠誠を誓い、そのために命懸けで戦ってきた男だ……。
大きな都市を領地として与えられていても、おかしくない人物なのだ。』
『そうか……それってマズくないか?』
フィンが少し不安げな眼差しをエリシアへ向ける。
『ああ……そういうことだ。』
エリシアもまた、不安げな視線を返した。
『つまり、こうですか? メデウスさんは帝国に裏切られたと思っていて、もしかすると協力してくれない可能性がある、と?』
『……その通りだ、ノクス。』
エリシアは困ったようにノクスを見つめる。
『グレイス姉さまにもお考えはあるのだろうが、こればっかりは予想外だったな。』
眉間に皺を寄せ、難しい顔をするエリシア。
そんな彼女に、フィンが声をかけた。
『まぁ……まだそうと決まったわけじゃないんだし、とりあえず見つけ出して遠巻きに観察してみようぜ?』
『フィンさんの言う通りですよ! 気を取り直して、まずは食堂や酒場で聞き込みでもしましょう。』
『そうだな。しかし、私は帝国人と分かる風貌をしているから、この町の情勢が分かるまでは表立った行動を避けようと思う。
ということで、聞き込みは二人に任せる。』
そう言うと、エリシアはフードを深く被り直した。
『任せとけって! なぁ、ノクス。』
『はい! エリシアさんは街の外の目立たないところで待っていてください。夕方には戻ります。』
◇
辺りはすっかり夕焼けに染まり、夜の訪れを今か今かと待ちわびているようだった。
エリシアは小高い丘の上にある岩に立ち、そよ風に吹かれながら、遠く沈みゆく太陽を眺めていた。
『待たせたな。ってか、目立つことすんなって。』
背後から聞こえたフィンの声に、エリシアが振り向く。
『すまんすまん。よい眺めだったので、ついな。
で、どうだった? 見つかったか?』
フィンは少し困ったような顔をすると、ゆっくり口を開いた。
『【良い事】と【悪い事】、どっちから聞きたい?』
『ん? どういうことだ? どちらからでもよいから話してくれ。』
エリシアは戸惑いながら答える。
『そうか……じゃあ【良い事】からだ。
この街は、帝国人に対して恨みを持ってるヤツは多くなさそうだ。』
『はい。それに、ちょうど宿も見つかったので、今夜の寝るところも確保してきましたよ。』
フィンの後ろからノクスが顔を出し、エリシアに話しかける。
『そうか、それは朗報だな。
で、【悪い事】とは?』
『……それは、この街の【メデウス】は、俺たちが探してる【メデウス】じゃないかもしれないってことだ。』
『フィンさんと話し合った結果、その答えに辿り着いた感じです……。』
二人は少し言いづらそうに、エリシアへ伝えた。
『同じ名前の人物が二人いるということか?』
『いや、【メデウス】は一人だけだ……。お前が言ってた特徴と一致するのは、背が高い帝国人ってところだけだったな。』
エリシアは事前に、メデウスの特徴を二人へ伝えていた。
背が高い
金髪で、帝国人とすぐに分かる風貌
目つきが鋭く、眼力がある
髭面
自分にも他人にも厳しい性格
動きは機敏
『この街の【メデウス】さんは、優しげな眼差しで、人当たりもよく、髭も生えていないさっぱりとした顔立ちの、おっとりした方でした。』
『そ、そうか……人違いなのか?
いや、まだ自分の目で確かめたわけではないからな……。』
エリシアは困惑した表情を浮かべる。
『とりあえず、悩んでてもしょうがないだろ? 宿も取ってあるし、街に入ろうぜ。
久々にまともな食い物にもありつけそうだしな。』
フィンはそう言うと、自分の腹を抱えるような仕草をした。
『そうですね。私も慣れない聞き込みで疲れました。』
ノクスもどこか眠そうだ。
『確かにな……。明日、確かめればよいか。』
話し終える頃には、太陽は完全に姿を消し、辺りには夜の帳が下り始めていた。
三人は足早に、【砦の街カストルム】へと足を踏み入れた。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
三人の目的である【メデウス】探し。
帝国でも指折りの武人であり、【一番槍のメデウス】と恐れられた人物。
ところが、街の人々が語るメデウスは、どうにも別人のよう…。
果たして人違いなのか、それとも本人なのか?
それでは、また次のお話でお会いしましょう!




