表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/52

第三章 【神の子】3.決断 パート11

怒り狂うセラフィナ。

襲い掛かる炎に包まれた騎士達…

チラつくルシアスの影…

どう切り抜けるのか。

セラフィナ――

少女の名だった。

生まれながらにして魔術の才能に恵まれ、意識することなく魔術を発動させてしまうほどの力を持っていた。

そのため、意図せず力が暴走することもあった。

彼女は幼い頃から、大人たちに畏怖の目で見られていた。

田舎貴族の娘だったセラフィナは、その才能ゆえに屋敷の中へ匿われるように育てられた。

外界から隔離され、日の光すら差し込まぬ部屋。

まるで牢獄だった。

そのため肌は雪のように白く、身体は枝のように細かった。

ある日――

そんな彼女のもとを訪れた者がいた。

燃えるような緋色の瞳。

白金に輝く髪。

まるで神話の世界から現れたかのような男だった。

セラフィナは、その男によって屋敷から連れ出された。

屋敷の中を通り過ぎてきたが、屋敷の主である父親……母親も……姿が見えなかった。

しかし、セラフィナにとっては、どうでもいい事だった。

久しぶりに浴びる太陽の光。

それは容赦なく彼女の肌を焼いた。


『熱い……』


男はそっとマントを掛け、フードを被せる。


『お前には才能がある。これからはこの私がお前を守ろう』


『……名前』


『私はルシアス。さぁ、次はお前の名前を教えておくれ?』

―――

―――

―――

怒り狂うセラフィナ。

真っ赤に燃え上がる騎士たち。

異様な光景だった。


『……いったい何が起きてる』


流れ落ちる汗を拭いながら、バッカライは呟く。


『分からん……だが、奴らを止めなければならない事だけは分かる』


エリシアは剣を構え直した。

その瞬間――

炎の騎士たちが動く。


『速――』

バキッ!!


言葉を言い終える前に、鈍い音と共にエリシアの身体が吹き飛んだ。

玉座の前まで吹き飛ばされる。

かろうじて剣で防いでいた。


『このっ!!』


反応したバッカライが剣を振り下ろす。

だが、一足遅かった。

容赦なく槍が叩き込まれる。

かろうじて身を捻って避けると叫んだ。


『フィン! エリシア様を連れて逃げろ!!』


『おう! ノクス、逃げるぞ!!』


『ダメです! 私は逃げられません! 私の背中には信徒達の命があります!』


『そんな事言ってる場合か! こいつらは異常だ!!』


エリシアを吹き飛ばした斧の騎士が、ノクスへ迫る。


『ちっ!!』


フィンは舌打ちするとノクスの前へ飛び出した。

ギャンッ!!

小刀で受け止める。

しかし衝撃を殺し切れず、床へ叩きつけられた。

慌てて体勢を立て直す。

だが遅い。

追撃――

斧の騎士が再び斧を振り下ろした。

やられる――


ギャリィッ!!


死を意識するほどの一撃だった。

しかし――

斧はフィンへ届く寸前で止まっていた。

エリシアだった。

愛剣ガルデレインで斧を受け止めていたのだ。


ビキッ……

ビキビキ……


静かに金属の軋む音が響く。


『……砕ける』


ガルデレインに亀裂が走っていた。

フィンの顔から血の気が引く。

もう駄目だ――

そう思った瞬間。


ジュンッ!!


聞き慣れない音が響いた。

フィンは恐る恐る目を開く。


『何だよ……これ……』


目の前の光景に言葉を失った。

斧の騎士が振り下ろした斧。

それが刃の中央から真っ二つに断たれていた。

エリシアは迷わず剣を返す。


バシュッ!!


斧の騎士の胴を薙ぎ払った。

燃え盛っていた炎が消え去る。

しかし鎧にも身体にも傷はない。

エリシアは愛剣へ目を落とした。

走った亀裂。

その裂け目から、まるで太陽のような白い光が漏れ出している。

これなら――

いける。

直感だった。


『バッカ! 一瞬で良い! 槍の騎士の動きを止めてくれ!!』


『了解!!』


言うが早いか、バッカライは槍の騎士の懐へ飛び込んだ。

渾身の拳を叩き込む。

一瞬。

ほんの一瞬だけ騎士の動きが止まった。

その隙を逃さない。

背後へ回り込み、燃え盛る炎をものともせず羽交い締めにする。


『捕まえた!! エリシア様!!』


『おう!!』


エリシアが駆ける。

一閃。

炎は消え去り、騎士は崩れ落ちた。


『大丈夫かバッカ!』


バッカライは無言で親指を立てる。

それを確認すると、エリシアはノクスの前へ立った。


『役立たず……』


怒りで空気が震える。


『役立たず……』


セラフィナが一歩踏み出す。


『役立たず……!!』


ガクッ――

突然、膝が崩れた。

その身体が床へ倒れ込む寸前。

誰かがそっと支える。


『ルシアス様の目的は達成されました。そろそろ引きますよ』


優しく諭すような声だった。

神官風の服。

大きな木製の杖。

何の前触れもなく現れた―

何もないところから―

男は、セラフィナを抱え上げる。


『離して……』


嫌がるセラフィナに顔を蹴られながらも、男は困ったように笑った。

そしてエリシア達へ視線を向ける。


『皆さん、初めまして。私は【賢者エンス】。以後、お見知りおきを』


緊張感がない。

それが逆に不気味だった。


『では、また何処かで……』


ヒュッ!!


矢が放たれる。


『逃がすかっての』


『おやおや。当たったら大怪我ですよ?』


矢は空中で静止していた。


『くそっ!!』


再び矢を番えようとしたフィンをノクスが制する。


『フィンさん……これ以上は駄目です』


フィンは悔しそうに弓を下ろした。

それを見たノクスが口を開く。


『これ以上は無意味です。引いてください』


『フフッ。もとより、そのつもりですよ』


刹那――

二人の姿が空間に溶けるように消えた。

静寂。

それを見届けたエリシアはフィンとノクスへ振り返る。


『形はどうあれ……守り抜いた……のだよな?』


『たぶんな……しかし死ぬかと思ったぜ』


『私もヘトヘトです』


張り詰めていた緊張の糸が切れる。

三人はその場にへたり込んだ。


決着…生き延びた三人は、それぞれ何を想うのか?

次回、三章完結。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ