第三章 【神の子】3.決断 パート12
激闘の末、かろうじて生き残った三人・・・
これからどうするのか。
襲撃があってから数日――。
神殿には三人の姿があった。
ノクスの命が狙われ、エリシアの居場所も知られてしまった。
次の襲撃に備え、この地を離れず様子を見ていたが、それ以降、何も起こってはいない。
『……あれだけ派手に襲ってきたのに、その後があると思ってたんだがな。拍子抜けっていうより、不気味だ。』
『ああ、私もだ。しかし、ノクスの命が狙われたとなると、ここを離れる訳にもいかん。』
『皆さん、私のためにすみません。私は、自分のことよりエリシアさんの方が心配です。』
ノクスは申し訳なさそうに二人を見た。
『それも含めて、フィンの言う通り不気味ではあるな。』
『確かに、あの賢者を名乗る者も言っていました。ルシアス様の目的は達成された、と。』
『オレも気になったなそれ。何が目的だったんだろうな。』
三人が考え込んでいると、そこへバッカライがやって来た。
『どうしたんだ? 三人とも難しい顔して。』
『バッカか。というか、お前もう火傷は大丈夫なのか?』
心配そうに尋ねるエリシアに、バッカライはニカッと歯を見せる。
『ノクスのおかげでバッチリですよ。しかし、魔術ってのは便利なもんですなぁ。ありがとな。』
『いえいえ、どういたしまして。』
どうやら二人は、すっかり打ち解けているようだった。
エリシアは【魔術】という言葉を聞き、ふと思い出したように口を開く。
『……しかし、あの魔術使いの少女は尋常ではなかったな。ノクスは言っていたが、命を削って魔術を使っていたのだろう?』
『信じられない話ですが、その通りです。命を魔術へ変換して行使していました。』
『なんでノクスには分かったんだ?』
フィンが疑問を口にする。
『実は、錫杖を持っていると、その人の生命力が光となって見えるんです。おそらく、ルシアスと同じ光景なのだと思います。』
エリシアは驚きに目を見開いた。
ノクスは一呼吸置いて続ける。
『ですから、彼女が魔術を使うたびに、その光が少しずつ弱くなっていったんです。あのまま使い続けていたら、おそらく……。』
ノクスは途中で言葉を呑み込んだ。
重い沈黙が流れる。
『まぁ、考えても答えは出ないだろ。それより、これからどうする?』
フィンが空気を切り替えるように言った。
『そうだな。私とノクスがここにいることは知られている。それなのに攻め込んで来ないということは、我々が離れるのを待っているか、あるいは、もうここには用がないか……そのどちらかだろう。』
『戦力的に前者はないんじゃねぇか? 敵の方が圧倒的なんだし。』
『私もそう思う。だからこそ、このまま留まる方が街の人々を巻き込む危険もある。だが、ノクスを一人にすれば再び狙われるかもしれん。』
難しい顔で悩むエリシアに、ノクスが口を開いた。
『なら、私もこの街を離れればいいんです。』
その言葉に二人が驚く。
『敵の狙いは、おそらくエリシアさんと私です。離れるのが危険なら、一緒にいればいいんです。』
『一緒に行くって……神官たちが許さねぇだろ。』
『大丈夫ですよ、フィンさん。それに……。』
ノクスは少し言葉を選ぶように間を置いた。
『おそらくですが、これは天啓です。神に選ばれた私への。』
『天啓とは、どういうことだ?』
エリシアが眉をひそめる。
『この神殿には、長い間隠されていた真実が眠っています。それは、バラバラだと思われていた神々の物語。』
そう言うと、ノクスは静かに目を閉じた。
そして神官たちに集まるよう呼びかける。
集まった神官たちを見渡し、厳かに告げた。
『神殿の書庫を開放します。そこに記された物語こそが真実です。』
驚く神官たちを見渡し、さらに続ける。
『私は、その書物に記されたダラ神と同じように、世界を巡り、邪悪を打ち払う旅に出ます。』
神官たちの間にどよめきが広がった。
『ですが、安心してください。私は必ず帰ってきます。その証として、このダラの錫杖をここに置いていきましょう。』
最初は戸惑っていた神官たちだったが、堂々と宣言するノクスの姿に、いつしか祈りを捧げ始めていた。
『神よ……なんと慈悲深い。』
『異教徒までも救おうとは……。』
神官たちは次々と祈りを捧げる。
その様子を見たノクスは、満足そうに振り返った。
『さぁ、これで皆さんと旅が続けられますよ。』
『ノクス、お前まさか……。』
『神を逆手に取って利用したのか。』
エリシアが呆れたように言う。
『変わったな。』
ノクスは小さく微笑んだ。
『変わったんじゃありません。』
そして、どこか誇らしげに続ける。
『旅をして、成長したんですよ。』
その言葉に、三人の笑い声が神殿中へ響いた。
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翌朝――。
街の入口には、旅支度を終えた一行の姿があった。
『エリシア様、本当にいいんですか?』
『ああ。こちらのことは心配するな。あの店員を連れて親父殿のパン屋へ案内してやってくれ。』
『分かりました。でも、案内を終えたらすぐ追いかけます。』
『分かった。我々は南の森林地帯を抜け、東の国を目指す。』
『了解です。フィン、ノクス、エリシア様を頼んだぞ。』
『任せとけって。』
『はい、任せてください。』
二人は同時に胸を叩いた。
そして三人は歩き出す。
新たな旅路へ向かって――。
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『ところでエリシア、お前の剣って大丈夫だったのか?』
『ああ……あの後、完全に砕けてな。いや、剥がれ落ちたと言った方が正しいかもしれん。』
『どういうことだ?』
『見てくれ。剣の中から剣が出てきたのだ。』
エリシアは剣を鞘から抜き、二人へ見せた。
『なんと美しい……。』
ノクスは思わず息を呑む。
そこには、緋色に輝く刀身を持つ一振りの剣があった。
まるで燃える夕陽を閉じ込めたかのような、美しく神秘的な輝き。
エリシアは、その刀身をじっと見つめる。
『ガルデレイン……。』
そして静かに呟いた。
『お前は一体……。』
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第三章 神の子 完
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ノクスが戻り、旅を続ける事になった三人。
残った剣の謎・・・
新たな旅立ちの末にたどり着くのはどこなのか。
第三章 完です。




