第三章 【神の子】2.本当の心 パート8
三人はどんな作戦を立てるのか。
三人が店に入ると、それに気付いた店員が笑顔で出迎えた。
『おお、もう戻ってきたのか。あの街までは、行って帰ってくるだけで三日はかかると思っていたんだがな?目的地を変えたのかい?』
店員は首を傾げながら注文を取る。
『ああ、ちゃんと行ってきたぜ。抜け道を知ってたんだ。』
フィンが答えると、店員は「なるほど」と頷いた。
『そうなのか……今度、俺にも教えてくれよ。
あの街には、美味いパン屋があるって有名なんだ。ただ、ここひと月ほど噂を聞かなくなってな。』
フィンは、バッカライをじろりと見る。
バッカライは視線を逸らすと、白々しく口笛を吹く。
そんな光景を横目に、エリシアは袋を机の上に置き、中からパンを一つ取り出して店員に手渡す。
『これが、そのパンだ。食べてみてくれ。』
店員は少し驚いた後、ためらいながら、一口かじった。
その瞬間――
店員の目が大きく見開かれる。
『……美味い!あの街のパン屋の店主は高齢だって聞いていたから、もう店をたたんじまったのかと思ってた。
もう食べられないのかと諦めてたんだ。』
その言葉に、バッカライは照れ臭そうに笑う。
『どうだい。【うちの】パンの味は?美味いだろ。』
店員はさらに目を丸くした。
『【うちの】って、あんた……あの街のパン屋の関係者なのか!?あんたも、その抜け道を通ってきたんだろ?よかったら紹介してくれないか。
このパンを使ってサンドウィッチを作ってみたいんだ。』
『ああ、いいぜ。今回の仕事が終わったら紹介してやるよ。
親父のパンだけじゃなく、俺の焼いたパンも食わせてやる。』
バッカライは親指を立て、エリシアへ合図を送る。
フィンは、バッカライの「俺の焼いたパン」の言葉を聞くと、バツ印を無言で店員に送る。
『そうだな。仕事が終わったら連れて行ってやってくれ。
親父殿も安心するだろうしな。』
店員は注文を取り終えると、嬉しそうな笑みを浮かべながらテーブルを離れていった。
それを見計らい、エリシアが口を開く。
『では、今回の仕事の話をしようか。』
エリシアは、フィンとバッカライの顔を順に見渡した。
『バッカは、今日の夜から明日一日を使って、情報収集と神殿周辺の地形把握を頼む。
やり方は任せる。』
バッカライは静かに頷く。
『フィンは私と共に街へ出て、祭典について聞き込みを行う。
我々は既に神殿側に顔を知られている。余計な警戒をされないよう立ち回りたい。』
『確かにな。
つまり、何か違和感を感じたら知らせるのが俺の役目って事だな。』
エリシアは深く頷いた。
『ああ。その通りだ。
お前の勘が頼りだ。頼むぞ。』
『フィン!俺の代わりにエリシア様の事を頼んだぞ!』
『任せろ。エリシアは一人にすると危なっかしいからな。ちゃんと見張っとかねぇと。』
その言葉に、バッカライもうんうんと頷く。
『お前たち……私を何だと思っているのだ!』
エリシアは腕を組み、不満げに頬を膨らませた。
そんなやり取りをしていると、テーブルに料理が運ばれてくる。
『お待ちどう。当店自慢の肉料理だ。
少しサービスしておいたから、たくさん食べてくれよ。』
店員はウインクすると、大盛りの皿をいくつも並べていった。
『さあ、食べたら前哨戦の開始だ。』
そう言うとエリシアは、分厚いステーキへナイフを突き立てた。
――
翌日の夜――
店じまいを終えた小さな食堂に、三人の姿があった。
蝋燭の灯りに照らされた薄暗い店内は、秘密の会議を行うには、うってつけの雰囲気だった。
『では、持ち寄った情報を整理しながら作戦を立てる。』
エリシアは二人を見渡し、静かに続ける。
『まずは私からだ。聞き込みの結果、二日後の祭典では、既に【神となった】事を祝うらしい。
つまり、本祭が始まった時点で手遅れと思った方がいい。』
エリシアが言い終えると、フィンが続く。
『じゃあ、いつ神になるのかって話だけど……どうやら前日の夜――【宵祭り】で、その儀式をやるみたいだな。』
『ああ。だから、それまでに何とかノクスの元へ辿り着きたい。』
エリシアは腕を組み、バッカライへ視線を向ける。
バッカライはニヤリと笑うと、ゆっくり口を開いた。
『――それなら、とっておきの情報がありますぜ。』
決戦は【宵祭り】
バッカライが仕入れた【とっておきの情報】とわ?
パート9に続く。




