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第三章 【神の子】2.本当の心 パート7

頼もしい仲間が加わり、神殿の街【ノクト】へ戻る一行。

出発は、まだ日も昇らぬ早朝だった。

薄暗い空の下、歩き出そうとするエリシアを、バッケロが呼び止める。


『これを持って行ってくだされ。』


バッケロは、焼きたてのパンが入った袋を取り出すと、エリシアへ手渡した。

受け取った瞬間、ほのかに漂う香ばしい匂いに、エリシアは中身が何か悟ったように目を細める。


『親父殿、ありがとう。バッカの事はすまない。本当は行かせたくないのは……何となく分かる。』


エリシアが少し俯きながら口を開くと、バッケロは穏やかな声で語りかけた。


『自分の子供を、喜んで戦場へ送り出す親はおりますまい……。

しかし、後悔を引きずりながら生きていくのも、それはそれで苦しいのでしょうな。

実に難しいもんです。』


そう言うと、バッケロはおもむろにフィンへ視線を向けた。


『あいつが、この家を飛び出して行ったのは、ちょうどあのボウズくらいの年頃でしたか……。

昔から、やたら腕っぷしが強くてな。

こんな退屈な街は俺の居場所じゃない――が口癖でしてな。』


バッケロは懐かしむように目を細める。


『数年後、突然帰ってきたかと思えば、帝国の軍人になったと言い出しましてな。

それから帰ってくる度に、大金を置いていくんです。

俺がこの街一番のパン屋にしてやるからな――とな。

おかげで、店を潰さず今日までやってこられました。』


そこで一度言葉を切ると、静かに続けた。


『あいつが帰ってくるまで、何年でもこの店は守り抜くつもりです。

ですから、存分に暴れて来い――そう、お伝えください。』


エリシアは深く頷くと、袋からパンを一つ取り出し、かじった。


『……本当に美味いな。温かい味がする。

面倒事が全て片付いたら、私もまた来よう。その時はよろしく頼む。』


そう言って一礼すると、踵を返し、フィンとバッカライの元へ駆け出した。


――


出発が早かったおかげで、昼前にはダラの神殿がある街【ノクト】へ到着していた。

山や森を歩き慣れているフィンとエリシアは平然としていたが、その様子にバッカライは感心したように声を漏らす。


『エリシア様、いつの間にか、ずいぶんたくましくなられましたな。』


その言葉に、エリシアは少し誇らしげに笑う。


『ああ。追われる身となってからは、山や森ばかり歩いてきたからな。

これもフィンのおかげだ。』


エリシアはそう言って、親指でフィンを指した。


『フィン、お前なかなかやるじゃねぇか!見直したぜ!

ただの口の悪い小僧じゃなかったんだな!』


そう言いながら、バッカライはフィンの背中をバシンッと平手で叩く。


『ゴホッ……ゴホッ!

おっさん……力強ぇよ……。

てか、おっさんもなかなかやるじゃねぇか。森で俺と同じくらい動ける奴なんて、なかなかいねぇぞ。』


『俺はおっさんじゃねぇ。……まぁ、索敵や斥候が仕事だったからな。

森や山には、嫌ってほど潜ったさ。』


『やっぱ、探り入れるのとか得意なのか?』


『そういう事だ。

だから今回の依頼は、まさに俺の得意分野ってわけだな。

さすがはエリシア様、お目が高い。』


そう言うと、バッカライはニカッと笑い、エリシアへ親指を立てる。


『ああ。バッカほどの使い手なら間違いないだろう。』


三人が歩きながら話していると、エリシアがとある店の前で立ち止まった。

そこは二日前に訪れた、あの小さな食堂だった。

開け放たれた扉の奥からは、焼いた肉と香草の匂いが漂ってくる。


『さぁ、着いたぞ。

ここで昼食を取りながら、作戦会議といこうじゃないか。』


食堂で作戦会議を始める三人。

どうやってノクスにたどり着くのか・・・。

パート8へ続く。

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