第三章 【神の子】1.ノクスの決意 パート2
パート1からの続き
馬車は国境を越え、最初の街にたどり着く前の森の中で停車した。
そこで三人を降ろす。
『ここからなら最初の街まで歩いて半日ってところだ。
俺は馬車を隠して、馬で王都へ戻り様子をうかがう。
君達とは、ここでお別れだ。』
コムニスは運転席からそう告げた。
『今まで、色々とありがとうございました。
コムニスさんがいなければ、エリシアさんにも会えませんでした。』
『そうだな。俺もアンタの仕事っぷりには、感心しっぱなしだったよ。』
『短い間だったが世話になった。
また頼ることもあるだろう。その時はよろしく頼む。』
三人がそれぞれ感謝を伝える。
コムニスは照れくさそうに頭を掻いた。
『礼なら、俺を雇った姫様にしてくれ。
俺は金で動いただけだ。
……じゃあな。達者でやれよ。』
そう言うと、馬車は森の奥へと消えていった。
『私たちも進もう。』
エリシアの言葉にノクスが頷く。
『ええ……ですが、街道は避けた方がいいでしょう。』
『ああ、王都の騒ぎもそろそろ広まる頃だ。
私たちは―晴れてお尋ね者、という訳だな。』
苦笑しながら、エリシアはフィンを見る。
『フィン、この辺りの土地勘はあるか?
森を抜けて最短で街に辿り着きたい。』
フィンは親指を立てた。
『任せとけ。この辺は何度か来てる。
最短で案内してやるよ。』
そう言って先頭に立つ。
―妙だ。
その背中に、エリシアは僅かな違和感を覚えた。
どこか、焦っている。
いや―無理をしているような。
ノクスも同じように感じていた。
だが、それを言葉にすることはなかった。
◇
森をひたすら進む。
険しい道のりだったが、三人は着実に距離を縮めていた。
『この丘を越えれば街が見える。』
『予定より早いですね……これなら間に合いそうです。』
『ああ、フィンのおかげだ。』
エリシアが視線を向けると、フィンはすでに丘の上に立っていた。
『おーい!早く来いよ!』
いつも通りの軽い調子。
―だが、その声は、どこか無理に張り上げたようにも聞こえた。
丘を越え、街が見えた。
安堵が広がる、その瞬間―
『……たどり着いたな。
さっさと物資を確保するぞ。』
フィンが言う。
だが、その声はかすれていた。
『私は水を確保します。
お二人は食料を―』
言いかけたノクスの目が見開かれる。
『フィンさん……顔色が……』
青い。
血の気が引き、立っているのもやっとという様子だった。
『おい、フィン……まさか―』
視線が、腹へ落ちる。
滲む血。
隠し続けていた傷。
『⁉なぜ言わなかった……!』
エリシアが駆け寄る、その瞬間―
ぐらり、と。
フィンの体が傾いた。
『――っ』
音もなく、崩れ落ちる。
土に叩きつけられる鈍い音。
『フィン!!』
遠ざかる意識の中で、
仲間の叫びだけが、かすかに響いていた。
倒れたフィン・・・
傷の具合はどうなのか・・・
パート3に続く。




