表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/38

第二章 【神聖帝国】4. 王都脱出 パート9

三人の前に姿を現したルシアス・・・

三人は神殿を無事に出る事はできるのか・・・

暗闇に浮かび上がる祭壇に佇む男は、こちらに向かって拍手を送っている。

まるで、ひとつの劇を見終えた観客のような拍手だ。


『アイツがルシアスか・・・。』


フィンが、先ほどの戦闘で裂かれた腹を押さえながら呟く。

指の隙間から滲む血が、その傷の深さを物語っていた。

それを見たエリシアは、顔を歪めながら叫ぶ。


『これは・・・いったい、どういう事なのですか!』


その声に、ルシアスは楽しげに応じた。


『私からの贈り物はどうだったかな?楽しんでもらえただろうか。・・・私も見ていてハラハラしたよ。やはり、肉眼で直接見るのは迫力が違うな。刺客には私の【目】貸してやったのだが、その臨場感たるや。』


まるで舞台の感想でも語るように、弾んだ声で言う。

その様子に、三人は言葉を失った。


『仲間を傷つけられ、私も命を落としかけました・・・それを楽しむ?ありえない!』


怒りに震える声で、エリシアが睨みつける。

その視線を受け、ルシアスは笑みを消した。


『エリシアよ・・・本当にすまない。』


静かな声だった。


『実は、予定にない事が起こってしまってね。そこの彼には、本当に申し訳ないことをした。』


そう言って、腹を押さえるフィンを指し示す。


『本来なら、彼にはここで退場してもらう予定だった。腹を裂かれ、苦しみながら死んでいく―その姿を見て、怒りに燃える君たちが刺客を打ち破る・・・そんな展開を想定していたのだが。』


一拍、間を置く。


『どうやら、私は彼の一番の見せ場を奪ってしまったらしい。』


真面目な口調で言い終えると、少し考え込む。


『くくっ、思い描いた通りにはいかないものだ。』


少し苦笑すると、次に真顔になりブツブツと呟く。


『しかし・・・いや・・・この私が?・・・ありえない。』


独り言のように呟くその姿に、フィンは眉をひそめた。


―苛立ってやがるのか?―

まるで、思い通りにならず機嫌を損ねた子供のようだ。


『思い通りにいかなくて悪かったな。俺はしぶといんだ。この程度じゃ死なねーよ!残念だったな。』


フィンが吐き捨てる。

ルシアスは顎に手を当て、しばし考え―やがて口を開いた。


『【神の生まれ変わり】に【神の子】・・・そして【ただの人の子】か・・・。』


その視線が、フィンを射抜く。


『やはり不釣り合いだな、君は。この物語には【そぐわない者】だ。』


その目は、氷のように冷たかった。


『まるで神のような振る舞い・・・冒涜の極みです。許しがたい』


ノクスもまた、鋭い眼差しで言い放つ。

ルシアスは微笑んだ。


『神か・・・。』


ゆっくりと言葉を紡ぐ。


『神になるのも面白い。新たな神話を、この手で一から作り上げる・・・。』


そして、三人を見渡す。


『神には魔が必要だ。それも強大な魔が!』


わずかに口元が歪む。


『そうだ!お前たちがなってくれ。今はまだ小さな灯でいい。だがいずれ、大きな炎となって私の前に帰って来い。それを打ち破る事で、この神話は完成し語り継がれることになるのだ。』


そう告げると、マントを翻し、闇へと溶けていく。


気配が消える、その刹那―


『グレイスは、その時まで生かしておこう。期待しているぞ、諸君。』


声だけが、礼拝堂に残った。


―助かった―


三人は、その場に崩れ落ちる。

だが、安堵している暇はない。

立ち上がり、正面扉を押し開けると、階段を駆け下りた。

その先に見えたのは、数台の馬車。

―どれだ?―

迷う間もなく、一台の馬車が動き出す。

―あれだ!―

確信にも似た直感で、三人は駆け出した。

飛び乗り、扉を閉めた瞬間―

前方の小窓が開く。


『ずいぶん遅かったな。一人で逃げちまうところだったぞ。』


軽口を叩く男の顔に、三人は見覚えがあった。


【できる男コムニス】


その何の特徴のない顔に、ようやく安堵が広がる。


『このまま王都を出て南西へ向かう。ある程度離れたところで下ろす。

―心の赴くまま進みなさい―

これが姫様からの伝言だ。』


エリシアは俯き、そしてゆっくりと顔を上げる。


『グレイス姉さま……待っていてください。』


強く、言い切る。


『エリシアは、必ず戻ります』


馬車は走り出す。

夜の闇を切り裂くように。

その先に待ち受ける、まだ見ぬ運命に向かって―


第二章 【神聖帝国】 完


第二章 完 になります。

第三章 では、またもや運命の荒波が三人に襲い掛かる事に・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ