第二章 【神聖帝国】4. 王都脱出 パート1
やっと出会えた三人。
久々の再会は喜ばしい事なのか、それとも・・・
4話、王都脱出 はじまり、はじまり。
気が付けば日は完全に落ち、神殿の外には闇が訪れていた。
廊下にはいつの間にか明かりが灯され、この部屋だけが取り残されたように静まり返っている。
『お前たち、どこから……。』
思いもよらぬ来訪者に、驚き口を開けたまま固まっていたが、はっと我に返り、二人が入ってきた扉を閉めて鍵を掛ける。
『どうしてここに?見つかったら只では済まないんだぞ。』
小声ではあったが、強い口調で問い詰める。
『いやー、まだ報酬が未払いだったもんでね。取り立てに来たんだよ。』
エリシアとは対照的に、軽い口調で答えるフィン。
それにノクスが続く。
『エリシアさんが【王都に来てくれ】と言ったんですよ。来たからには、友人に会いに行くのは当然の流れです。』
―友人―
ノクスの言った言葉に驚き、自分の顔がわずかにほころんでいるのを感じる。
『友人か……そんな言葉は、今まで掛けられた事がなかったな。』
少し俯き、目を細めてはにかむ。
だが直後、眉にしわを寄せ、釣り目になると二人を睨んだ。
『そんな事はどうでもよい……いや、よくないが!なぜここにいる?命知らずなのか?今なら私が言って外に出してもらうこともできるだろう。まったく【王都に来い】とは言ったが今ではないだろう⁉ それにフィン!お前には報酬は払っただろう!』
小声ながら、勢いよくまくしたてるエリシア。
『報酬って、このガラクタの事か?』
フィンは改めて、金色に輝く腕輪をエリシアに見せた。
『そうだ!その腕輪を売れば十分な報酬になるだろう?何が不服なのだ?』
その言葉にフィンとノクスは顔を見合わせ、手を胸の前で開き、【やれやれ】といった仕草をする。
『あのなぁ、こんなにデカデカと紋章の入った物、普通の店じゃ買い取ってくれないんだよ。最悪、怪しまれてお縄ってのが関の山だ。指輪を売って足が付いたの忘れたのかよ。』
フィンの言葉を聞いて、エリシアは少しきょとんとする。
『そうか、そういうものなのだな……それはすまなかった。』
素直に謝るエリシアだったが、思い出したかのように口を開く。
『ガラクタ……そう言ったな?それは私が命と同じくらい大事にしているものなんだぞ!あの時、金目の物がなくて迷った挙句、断腸の思いでお前に渡したんだからな!それに、それは尊敬するルシアス兄さまから頂いた……。』
言い終わる前に、エリシアは言葉を呑んだ。
―ルシアス兄さま―
昼の出来事が脳裏によみがえる。
―刺客を放ったのは【私だ】―
その言葉の真意を、まだルシアスから聞いていない。
『ルシアスって、お前の兄貴だろ?さっき会ったぞ。顔は見れてないけど……。』
その言葉に、さらに驚くエリシア。
フィンが続ける。
『廊下で突然話しかけてきてさ、一歩も動けなかったぞ。なんか、お前から色々聞いて知ってるみたいだったな。これまでの旅の話とか、ノクスの魔術とか。
まあ……俺は名前も覚えられてなかったけどな。お前から俺の活躍、ちゃんと伝えといてくれよ。報酬の額に関わるからさ。』
フィンの言葉に、エリシアは固まる。
―私は、兄さまと話していない―
額から汗が噴き出し、顔から血の気が引いていくのが分かる。
その様子を見ていたノクスが、慌てて声をかける。
『大丈夫ですか?エリシアさん。顔が真っ青ですが。』
ノクスの問いに答えることもなく、エリシアは一人呟く。
『……ない……話してない。……お前たちの事も、旅の事も……。』
―⁉―
その言葉を聞いて困惑する二人。
確かにルシアスは知っていた。旅の事も、二人の事も。
『そんなはずはありません!確かにエリシアさんから聞いたと言ってましたし、それに、とても楽しそうに話してましたし。』
ノクスの言葉に、今となっては違和感が残る。
―楽しそうに―
実の妹が命がけで帰還した事を、楽しそうに語れるものなのだろうか?
そう思った瞬間、フィンの背筋に冷たいものが走る。
『話していないなら、なんでアイツは知ってるんだよ。まるで俺たちを視ていたみたいじゃないか……。』
その言葉と、ほぼ同時だった。
部屋の扉の鍵が、カチャリと音を立てる。
三人が振り返ると、扉がゆっくりと開き、一人の人物
が入ってきた。
そして、その人物は静かにこう告げた。
『その通りです。これから、その事をあなたたちに知ってもらいます。』
扉を開け入ってきたのは誰なのか?
ルシアスとは何者なのか?
パート2に続く。




