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第二章 【 神聖帝国.】3. 潜入 パート5

レイラからの手紙をコムニスに渡す二人。

果たしてコムニスは約束の時間に現れるのか?

日暮れ前、街が茜色に染まる頃、二人は神殿の裏手にある小さな通用門の前にいた。

今日、五回目になる鐘の音が、街中に鳴り響いている

落ち着かない様子で人を待つ二人の姿は、どこか不安げにも見える。


『アイツ来るよな?ショックを受けて来ない、なんて事ないよな?』


フィンが、誰に言うでもなく呟く。

それを聞いたノクスは、フィンの顔を見ながら口を開いた。


『手紙を受け取った時の様子を見る限り、大丈夫だとは思いますが・・・さぞ、お辛いでしょうね。』


ノクスはそう言って、待っている相手、コムニスを想い、目を閉じて祈る。

どうやら、二人はコムニスの恋は実らなかったと思っているようだ。

ノクスの祈っている姿を見ながら、フィンは手紙を渡した時の事を思い出していた。

『返事を貰って来てくれて、ありがとう!君たちなら貰って来てくれると信じていたよ。』


コムニスはニコニコしながら、大げさな程に喜びを表現する。

そして手紙の裏面を見ると、少しだけ真面目な顔つきになり、二人にこう言った。


『では、約束通り神殿の中に入れるように手配します。私は今から夕方まで、その手続きと準備をします。二人は夕方・・・五回目の鐘が鳴る頃、神殿の裏手にある通用門の辺りで、私が来るのを待っていてください。』


そう言って振り返り、歩き出そうとするコムニスをノクスが呼び止める。


『大丈夫ですか?まだ手紙を開けて読んでないようですが・・・。』


―大丈夫ですか?―

この言葉には、色々な意味が込められていた。

フィンも不安そうにコムニスを見ながら、少し言いにくそうに口を開く。


『どんな事が書かいてあっても、心を強く持つんだぞ・・・そのうち良い事だってきっとあるからさ。』


その言葉を聞いたコムニスは、笑いながら答える。


『この手紙は、読まずとも何が書いてあるかは想像できています。きっと想いの詰まった、素晴らしい内容でしょう。私は今から起こることを想像するだけで興奮が抑えきれません。』


そう言って手紙を胸に抱き、目を閉じて深呼吸する。


『では、後ほど。』


振り返って歩き出すコムニスの背中を見ながら、二人は思った。

―本人が幸せそうなら、これ以上は言うまい・・・―

そんなことを思い出していると、背後から声が掛かった。


『お待たせしました。では神殿の中に案内します。貴方たちは、今から神殿の清掃員として中に招き入れます。刃物の類は表立って持って入る事はできないので、この箱の中入れてください。あとでお返ししますので。』


そういうと長細い箱を取り出してフィンに促す。


『この弓と短剣は、父さんから受け継いだものなんだ、必ず返してくれよ?大事なものなんだ。』


フィンは布でくるんだ弓と、腰に差していた短剣をコムニスに預ける。


『分かってますよ。必ずお返しします。』


コムニスはニコリと微笑み、フィンの弓と短剣を受け取り、丁寧に箱にしまう。


『では、これから貴方達は清掃員ですので、私語は謹んで私に付いてきてください。バレたら私の首も飛んでしまいますから。』


三人は通用門をくぐり無言で進む、途中、守衛所があり緊張が走ったが、コムニスが許可証を見せて、疑われず中に入ることができた。

どうやらコムニスは、神殿に信用があるようだ。

少し神殿の中を進んだところで、清掃員の控室と思われる部屋に入る。


『ここに、この箱は置いておきます。ここからは私は清掃の仕事に入りますので、別行動になりますが、神殿の見取り図を用意したので、ここで憶えていってください。』


コムニスはおもむろに見取り図を広げて二人に見せ、ある一点を指差す。


『ここがエリシア様の部屋と思われます。私が声を掛けていただいたのがこの辺りでしたので・・・夕暮れ時は神殿からは人気がなくなりますが、無人ではないので、くれぐれも見つからないように気を付けてください。それと目立たないように上だけですが、清掃員の服も用意したので羽織って行ってください。』


そう言って見取り図をしまい、清掃員の羽織を二人に渡す。

そして自分は清掃員の格好に着替え始める。


『分かった。ありがとう。』

『ありがとうございます。』


二人は渡された上着を羽織りながら、コムニスのあまりの手際の良さに感心する。

そして目の前の【デキる男】の姿を見ながら・・・

―この姿をレイラさんに見せたかった―

少し残念な気持ちを引きずりながら、慎重に控室の扉を開いて廊下に出た。


神殿への潜入に成功した二人。

目指すはエリシアの居る部屋・・・無事たどり着く事はできるのか?

パート6に続く

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