第二章 【神聖帝国】3. 潜入 パート4
潜入の準備が整ったフィンとノクス。
一方、エリシアは・・・
エリシアは自分に用意された部屋に戻ると、窓辺にもたれかかり物思いに沈んでいた。
―【私だ。】―
何度考えても、その言葉の意味が分からない。
『兄さまは、何を私に伝えたかったのか・・・。』
答えの出ない問いに心を揺らしながら、虚ろな瞳で外を見つめる。
気が付けば、外は夕暮れに街が染まり始めていた。
ふと視線を部屋の中に戻すと、部屋の中央のテーブルに大きな箱がある事に気づく。
―今朝には無かったが・・・どこぞの貴族の貢ぎ物か?―
そんな事を考えながら、何となく箱を開けてみる。
『これは・・・⁉』
思わず声が漏れた。
中に入っていたのは、軽装で動きやすそうな服と、革製の胸当て、そして見慣れた一振りの剣。
―ガルデレイン―
入念に手入れが施され、刃は見違えるほど美しく輝いている。
『誰がこんな事を・・・フフッこのままこの服を着て旅立てたらどんなに・・・。』
言い終える前に、自ら言葉を呑みこんだ。
―これ以上は望めんな。―
そう思いながらも、エリシアは服に袖を通す。
『ハハッ!ぴったりだ。まるで私のために、あつらえたような出来じゃないか。』
自然と顔がほころぶ。
部屋の中をクルリと周り、剣を構えて素振りをする。
『私は女剣士エリシア!諸国を旅している冒険者だ!悪党は許さない!』
思わず一人芝居を始めてしまう。
気分はまるで、世界を旅する冒険者だ。
『・・・はしゃぎすぎたな。』
苦笑しながら着替えようとしたその時、箱の中に一通の手紙が入っている事に気が付いた。
箱から取り出し、封を切って目を通す。
―親愛なるエリシアへ。
貴方には伝えねばならない事があります。そのための使者を貴方の元に送りました。
あの二人なら必ず貴方へたどり着く事でしょう。
そして貴方は、壁にぶつかり、悩むことになるでしょう。
そんな時は、自分の心に従いなさい。
貴方は貴方が思っているより自由なのだから。
この服と、この剣は、その時の為に送ります。―
送り主の名前はない。
だが、その字に何故か懐かしさを感じた。
―私はこの文字を書く人を知っている―
そう思ったが、どうしても思い出せない。
『二人の使者か・・・フフッまさかな。』
エリシアの頭の中に浮かんだのは、フィンとノクスの顔だった。
辛く厳しく、そして楽しかった王都への道中を思い出しながら、静かに呟く。
『今日は・・・このままの姿でいよう。』
手紙の主は誰なのか?三人は再び出会うことができるのか?
次回、神殿潜入待ったなし!




