78話 神様と人間
あかりが勇者を殺した罪によって処刑されようとしていた時、当然なにもせずにいるなんて選択肢はあかりにはなかった。
長い時間がそうさせたのか、変わってしまったあの子はそれでも大切な妹だから。
だから、せめて真実が知りたいと思った。
最初にあかりが考えたのは牢獄からの脱出だった。
だが、それはすぐに断念しなければならなくなった。
あかりの入れられた牢獄が、勇者用に作られた物だったからだ。
あかりと勇者は魔力量も流れもよく似ていて、壊すのは至難の業だと判断せざるを得なかった。
そしてあかりは、脱出する日を、刑罰が言い渡される時に決め、作戦を考えることにした。
勇者というここら一帯の防衛の要を殺したことになってる。
それなら、おそらく即日死刑執行だろう。
そう思っていた。
だが、それから二日後呼び出されたのは処刑の場ではなく、対勇者用の結界が張られた神殿だった。
牢屋以外にもあるとは思っていなかった。
諸国連合の本部は神殿の中、というより勇者が神殿の中心部にいたために諸国連合が実質勇者のいる場所になったとでもいうべきだろう。
諸国連合なんて、ただの飾りみたいなものだ。
そして、神殿の中はなんとも言い難いような暗い空気に包まれていた。
なんというか、凄まじい魔力のうねりを感じる。
ひたすらに濃い魔力のうねりが自分の体の魔力を根こそぎ奪っていきそうな、自分の魔力が乱される気配を感じる。
よくここにいる人は正気でいられるな………………あっ。
そっか、だからあの子は変わっちゃったのかな?
魔力って、精神状態にも変化をもたらすから。
多分……そうだよ……きっと。
そうだったらいいな。
神殿はどこもかしこも真っ白で、綺麗な場所だと言う印象が先に来るはずなのに、どうにも薄気味悪い。
そんな長い長い廊下を抜けると、そこには豪勢な衣を身に纏った男がたっていた。
そいつはこの神殿の司祭らしい。
私はあまり神殿について知らないが、身なりを見る限り最高指導者なのだろう。
そう思っていたが、その司祭とやらが
「教皇様へとお取り継ぎいたします」
と言って、ゆっくりと魔法を紡いでいく。
魔法は美しい数字で、誰がどうやっても同じように美しく、それでいて一人一人違う色が出てくる。
彼の魔法は正直言って怖い。
こちらの魔力全てをかき乱してぐちゃぐちゃにして、なにもわからなくなりそうなくらいに。
そうして、気がつくと別の部屋に移動していた。
どのくらい時間が経ったのかは分からなかったが、気がつくと先ほどの司祭はいなくなっていた。
そして、目の前にはアメリア様がいた。
思わず手を伸ばそうとすると、その手が切られていた。
驚くほどスッパリと切られたその切り口は、見なくともわかるあの方のものだった。
その方は普段私に向ける視線とは全く異なった目を、なんの感情も持たないような目で、
「創造神様、どうされますか?」
忠誠心というにはあまりにも歪で、狂信者というにはあまりにも熱のない、
そう。
道具みたいな目をして。
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