76話 おかしな交渉の裏話(前編)
交渉の席に着いたのは私とアメリア様の二人だけ、元々の条件ではアメリア様も除外されていたそうだ。
それが勇者たっての希望と聞いた時から嫌な予感がしていた。
そしてその予感は当たってしまった。
あの勇者は私のかつての妹だった。
私は昔、とある国の貴族だった。
私の母は国一番の美少女と言われていて、私の父親だった人物も、それが受け継がれることを期待していた。
それなのに、生まれてきた私はどこの馬の骨の血とも分からない黒髪黒目だった。
父だった男は怒り狂い、生まれた時からある程度経った私を神社というところに送った。
そこから定期的に来るようになったのがあの子だった。
その子は見るからに上等な服装で、かつての母だった女に憎たらしいほどよく似ていた。
そしてこう言うのだ。
「お姉ちゃん、今日はお菓子持ってきたんだー」
あの子は毎日来た。
それがなにを起こしているのかを知らないままに。
もしかしたら、知っていたのかもしれないけど。
私は夜中、いつもかつての家に呼び出されてこう言う。
「なぜ貴様はうちの娘に付きまとう!何回言えば分かるのだ!貴様は呪いを持っているのだぞ!」
それならここによんでんじゃねえよ。もっと遠いとこに行かせりゃいいじゃん。
数々の悪態を脳内で呟くことしかできない。
暴力は振るわれないことになってる。
だって、傷なんて残さず綺麗に治るようにしてるもん。
最初は思わず悲鳴をあげてたけど、いつしかそれもなくなった。全ての痛みに鈍くなった。
あの子がちょうど16歳になった時、私は殺された。
どうやら、あの子の悩みを吐き出させるための道具として使っていたらしい。
長い長い自分の生命の中で、はっきり覚えてるのはこの人生だけ。そこからはなにも覚えていない。
あの子、なんて名前だったんだろうな。
今の人生は、多分途中で終わるはずだったんだと思う。
でも、アメリア様のおかげだった。
そんな矢先、あの子がこの世界にいることが分かった。
久しぶりに会ったあの子は、前と全然変わらないように見えて、大きく変わっていた。
他の人に関心を持たなくなっていた。
あの子はそれどころか、アメリア様に明確な敵意を持っていた。
咄嗟に連れ出したアメリア様は、いつもと同じような魔力を流して、落ち着いていて。
そんなアメリア様を見ていると、いろんな言葉が溢れ出てきて。
記憶喪失になっているアメリア様に言うことではないのは分かってた。
でも、言いたかった。
そして、話すうちにアメリア様の表情が変わるのが見えた。
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