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お茶会前日2


「じゃあ、ラダお休み」

「お休みなさい」


 両親を手伝って明日の仕込みなどをしてから、湯あみを終わらせ、ラダは二階の自室に戻る。

 ベッドに腰かけるとすぐに声がし始めた。


『待っていたよ~~』

 

 最初に聞こえたのは風の精霊。


『抜け駆け!オレッチから報告させてくれよ』

『オイラも!重要ダヨ!明日王女様たちがアイツに会うんダカラ!』


 火の精霊が割り込んできて、それに水の精霊が加わる。


「アレシュ様が?」


(なんで、あいつと?)


 それだけでラダの感情は高まる。それに反応して諦めたような風と光の精霊の声がした。


『水の精霊め。いいよ。譲るよ。ボクは最後でいいよ』

『ワタシは水の後にしますね』

「ごめん。ありがとう。それで水の精霊、どういうことなの?」


 (風の精霊には後から話を聞く。今はあいつの動きが知りたい)


 ラダは詫びをいれながら、水の精霊に話を促す。


『ほら、王女様はアイツを暴漢から助けたことになっているデショ?それでお礼で家に招待されタンダヨ。マクシムはアイツだってことに気が付いているから大丈夫だけどネ。まあ、何かあったらオイラに任せて』

『オレッチもいるぜ』


 普段ならそこで乱暴なことはしないようにと止めるところなのだが、ラダの中のヤルミルが、獰猛に思いを抱く。


(王女様には絶対に触れてほしくない。あいつには。そのためには……)


『今回はちょっと乱暴でもよさそうだな』

『腕がなるね!』


 火も水の精霊もそれを言い事に好き勝手に言っているが、ラダの耳には届いていなかった。


『ラダ。ヤルミル!』


 ラダを我に返らせたのは、光の精霊であり、彼女は瞬きを繰り返す。

 そうしてやっと自分がヤルミルの想いに浸っていたことに気が付く。


『今のアイツは王ではありません。私たちの力を見せつけるとおかしな方向に話がいくかもしれません。折角演劇までして消した噂がまた広がるかもしれません。なので要注意してください』

『ちぇ、なんか光がうるさくなっている。闇がいないと光がうるさいな』

『わかってるヨー』

『ラダ。あなたも引きずられないように。あれは昔のことなのですから』

「うん、ありがとう。危なかった。本当に」

『それでは火と水の精霊の話は終わりですね。次はワタシですね』


 隣国の王への憎しみが強すぎて、判断が鈍くなっているラダに変わり、光の精霊が火と水の精霊を押さえてくれていた。それに感謝するしかなかった。精霊の中で一番子供っぽいのも火と水で、暴走がちになるのもそうだった。いつものラダなら釘をさすのだが、今回は自分の気持ちを持て余しており、それどころではなかった。


『その前にオレッチ、精気もらうから』

『オイラも~~』


 二つの精霊の声がして、両頬を撫でる感触がした。少しだけの脱力感で済んで、ラダは首を傾げる。


『光が言ったんだけど、毎日報告にくるから、そん時に少しずつもらうように決めたんだよ』

『ソウソウ。その方がオイラもゆっくり味わえてイイシ』


 味わうとかなんだか少しだけ気になる表現なのだが、負担が軽くなることはよい事だった。火と水の話し声が途切れると今度は水の精霊の声がし始めた。


『ワタシは王太子ゾルターンの動きを見てましたが、心配ありません。むしろ、味方です。マクシムに協力を仰っていましたから』

「そう、よかった。本当に。だってイオラ様は口では嫌味を言うけど、いい人だし、もう怒ってない気がしたから」

『確かに彼女は変わりました。前世むかしを昔と割り切ったようです。恋という感情は偉大ですね』

『恋?!』


 光の精霊が似合わない言葉を使ったので、ラダは聞き返してしまった。

 するとありない咳払いが聞こえる。


『ま、一時は危なかったですが、彼女はもう味方でしょう。本当、あなたが死ななくてよかった。あの時のようにあなたが死んでしまったら……。ヤルミルの命を奪ってしまったワタシたちは本当に悲しかったですから。しばらく精霊界に皆戻りましたからね』

「そうなんだ」

『そうですよ。あなたが生まれて、戻ってきましたけど』

「そうなんだ……」


 それほど精霊に好かれている自分がなんだか不思議で、ラダは笑ってしまった。


『どうしたんですか?』

「不思議だなあと思って」

『そうですか?』


 水の精霊は少しだけ尖ったような声になる。


「別に好かれているのが嫌とかそういうのじゃないの。ただどうして私なのかなって」

『それはワタシたちも不思議なのですよ。ワタシたちはラダが、その魂が愛しいのです。そしてその精気を美味に思える。それは確かに不思議かもしれません』


 美味というところが相変わらず、引っかかるのだが、ラダは精霊たち自身が不思議というものだから、そういうものかと思うことにした。


『それでは、ワタシもこれで。精気をいただいていきます』


 光の玉が踊るようにラダの周りを飛び回り、額を撫でる。少しだけ眩暈がしたが、倒れるようなものではない。そうして光は消え、蝋燭の温かい明かりだけが部屋を灯す。


『やっとボクの番だね』


 最後は風の精霊で、溜息まじりの声が聞こえた。


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