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カクテラから南東は、ヤシの木やソテツが生い茂る、熱帯雨林の地でしたわ。ゲームの世界だからか、今のところスコールはないですし、気温も特に変わったようには思えませんの。
木々の隙間から太陽の光が漏れでているものの、木やその葉が光のほとんどを覆い隠していて、薄暗いですわ。
今は、1列になって行動していますわ。
先頭のギズロフが、ナイフで枝を切って道を開き、そこを豚、ロキシー、私が続き、メイベルが後方の警戒をしながら進む、といったように進んでいますの。
「茜ちゃん、こういうところには敵が潜んでいるかもしれないから、気をつけて。こんなシチュエーションで何回殺されたか、かああああ」
「豚上さん、大丈夫ですの?」
天に拳を突きだして興奮している豚はさておき、ギズロフの話だと、もうしばらく行くと祠があるそうですが、今のところは全く見えませんわ。
「ギズロフ、本当に合っているんだろうねぇ」
メイベルからも疑いの声が出ましたわ。
ギズロフはこの疑いにも表情を動かさず、道にかかる枝を切り捨てていますの。
「待てって。地図だともうしばらくだから、な?」
森の中は静まりかえり、ただ私たちの足音と、伐採された枝が落ちる音しか聞こえませんわ。
歩くのにも飽きてきましたけれど、そんなことを口に出す訳にもいきませんし、困りましたわね。
歩く速さがわずかに遅れてきた、そんなときですわ。ギズロフが伐採して、ふと立ち止まりましたの。
豚はギズロフに頭からぶつかりそうになるのを、間一髪で持ちこたえましたわ。
「うわあ、危ない!なんだよギズロフ、ぶつかりそうになっただろ」
「豚、いやみんな、見てみろ」
ギズロフが、振り向きましたの。彼の背後には、何も遮るもののない太陽の光が照りつけているところでしたわ。
ギズロフは、にやりと笑いながら言いましたの。
「喜べよ。お目当ての、祠だぜ」
そこは、三方を熱帯雨林に囲まれた洞窟でしたわ。上を仰いで見ると山があり、山の裾野に洞窟があるようですの。洞窟は2tトラックが丸々入るのではないかと思うほど大きく、洞窟周辺の地面には切り揃えられた石を敷き詰めてありましたわ。
自然にできた洞窟に、周辺を石で敷き詰めて、植物に埋まらないようにしたのかしら。手間が掛かってますわね。
洞窟の中に入る前に、腹ごしらえをすることになりましたの。
戦闘が長丁場になると、空腹度までかまってられないそうですわ。
といっても、パンと水程度ですから、沢山食べられるわけではないのですけどね。
いつもなら、食事に対して一言は言う豚が、神妙な顔をして何も言いませんわ。珍しいこともあるものですわね。
その代わり、私に話しかけましたの。
「茜ちゃん」
豚の声は、真剣でしたわ。「このあと、どうするの?」
私は硬いパンのかけらを水で飲み込んだ後に、言いましたわ。
「オズワルドの店に戻りますわ」
「それで良いの?世界は広いのに、店に居っぱなしじゃ辛いんじゃない?」
「そんなことありませんわ。三食食べられて、時々メイビー草原にでも遊びに行くくらいが私にとって丁度良いですわよ」
ろくに考えもしませんでしたわ。ある意味、私の世界はあの工房でしたし、今も今で楽しいですけど工房にいないと落ち着きませんわ。
「そうか、ごめんね」
豚はそれきり黙ってしまいましたわ。
それから間もなくして、ギズロフが手をたたきましたの。
「話はそれまでだ。洞窟に行くぞ」
洞窟の中は内側に張り付いているコケが発光しているお陰で中はそう暗い訳ではないのですけれど、仲間の表情が見えにくいですわね。
私たちは、今は2列になって動いていますわ。
コウモリ型の魔物を追い払いつつ先に進んでいると、妙に明るい場所につきましたわ。
どうやら、洞窟の上部に穴が空いていて、そこから日光が入っているのですわ。ここが洞窟の最深部かしら。ここには、洞窟じゅうに鉱石が埋め込まれて、光に反射して、キラキラ光っていますわ。
その奥に、巨大な魔物がいましたの。
水晶が身体中に埋まっているサイのような魔物が、こちらを向いていましたわ。
「ありゃあ水晶竜だ!出るぞ!俺たちに勝ち目は無ぇ!!」
ギズロフが慌てて言いましたが、事態はもっと悪いことになってしまいましたの。




