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辛くも首都、カクテラに着きましたわ。
2人は入り口でギズロフを休めて、私と豚で先行して宿屋を探していますの。
豚から、この世界は病院がないことを聞かされましたわ。
その代わり、町で休めば、その中でも宿屋で休めば急速に治っていくそうですの。
今はメニュー画面を出したままで、探していますわ。そうすれば、宿屋の位置が一目でわかりますの。
不合理だとか、そんなことを言っている時間はありませんわ。
ここは不合理の世界、ゲームの世界なのですから。
「あった!」
豚が先に見つけたようですわね。
「そのまま、部屋を取ってくださいまし!」
豚に部屋を取るのを任せて、私は3人を呼びに行きましたわ。
豚の取ってくれた部屋は、なぜか2階だったのですけれど、誰も何も言わずに、ギズロフを運んで行きましたわ。
彼を寝かせると、誰ともなくため息をつきましたの。ようやく、あの危機を乗り越えたと実感が湧いてきましたわ。
ギズロフは寝ているのか、気絶しているのか分かりませんわ。
メニュー画面を開いて、ギズロフの体力を確認すると、2割ほどにも満たない上に、状態は「疲労」ですの。
回復薬は飲ませましたけれど、心配ですわ。
メイベルが私に話しかけましたわ。
「おい、アプグルンの実あったろ。あれはもう乾燥したはずだ。あれで回復薬作ってくれ」
そうですわね。私ができることは、それしかないですもの。
バッグから実と、前に取った薬草を全て取りだしましたわ。
そのままメニュー画面を操作して、≪鎚と眼鏡≫をなぞり、薬のカテゴリーを選択しましたわ。
今作れるのは、回復薬の一つである、「赤実甘寧散」ですわね。
それをなぞると、個数の欄が出ましたわ。
できるだけたくさん必要ですが、全て作るには時間がかかりますわね。
発光魔方陣を出して、準備万端ですわ。
「……あんまり無茶するなよ」
メイベルが小声で言ったことに頷いて、作業を始めましたわ。
乾いた実から種を取り、皮付きのまま、薬草と一緒に粉になるまで混ぜますの。
これで一包の出来上がりですわ。
直前に水と一緒に飲みますの。
さて、材料はたくさんありますわ。
作らないわけにはいきませんわね。
私はそのために必要とされたのですから。
一包づつ作ることにして、結局17包、作りましたの。
さすがに徹夜して作業をすれば、翌日は戦闘どころではなくなってしまいますから個数はセーブしましたわ。
そろそろ眠らなければなりませんわ。
目がショボショボしてきましたの。
発光魔方陣を消して、眠りにつきましたわ。
私が起きると部屋には、ギズロフが上体を起こしていましたわ。
「おう、姉ちゃん!みっともねぇところ見せちまったな」
「お気になさらず。体はもう大丈夫ですの?」
「ちっとは休めたからな。俺が倒れた間に何かあったか?」
「何もないですわ。全員無事ですわよ」
「そうか」
ギズロフの顔には、昨日ビッグエイプにつけられた傷は後すら見当たりませんの。
でも、その表情は苦いものでしたわ。
「こうなるなら、とっとと逃げれば良かったんだがな、焼きが回ったかもな」
私は、何も答えませんの。もし一人なら逃げられたかもしれない、といって、どうなるというのかしら。
ここで置いて行かれたら、生きていけないというのに。
豚が、いつもより早く起き出しましたわ。
豚は真っ直ぐにギズロフの方に行きましたの。
「ギズロフ、僕は」
もしかして、豚は後衛に行って、結果的に攻撃をギズロフへ集中させてしまったことを後悔しているのではなくて。
ギズロフは穏やかな顔をしていましたわ。
「豚、ちょっと来い」
豚は浮かない顔で、ギズロフの手が届く距離に来ましたの。
ギズロフは穏やかな顔で――
「いへへへぇぇぇぇ!!」豚の口を思い切り左右に引っ張りましたの。
「お前もうちょっと持ちこたえろよ!俺の怪我が予想以上に増えたのはお前のせいだろうが」
「いひゃいいひゃいいひゃい」




