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 それにしても、先程気になった騒がしい音は何だったのでしょう?それに階段の封鎖や、廊下の絨毯……ラーシャ様をわざと王妃様の執務室まで導いているかのように感じます。

 もしや、思い過ごしではなく本当に導いてるんですかね?王妃様がいらっしゃったらそれでもいいですけど、今は不在ですし……

 とかまた考えてたら、いつの間にかあんなに先までラーシャ様が進んでおられました!!なんであの方はハイハイのスピードがあんなに早いんですか?……


 王妃様の執務室はこのまま真っ直ぐ進めば着くのですが……やはりわたくしの思い過ごしではないようですね。廊下を過ぎてもまだ絨毯が敷いてある……

 これは何かの意図があって、敢えてラーシャ様を執務室まで誘導しているようです。

 猛スピードでハイハイをしているラーシャ様の後ろ姿を見ていると、わたくしの耳に遠くの声が聴こえてまいりました。


『おい……………様が…………か?』


 やはりまだ遠いですね……所々聞き取れないのですが、この距離からすると王妃様の執務室前に兵が立っているようですね。やはりラーシャ様を執務室まで……という考えは合っておりました。


 ラーシャ様の勢いは止まらず、近づくに連れ声がハッキリ聞こえてまいりました。これは……護衛たちのようですね。


『ラーシャ様はまだか?』

『もうすぐだと思うぞ。どうやら歩きからハイハイに変わったらしい……』

『……突進してこられるな……』


 少し遠かった声も音量を増して来る頃には、目視で護衛が確認できるようになりました。護衛もラーシャ様を確認すると、慌てて王妃様の執務室をノックして中に声をかけています。


『ラーシャ様がいらっしゃいました!!』


 それよりも中にはいったい誰がいらっしゃるのでしょう?王子様方でしょうか?


 執務室が近づくと、徐々にラーシャ様のハイハイスピードが落てきました。なんで分かるんでしょうかね?幼くとも、場所や道程などはもう既に認識できているって事なんですね。

 とか考えておりましたら、扉が開いて中から人が出てまいりました。ドレスの裾が確認できますから王女様ですかねぇ……え?……………はい?あれ?なんで王妃様がいらっしゃるんですか!?


「ラーシャ、お母様はここだぞー」


 ドレスを着ている事を気にも留めず、廊下に座ってラーシャ様に向かって腕を広げておられます。大好きなお母様だと確認したラーシャ様は、落ちていたスピードをあげて王妃様の腕の中へ向かっていきました。

 わたくしは、ゆっくり近づきながら飛び込むように突進して行かれたラーシャ様の後ろ姿を眺めておりました。満面の笑顔で抱きつくお姿は天使でございます!!


「ラーシャ、よくここまで来れたな。凄いぞ!……だけど、乳母達が心配していたじゃないか。暫く、監視付きだな。まったく……」


 前半は褒められていたが、後半は怒られているのだと理解したラーシャ様の元気が無くなっておられます……

 まぁ、確かに何事もなくここまで来れたのは危ない場所を城内の兵士、メイド皆が助けてくれたからであって、ラーシャ様だけの力ではありません。まだまだ難しいので理解できていない部分も多いでしょうが、徐々に今回の騒動に駆出された皆の気持ちも理解出来るようになるでしょう。


「グルーバー!!」


 王妃様に呼ばれたので顔を上げると、ラーシャ様を抱いたままわたくしの目線に合わせてしゃがみ込まれ、頭を撫でていただきました!!


「グルーバーがずっと着いていてくれたからラーシャが無事に執務室までたどり着けた。ありがとう。やっぱり、グルーバーを護衛に着けて正解だったな。」


 わしゃわしゃと頭を撫でてくる手が気持ち良くて、目を細めて頭を擦り付け、思わず………


「わん!!」

「今日のご飯は豪勢になるよう、料理長に頼んでおこう。」


 嬉しすぎて体の揺れが止まりません!!あっ!お察しの通り、わたくしは人間ではございません。ですが、王妃様より直々に任命を受けたラーシャ様の護衛なのです!!


 こうして、ラーシャ様の大冒険は幕を閉じました。いつの日か良い思い出になる事を願って。

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