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幕間⑥-1 伝説の勇者の剣を鑑定することになった  前編

 ある日の夕方。


 オレは神話級の武器……の残骸を目の当たりにしていた。

 王都内でも有数の大手武具店である『バルジナサハーズ』の事務室で。


 なんでオレはこんな所にいるんだろう?



 夕方の冒険者ラッシュ前。

 オレはリタたちとまったりしてた。


 するといきなりレンが『大口の依頼が入ったわ!』って店になだれ込んできて。

 オレを外へ引っ張り出し、結局2人でここまで来てしまった。


 店をほっておいて大丈夫なの? とか気にはなる。

 だけどまあ、悠里やこよりがいれば大丈夫……か?




 話を聞くに。

 つい最近、前線近くで城の遺跡が発見されたらしい。

 そこで神話上の産物『バルカナの勇者の宝石剣』が発掘されたそうな。


 それを鑑定するのかと思ったが、話はそんな単純ではないようだ。



 バルカナの勇者とは数千年前にこの国を建てたという始祖的な存在。

 その際ここいらを支配していた5体の化け物とそれらを率いる悪魔を退治した。


 そのとき勇者が装備していた武器が、今回発掘された宝石剣。

 この世の全てのモノを切り裂くとされる一振。神話ではそう語られてる。


 その刃は1塊の巨大な宝石を剣の形状にカッティングしたもの。

 魔力を込めれば強度はこの世界最強の金属と言われている神鋼を軽く越える。


 ただ、神話ではそれは悪魔の命と引き換えに破砕された、となっており。

 発掘された時も刃の大部分が細かく砕かれた状態だったという。


 某カレー屋の大盛り3000gを思わせる山盛りの宝石屑と、柄だけの剣。

 目の前の残骸がその伝説の武器のなれの果てってわけだ。


 それで、発見された剣はすぐに王都に送られて鑑定された。

 で、柄の部分は本物と断定され、砕かれた残骸もほぼ間違いないと結果が出る。


 そこで、国は発掘された剣の復元の手配を大手業者に依頼した。

 「バルジナサハーズ」のオーナーであるエルネス氏に。


 ここまでならオレの出る幕は全くない。



 問題は復元のため、店お抱えの鍛冶屋に残骸を持ち込んだ所で発生した。


 鍛冶士のスキルの中に壊れた武器を復元するものが存在する。

 だが、それでは剣が復元ができなかったのだ。


 しかもそれは破片の不足とか鍛冶士の実力不足とかそういうことではないらしい。


 多少の欠損なら、同じ素材を補填することで補うことも出来る。

 だが刃の部分である宝石屑にスキルが全く反応しなかったそうだ。

 

 で、依頼された鍛冶士は、そもそも刃の部分の宝石屑がニセモノと断じた。


 これにほとほと困り果てたエルネス氏がオレのウワサを聞き。

 転生者の鑑定士なら違った結果が出るのではないかとレンに相談を持ちかけた。


 これが今回の流れのようだ。




 エルネス氏は別件で退席しており、ここは2人だけに任されている。

 ずいぶんと不用心だと思うが、レンが相当信頼されているという事なのだろう。


 さて、現実逃避している場合ではない。

 どうせやらざるを得ないならとっととやるに限る。


 気を取り直して手始めに残骸を凝視し、意識を集中。 


 すると、とりあえずウインドウに情報が浮かんできた。


 剣の柄の部分は『バルカナの勇者の宝石剣』と出てる。

 状態は『大破』、そのあとに剣の概要や材質などが表示された。


 伝説の通りの代物だが、それにしても長さ90cmか。

 標準的なロング・ソードタイプだな。大剣みたいなのを想像してたんだけど。


 なにはともあれ、どうやら少なくとも柄は本物のようだ。


 続いて残骸の宝石のほうを見た。

 鑑定結果には『エンジャの魔宝石屑』とでてる。


 ちなみに一度スキル発動すれば、解除するまでは見た物の鑑定結果がすぐ出る。

 これもオレの鑑定眼だけの特徴らしい。地味に便利



 『エンジャの魔宝石』とは宝石剣の剣身を構成する宝石の名前である。

 説明にはその特徴と『武具の残骸』という補足が出ていた。


 もしこの宝石の中に別の物が混じっていれば『宝石屑』としか表示されない。

 また、武器の刃ではない魔宝石が合わさってるなら『武具の残骸』とは出ない。


 なるほど、他の鑑定士の鑑定結果はウソや間違いではなさそうだ。



「レン姉さん。

 発掘現場になにか手がかりになりそうなモノがなかったか、知らない?」


「どうかしら……そういえば、手がかりになるかは分からないけど……」


 そう言ってレンは懐から5枚の紙を取り出して渡してくる。

 それには、青色を基調にしたなにかの絵が描かれていた。


「わたしが別のルートで手に入れたその遺跡の壁に描かれていた壁画の写しよ。

 内容はバルカナの勇者の神話が表現されてるんだと思うわ」


「別のルートって、よく用意できたなぁ。

 さすが姉さん」


「きゅぅぅー。

 それは、シュウくん向きの案件ですもの!

 がんばって用意したのよ!」


 てか別のルートって、何そのカタギっぽくない単語。

 変なところに通じていないといいけど……。


 まあ、とにかく。

 なにかヒントがないかと思い、絵を見ながら考えてみる。


 確か神話では勇者は5体の化け物、そして1体の悪魔と戦っていたはずだ。

 ……? なるほど、それなら6枚あるんじゃないか?


「レン姉さん、壁画の写しってもう一枚ないのか?」


「ええ、わたしもそう思って問い合わせたんだけどね。

 6枚目の壁画は見つかってないそうよ」


 なるほど、まあ無いなら仕方がない。

 そこに手がかりがないか、5枚の絵を1枚1枚鑑定する。


 だけど鑑定結果はあくまでも写しとしての概要しか出ない。


 Wikiを見ても絵の内容に関しては聞いた以上の情報はわからなかった。

 実際の壁画を鑑定すれば、話はまた別なのだろうけど……。


 行き詰まり感を覚えながらも1枚1枚を見ていき、5枚目が目にとまる。


 他の絵は化け物らしいのと戦っているが、これだけは人っぽいのと戦ってる。

 てか、これは悪魔か。なるほど、これが最後の1枚ってわけだな。


 適当に眺めていると、その悪魔が手に持っている盾が目に入る。


 なるほど、神話では『剣が破壊された』と伝えられているだけだ。

 どうやって砕かれたかはとくに知られてはいない。


 おそらくはこの盾で防がれて破砕したって事なんだろうな。


 なにか違和感があるというか、気になる絵ではあるけど……。


「どう、大丈夫そう?」


「ああ、一応鑑定できたけど、やはりこれは本物の宝石剣の残骸だ。

 けど……」


 気になることがなくもなかった。

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