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本戦準備⑩ 謎の白い樹液の正体とは

 洞窟の奥で淡光樹の樹液を回収した次の日。

 オレたちそれを持ってこよりのところへ行く。


 彼女はいまだに迷っていた。


「うーん、やっぱりね。

 武器とか道具だけ作ってあげるっていうんじゃダメかな? シュウにい」


「ダメだね。

 フィールドに立つのが4人か5人かで大分違う。

 RPGだって4人パーティーが多いだろ?

 あれって4人だとバランスが少し悪いから。

 プレイヤーに迷う余地を生じさせるためにわざとやってるんだ」


「そうなの!?」


 でまかせだ。

 だけど、この際それっぽく聞こえればなんでもいい。


「パーティーを組むなら5人が鉄板。戦隊ものもそうだろ?

 別に前面に立って戦ってほしいわけじゃない。

 万が一敵が寄ってきたときに時間稼ぎをしてくれるだけでいいんだ」


「そうそう。強敵はあたしが引きつけているからさ」


「うーん。なんかもう少しメリットというか、そういうのが欲しいかなあ……。

 なんかこう本能に直接クるなにか、というか……」


「うーん、自分の値をつり上げるつもりかな?」


 というより、なんか『上手く説得してくれ』と言っているようにも聞こえる。


 てか、腰の手斧に手をかけるのはやめてほしい。悠里さん。


「ただまあ、こより嬢の本能にダイレクトに来るモノというと……」


 オレは道具入れから小型の水筒を出す。

 例の洞窟で回収したあの樹液が入っているやつだ。


「? これは? なにか美味しい飲み物でも入っているの?

 いや、本能とは言っても食欲じゃあ……」


「いや、飲んだりするものじゃないよ。

 多分見ればわかるだろうから、容器に注いでみな?」


 こよりはいぶかしげにオレから水筒を受け取ると、適当な容器に樹液を注ぐ。

 例のドロッとした白い液体が器を満たしていく。


「……これは!」


「どうだい?

 コレなら、こよりが今一番作りたいモノが作れるんじゃないか?」


「やっぱりそうなの!?

 ホントにコレ、フィギュアの素材になるの!?」


「フィギュア?

 ……って、あの人形のこと?

 それならそこの棚にだって木彫りの立派なのがあるじゃないか」


「あれじゃあダメ! ……なわけじゃないけど、これはコレなんだよ!

 シュウにいならわかるよね!」


 わかる。

 金属や木彫りもありだが、あの材質でないと出せない味というのもあるわけで。


 てか、この部屋の棚には木彫りや金属だけではなくロウ人形まで飾ってある。

 相当なものだが、見る限りプラスチック系のものがない。

 ここまでの娘だから、当然それで満足していないのもわかっていた。


 だけど元の世界で使われていた素材が中世に存在するはずもなく。

 オレも以前から、近い材質の天然樹脂で作られた工芸品などをさがしてた。


 そして見つけ出したのが、あの淡光樹の樹液を素材にした物だ。


 それを今回は鑑定眼で視て、書物と攻略Wikiで生息地を割り出し。

 そしてあの洞窟へ至ったということである。


「この樹脂の場所を知っているのはオレたちだけ。

 そして、オレたちと一緒じゃなきゃそこへ行くのは難しいだろうな。

 これからも、この樹脂がほしければ――」


「わかった! パーティーに加わる!」


 即答してきた。

 期待通りだ。


「で、これはもうもらってもいいんでしょ?」


「え? あ、ああ、それはもうこよりのモノだ」


「で、これの具体的な処理法はわかる?!

 わー! やっぱりシュウにいに目をつけておいてよかったよ!

 やはり期待通りの御仁でござった!!!」


「ご、ござった?」


「ああ、じゃあ説明するよ」


 こうして、オレたちは新しいメンバーをパーティーに迎えられた。

 実際、彼女の加入でどれくらい状況が変わるかはかりかねているところはある。

 だけど、どちらに転ぶにしても面白いことになりそうな予感はしていた。





 こよりの件が一段落して。

 オレはレンの店で、試合に使うマジックアイテムの整理をしている。


 もうすでに本戦を3日後に控えている。

 試用も含めると制作期間は1日しかないと言っていい。


 なので明日は効率よくこよりにアイテムの情報を提供する必要がある。

 そのための準備だ。



 ちなみに予選終了から本戦までで手に入れたレアマジックアイテムは2つ。


○波紋の指輪

○召喚の指輪


 どれも興味深い効果があるんだけど、本戦対策としてはあまりパッとしない。


 『波紋の指輪』は空気の動きを視覚的に見れるアイテムだ。

 発動すると、その振動や流れなどにしたがって空中に波紋が見えるようになる。

 主に洞窟などで出口へ向かう風などを見る用途で使用されてるものだ。


 ただ、これは鑑定眼と組み合わせると色々応用が利くかなと。


 『召喚の指輪』は魔物を召喚する。

 というと聞こえはいいが、実際は周辺の魔物を呼び寄せるだけのアイテムだ。

 当然、呼んだあとの魔物が服従するわけでもない。


 とりあえず戦闘修行や敵魔物のヘイト管理に使うのに良さそうな感じはする。

 だけど、今のところこの辺りの魔物をどの程度引き寄せるのかが見えていない。

 ので、要実験というところだ。


 どのみち本戦では使いようがない。




「お疲れさま! シュウくん

 ちょうどよかったわ!」


 色々検討しているとレンが店に現れた。


「ちょうどよかった?」


「ええ、わたし個人のお得意様からお問い合わせが来ててね。

 『破壊の指輪がつかえない』っておっしゃってるのよ。

 使い方でなにか心当たりない?」


 心あたりはある。


 その指輪は自然や近くの遺物の魔力を吸収し、相手のアイテムに注ぎ込む。

 それによってオーバーチャージさせてアイテムを破壊するのだ。


 ただ、その時に指輪内に魔力が十分ないと、溜まるまで効果はない。

 また魔力を大量に蓄積するタイプのアイテムの破壊には時間がかかる。

 例えば太陽の指輪とか。


 それらをレンに教えてあげる。


「なるほど、そういうことね?

 ありがとう! 次会った時にお客様に確認を取ってみるわ」


 彼女は感謝の笑顔を向けてくれた。

 が、すぐにふっ、と考え込むような表情をする。


「それにしても……太陽の指輪ってMpを貯めているのよね。

 そのMpって例えば人が受け取ったりとかできないのかしら?」


 それはムリだ。


 魔力には魔法属性があり、全部で火、水、風、土、光、闇、無の7種類。

 人が体内に持つ魔力は、『無』以外のどれかの属性をかならず帯びている。


 逆にアイテムに蓄積される魔力はこの無属性の魔力のみである。


 そして、生き物の身体は無属性の魔力を受け入れない。はじいてしまうのだ。

 また、無属性として存在する魔力を他の属性に変換はできない。


 アイテムに蓄積された無属性魔力を人間に取り込むことは不可能なのだ。


 それをレンに説明してみる。


「そうなの……、それができれば魔法がたくさん使えて便利なのにね。

 属性を変換するアイテムって、シュウくんとこよりちゃんで作れないのかしら」


 それもムリだと思う。


 少なくともそれを実現した遺物はない。

 書物で調べた限りでも実例の記述は見つからなかった。

 さらにWikiで確認してみたが、今のところそれに関係する記述もない。


 だた……。

 なにか気になることはある。心の中がもやもやしてるというか。

 それがなんなのか今のところはわからないけど……。

次回投稿は明後日の午前8時ごろになります。



ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!


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