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本戦準備⑪ 本戦前、土壇場で色々もめた

 こよりがパーティーに加わった次の日。

 彼女にアイテムを作ってもらっている間、オレたちは作戦会議をしていた。




「どういうこと!? 今回わたしをタンク役から外すって!」


 やっぱりこうなるか。


 こよりが加わったことで、作戦の幅が広がった。

 そこでより有利になるよう編成の変更を伝えたら、悠里が猛反発。


「まあ、聞けよ。まず今回は龍介という強力なアタッカーがいる。

 お前、こいつの攻撃を耐えたり防げたりする自信は?」


「全くないけど、勝つ!」


「あのなあ……」


 予選ではオレと悠里で前衛を押さえ、レンが後衛を突破してリーダーにタッチ。

 という戦法をとった。


 今回も基本はその流れになる。

 だけど、王子パーティーの編成は龍介を含む戦士系2人が前衛。

 治癒系と攻撃系の魔道士2人が後衛という構成。


 しかも今回の後衛は魔法戦士という感じで、近接戦闘の心得もある。

 この2人をレン1人で相手にするのはキツいと思う。

 

 そこで今回はオレが前衛を押さえ、その間に悠里とレンが2人で後衛を突破。

 どちらかがリーダーにタッチという流れを考えた。


 本当は姉さんとこよりの二人でアタッカーになってもらえれば理想ではある。

 そして悠里がタンクでオレが援護&ディフェンダーという配置がベスト。

 ただこよりとの約束もあるし、実際アタッカーは彼女の性格的にムリだろう。


「じゃあアンタはどうなの?

 龍介ともう1人を同時に押さえるとか、できるの?」


「とりあえず、容量が従来の3倍という、太陽の指輪改を作ってもらってる。

 それが通用しなくても、まあ、なんとかするさ」


「あの、勇者さま。その、勝ち負けの話ではないのですけど……

 ユーリさんにタンクの役目をさせてあげることはできないのでしょうか?

 2人にはしっかりと決着をつけさせてあげないといけない気がするのです」


 ……それは自分も思わないでもなかった。

 だけど、その方向で作戦を練っても、どうにも勝ちの目が薄くなる感じだ。


 なんとか二人を説得してよ、とレンをチラリと見た。

 けど、彼女はなにを考えたのか『がんばんなさい』と言わんばかりにウィンク。


 ったく。


「わかった。

 じゃあ悠里にはタンクとして龍介の対応に当たってもらうことにするよ。

 その際の立ち回りも考えておくから、お前、失敗するなよ?」


「はいな!」


「なら、今回の編成はコレかな」


 悠里をタンクに置いた場合のフォーメーションをこより以外のみんなに示す。


 といっても、こよりがディフェンスに入っているほかは基本変わらない。

 ただ彼女がいるぶん、今回はオレがアタッカー寄りの役割になる。

 あとは、悠里の立ち回りを考えないとな……。




 本戦前日の昼すぎ。

 オレは1人、いつも悠里と模擬戦をしている場所にいる。


 放課後に悠里と模擬戦を行う予定だ。


 皆が来る前に、昨日受け取ったアイテムをとりあえず一通り使ってみた。

 どれも使用感はバッチリで、特に問題はない。



 結局昨日、こよりに作ってもらったのは太陽の指輪改と短剣。

 それともう1つ、実験的にオリジナルマジックアイテムも用意してもらった。


 太陽の指輪改は、単純に内部容量を従来の3倍に引き上げたものだ。

 光の最大出力は従来と変わらないが、発光時間が約3分持つようになっている。


 短剣は当然、本戦では使用できない。

 これは、誘拐犯とオレが戦うことになった時に備えて用意した。

 色々オレ用に特化されてて、ちょっと中二心をくすぐるギミックも実装してる。


 オリジナルマジックアイテムは、実験半分でこよりに形にしてもらった。


 それは――


「シュウにい!!!」


 頭の中で状況の整理をしていると、こよりがいち早くやってきた。



「おう、予定より早く来たな。そんなに待てなかったのか?」


「シュウにいこそ。それにあたしは授業なんて関係ないし」


「まあ、関係ないのはオレも同じか」


「それで、どう? アイテムは? 使えた?」


「ああ、どれも問題なかったよ」


 そう言いながら懐の短剣を取り出す。

 それっぽく振り回すと、きゃっきゃとこよりが喜ぶ。

 オレもなんかやってて、楽しい。


 そんな感じで、彼女が作ってくれたアイテムを披露する。

 こよりはすっかりご満悦だ。


 それから雑談タイムが始まり、元の世界での趣味の話に花が咲く。

 そのあたりが落ち着くと、話題は明日の本戦のことになった。


「そういえば、王妃の誘拐犯が現れるんだよね?

 でも怪しい奴はわかってるんでしょ?

 じゃあ本戦前に捕まえればいいんじゃないかって思うんだ。

 どうなのかな? シュウにい」


「ああ、それは難しいな」


 てか、奴が将来誘拐を行うという具体的な証拠がない。


 オレだけが奴を偽転生者とわかるのは、鑑定眼で本物の死体を視てるから。

 皆に協力してもらうには、目の前で正体を暴いたあとでないと難しいだろう。

 だけど協力なしで転生者なみの実力をもつ奴をどうにかできるはずもなく。

 堂々巡りである。


「なるほど、もし犯人を捕まえるとしたら現行犯逮捕しかないってことだね?」


「その通り。

 それに、会場なら偽者も完全武装できないし周りには他の転生者もいる。

 目の前で王妃が魔物に誘拐されそうになっていたら、そりゃあ助けるでしょ。

 いくら教会の関係で転生者が関われないと言ったって」


 そのあたりはウィーラーも同じ判断だった。


 そもそも、読書会としても現行犯逮捕が望ましいと考えてるようだ。

 ことが起きる前に動くには『変化の指輪』の存在を各所に説明することになる。

 それは彼らとしても避けたいのだろう。

 


 なんてことを話しているうちに、レンと悠里とリタがやってくる。


「あらあら、こんなところで2人でデートかしら」


「授業にも出ないでなにしてるのかと思ったら、こんなところでデートとは」 


「デート、ですか……」


「そうそう、デートデート。

 だよね、シュウにい」


「どこの世界に、短剣をブンブン振り回してドヤ顔するデートなんてあるんだよ」


「へー、それがこよりの鍛えた短剣かぁ。

 これはわたしの斧と、どちらが強いかな」


「アホか! 武器の強さ比べる前にオレの脳天がかち割られるわ!

 だから斧に手をかけるのはやめてください悠里さん」


 こんな感じで、模擬戦は騒がしく行われた。

 もちろん木刀で。


 斧でなくても悠里の技量はかなり高くなってる。

 もう前みたいに回転の指輪で転ばせて勝利、のような戦法は通じない。


 ただ、それでも龍介を1vs1でなんとかできる感じはしない。

 本戦の勝敗は、オレと悠里の立ち回りがカギを握ってるだろう。

 それと、こよりが作ってくれたマジックアイテムも重要だ。



 

 以前からいくつかあったオリジナルマジックアイテムの構想。


 本来は試合が終わったあとに、頼んで作ってもらうつもりでいた。

 だけどこよりの手際の良さで予定より時間が余り。

 それで、昨日1つだけ作ってもらえることになったわけだ。


 今のところ特に形にできそうだったのは


○加算型のステータス強化

○魔力結界

○集光


 これらである。



 『加算型のステータス強化』は、本人の能力に関係なく一律強化をする効果だ。


 普通のその手のアイテムは対象の能力の高さに比例して強化量が増える。

 これだと元の能力が低いオレたちの場合、大して強化されないのだ。

 だけど、この効果なら能力の高さに関係なく効果が期待できる。


 『魔力結界』は簡単に言えば魔力の流れをさえぎる結界をつくる効果。


 例えば魔道士が魔力を周りから集める流れをさえぎり、魔法発動の阻止が可能。

 ただ、火炎魔法の火炎などはすでに魔力そのものではなくなってる。

 そのためそういう類いの効果を結界でさえぎることはできない。


 『集光』は光を集める効果がある。


 つまり光を1カ所に集中してなにかを焼くようなことができるというわけだ。

 まあ、正直ロマンアイテムであることは否めない。



 この中で一つ、どれを作ってもらうか。

 色々と考えたが、結局こよりに用意してもらったのは――。


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