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77話から一気にアップです
翌日には、ファースを伴い王城へ出向いた僕達。
大神官さまもテオ神官さまも、ずっと渋い顔のまま――ガルドは、元々楽天家な性格のせいか、まるきり気にしている風はなく、僕は…僕が一番この中で楽観視していたかも知れない。
王の私室へ呼ばれると思っていた僕らだったけれど、ファースの存在はそこまで受け入れられるはずもなく、謁見に使われるという広間で話をすることとなった。
だけど、ファースは自分の犯してきた罪を自覚しているし、更には反省もしているらしい。決して開き直っているのではなく、王達を目の前に彼女は項垂れる事もなく、しっかりと真っ直ぐと見つめていた。
王は――その姿に、少しだけ目を見開いてはいたけれど、ファースの告白を全て彼女の口から聞くことに決めたようだった。
正妃さま、王女、アロウと、宰相の一家、そして重臣達もまた、その場に顔を揃えている。
その中、ファースは臆する事もなく、自分の犯した罪、そしてその理由を淡々と語っていた。
もう、彼女の中には彼らを傷つけるような怒りなどない。それは、昨日彼女が目を覚ましてからずっと感じている。だから、僕はそれを見守るしかなかった。
随分と時間を掛けて、ファースは全てを話し終えると、その場に居た面々が大きく重い溜め息を吐いていた。
僕とガルドは、その場に留まって良いのだろうか?と、少し気になってはいたのだけれど、どうやら僕らは見届け人のようだ。
彼女の――その存在をどう扱うか?という――。
そして――王が出した結論とは……。
「この国から、即座に立ち去って欲しい――そなたが祖国へ帰りたいというのであれば、手続きだけはしよう――しかし、二度とこの国へ入ることは許さない」
たった、それだけだった。
理由は――彼女の痛みも、充分に理解できるから――という、王の温情。
けれど、間違えなく、それはガルドの心をも知ってるからの言葉。
どうやら、アロウと王女が口添えをしたらしいことが、何となく判ってしまった。
昨日、大神殿を出て行く時の二人の顔は、ファースへよりもガルドへ対する痛みを感じてか、ずっと歪んだままだったのだ。
重臣達は、その甘すぎる処遇に対し、少なからずの怒りはあったようだった。
けれど、相手が半精霊ということもあり、自分達だけでは対処出来ないだろうということも、彼らは知っていた。
だからこそ、口を噤んだのだろう。
そうして、ファースはミードラグースから退去処分となったのだった。
未来永劫、彼女がこの国に足を踏み入れる事のないよう、手続きをされる。
彼女は、自分自身へ術を掛けてでも、この国に入ることはないと誓っていた。
尚且つ、彼女からの贈り物――それは、彼女の術で狂ってしまった王城を清める事。
ほんの少しの術で、それは簡単に終わった。
すると――あの、禍々しい感じのしていた王城が、何となくだけれど清らかな感じがするようになった気がする。
そう――何ていうか、王城らしい――と言っても、説明にならないかも知れないけれど……明るい雰囲気を取り戻したのだ。
「アンジー達は、やっぱり村に帰ってしまわれるの?」
ファースの件が片付き、僕とガルドは王女の私室にお呼ばれしていた。
「うん――母に報告しなくちゃいけないし――セイにも、今回、凄く手を貸してもらったからお礼も、ね」
「そう……その後は、南の大陸に渡ってしまうのよね?」
「そうだね…一応、竜との話では、そうなる」
「――でも、帰ってきてくれるのよね?」
「そうだけど……その時には、ノルも隣りの国へお嫁さんになってるでしょう?」
「……うん……会いに、来てくれる…わよね?」
その心配そうな顔を見て、思わず吹き出しそうになってしまった。
帰ってこないなんて、一言も言ってないのに。
確かに、どんな危険があるか判らないけれど、僕はもう一人じゃないのだ。
竜が――この大陸の蒼竜が、僕の心と共に一緒だと知っている。
だから……。
「もちろん。僕が育ったのは、この大陸なんだよ?絶対に戻ってくる。ノルのお嫁さんになる国は、僕の育った国だし――縁があると思わない?」
にっこり笑って返事をすれば、彼女も安心したように笑顔になる。
それを見ていたガルドが、呆れたように溜め息を漏らした。
「そんな――永遠の別れじゃねぇのに……女って、何でそんな辛気臭くなるんだよ――ったくさあ」
なんて――本当には、ガルドも少し寂しいのだ。
だって、せっかく出来たばかりの友達と離れるのだから……と言っても、彼は自分の村に帰るだけなのだから、いつでも会えると思うんだけどね。
「ガルドは村に戻るのね――でも、それなら何時でも会えるわ……」
「……何でだ?」
「「「え?」」」
この時、僕はガルドの考えなど知りもしなかった――というよりも、聞いていなかったと言うのが正解かもしれないけれど……。だから、王女とその侍女のエイル、そして僕とでガルドの問い掛けに同じ反応をしてしまっていたのだ。
それなのに……。
「俺は、アンジーを守るって約束してるし、この後、旅が続くんだったら一緒に行くつもりだぞ?それに――今度こそ、竜に会わせて貰わなくちゃいけねぇしな!」
と、キッパリ言い切ったガルドに、僕は開いた口が塞がらなかった。
でもって、王女達は――何だか妙に納得してしまって――。
大神殿へ戻った僕とガルドは、その道程でずっと言い合いをしていたと思う。
行く――駄目――何で?――何でも!――ヤダ!――駄目!――行くんだっ!
こんな感じ。
ガルドの決心は固くて、なかなか判ってはくれなくて――仕方なく、村に戻ってからセイにでも説得してもらおうと考えた僕。
だって、こいつの頑固さは折り紙つきなのだ。
僕では、ガルドを説得なんか出来そうにない。
ということで、仕方なく今は『勝手に言ってろ』と投げ捨ててしまったのである。
その数日後、村へ帰る事になった僕らは、王城から見送りに来てくれたアロウと王女から、山ほどの食料品やら手土産を持たされて閉口してしまうことになる。
もちろん、手に持てる程度のものだけで許してもらい、全ての受け取りは拒否しておいた。
だいたい、友達にそんな金品を渡すような人など見たこともない――。
王族ということで、いい気になっては駄目だ!と念押しをして、僕らはその場を去ることになった。
が、しかし……一人だけ余分な者が居たのだけれど……。
「何でお前まで一緒に――」
「この国を離れる前に、妖魔のセイには礼と詫びを入れたいと、王に頼んだのだ――許可してもらったんだから、一緒に行く。当然だろう」
ぶっきらぼうに言うファースは、どうやら今回の事でお世話になったセイに話をしたいということらしい。
「ったくよぉ……何で……」
と、何時までもブツブツ言っているガルドだけれど、本当にはあんまり気にしてないのだと思う。
だって、その顔には『嫌だ』なんて書いてないのだから。
「馬を用意してあるから――それで村まで行ってくれ。途中で、ここに立ち寄れば馬の交換をしてもらえる。連絡はしてあるから……気をつけて」
そう言って見送ってくれたのはブレアンだった。
ハルは最後まで、護衛として付いていくと言い張っていたのだけれど、何せ王城では人手が足りてない。そのせいで、彼は泣く泣くその任を諦めたらしい。
ザイは、王城の警備兵を鍛えるのだと、今は必死で鍛錬・訓練の真っ最中。
ヤズは、いずれ王になるアロウの傍で仕事をするつもりだということから、宰相さまの手伝いに奔走しているのだと言う。
だから、見送りにはアロウと王女、そしてブレアンのみだった。
でも、もう寂しいとかそういう気持ちもない。
「また、全てが終わったら遊びに来ます――アロウ、良い王になって下さい。ノル、幸せになっててね。お祝いが遅れるかもしれないけれど、必ず会いに行くから。ブレアン――色々とありがとう」
にっこり笑って彼らに挨拶をすれば、彼らも嬉しそうに笑顔をくれた。
そして――。
僕らは、ガルドの村へと戻るための旅にでた。




