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それからの僕達は、大神官さまとテオ神官さまを交えて、散々王城へと入り込む計画を練っていた。

僕とガルドは、竜の秘密を知るために――アロウ達は王城を取り返すために。

けれど、何度練ってもその計画は頓挫するばかり。

何しろ、どうやっても難しいものとしか考えられなかったのだ。

何よりも――宰相さまから知らされた、キリクの近くに居るという半精霊の事が邪魔をしていた。

その者が居ては、王城へ上がる前に、否、この大神殿を出た時から危険が伴いそうなのだ。

今、宰相さまが、どうにか生きていられるのも、大神官さまのかけた術のお陰。

ついでに――ガルドが掛けているという術のお陰でもあるらしい。

と言っても、ガルドにしてみたら付け焼刃なのだそうで――セイから教えられた通りに念じてはいるけれど、どれだけの効果があるのかは不明なんだそうだ。

けれど、そのお陰なのだと思えるのも本当。

二重に掛けられた術のお陰で、どうやら乗り切っているのだと、大神官さまが言うのだから間違えないと思える。

ただ――その事で、こちらに半妖が居る事も、相手に教えてしまっているようなものなのだけれど……。

 

「神官に成りすますのも駄目――使用人に成りすますのも無理――商人のふりなど以ての外――となると、もう後にはどうにもしようがない」

 

唸るように言うアロウに、ガルドが本当の意味で唸り返す。

周りでは、必死に考えているのだろう人達が、実際に頭を抱え込んでいた。

けれど、僕と王女は素知らぬ顔。

だって――僕達の意見など、端から当てにしてくれてないんだから。

女だから――とか、そういう問題ではないらしい。

あまりにも安易な意見ばかりで、彼らは相手にすらしてくれてないのだ。

だから、僕達はほんの少しだけ拗ねながら、知らん顔をしていたりする。

大体において、難しいことは判っていた筈だ。

ハルは顔がバレていないけれど、ザイとヤズは元々お城に上がっていたのだから、顔が知られている。

ブレアンにしたって、宰相とその息子達を見ていれば、血筋の者だと判ってしまうだろう。

何よりもアロウだ。

この人はどうやら、今の王にそっくりなのだという。

じゃあ、初めから無理に決まってるじゃんっていう話で……。

では、僕達は?と言えば、僕の姿もこの世界ではあり得ない姿をしてるのだから、無理。

でもってガルドに至っては――見えない人には単なる怪我人だろうけれど、見る人が見れば――その正体は簡単に判ってしまうもので……。

ここでどん詰まりなのである。

そのくせ、何かに成りすまそうとか考えているところで、土台無理があるのだ。

という事で、僕らはずっと悩んでいた。

元々、ブレアン達が王城へ入り込む時には、商人として正妃の下へ行くつもりだったらしい。

もちろん、そんな無理な話が彼らだけで出来るはずもなく――宰相の力と、正妃の父である大臣に力を借りるつもりだったらしい。

けれど、今となってはそれも難しい。

大臣も宰相も、今では王城でも肩身の狭い思いをして仕事をしているという。

しかも――王の、否――妾妃キリクの手の者に監視されているのだと聞いた。

そんな状態では、手助けなど頼めるはずもなく……他に助けてくれる人達も少なくないのだが、その誰もが監視下に置かれていて、自由に身動きが取れない。

お陰で、宰相もあれ以来、こちらへは顔出しすらしていないのが現状なのだ。

 

「勝手に悩んでいれば宜しいのよ……」

 

こっそり僕に呟く王女は、もうすっかり拗ねイジケてしまっている。

僕は苦笑しながらも、同じ思いだということを伝えつつ、けれどやはりどうにかならないものか?と悩んでいた。

そんな時だった。

 

「城には――抜け道とかないのかなあ?」

 

ボソリと呟いた僕の言葉に、皆が急に押し黙った。

え?と、周りを見渡して、はたと気付く自分の呟き。

 

「そうかっ!その手もあるのか!」

 

ガルドが叫び、大神官さまもまた大きく頷いた。

 

「今まで完全に失念していた!」

「確かに、王城なのだから抜け道がいくつもあって当然!」

「そうだよな!?王城だもんな!」

「嗚呼、何で忘れていたのでしょうか!」

 

様々な声が響いて、僕の方が吃驚する。

抜け道――何で、そんな簡単な言葉を見落としていたのだろうか…と。

だけど、それも簡単に行くはずもない…と思っていたのは僕だけのようで……。

 

「お母さまが、確か抜け道の地図を頭に入れてあると聞いた事がありますわ!」

 

と叫んだのは王女。

そして――その後は、何だか慌しく計画が進んでいってしまった。

 

 

 

正妃さまから教えてもらった抜け道を紙に書き記した地図がある訳ではない。

何しろ、それは大国ミードラグースにとって最大且つ重要な国家秘密なのだから。

だけど、それさえ手に入れたら、もしかしたら王城の中に入り込むことが出来るかも知れない。

そう思った僕らは、正妃さまからそれを聞きだすことにした。

正妃さまの具合が良い時間を見計らい、長時間にならないよう気を使って、その秘密を聞き出す事が目下の作業となったわけなのだけれど、それはとても辛いものとなった。

何しろ地図がある訳ではないのだから、彼女の言う事だけが頼りになるわけで、一応は紙に書きながら正妃に確認を取ってもらい、間違えを正してもらう――という、とても大変な作業なのだ。

かなりの時間が要され、その上、そこに入る為の作戦も考えなくてはならない。

昔は、この大神殿と王城は繋がっていたらしいのだけれど、それも今は塞がれているということが判明し、頭を悩ませる事がまた一つ増えた。

それでも――何もなかった今までよりも、希望がある今の方が断然良いとも言える。

そして、それこそが、僕達を一つにしてくれて――本当の意味で仲間になっているような気もした。

 

「お母さま――お母さまの住んでいた離宮には、その地下通路はありませんでしたの?」

「ええ――残念な事に……あそこも塞がれてしまいましたわ。大きな石をいくつも詰まれて……何しろ、あそこにはアロウを匿っていた地下室があったでしょう?」

「……そうですの……」

 

今日は、王女と僕とで正妃さまの部屋を訪れていた。

他の人たちは、ただ今地図作りで必死な状態。

ついでに――作戦会議は夜に行われるのだけれど、それまでに皆が一様に意見を出せるよう、考えたりする時間も必要とされている。

今、大神官さまは、この大神殿から通じている地下通路を調べて下さっている。

けれど、それが使われる可能性は低いかも知れない――何しろ、その通路自体がどこに存在するのかが、正妃さまにも大神官さまにも判らないのだから――。

ただ一つの希望は、地図を書き記していく上で、一本の道だけが、どこへ通じているのか判らないというものがあったらしい。

正妃さまが調べた限りでは、途中から道らしい道が無かったという。

 

「お母さまは勇気がございますのね――地下通路を歩き回っていただなんて――」

「いいえ…それは違うのよ、ノル――私は唯逃げたかっただけ…あの重苦しい王城から…逃げ出したかっただけなのよ」

 

そう言った彼女の顔には、深い悲しみと苦しみが刻まれている気がした。

王女も、その言葉を聞いて何も返す事が出来なかったらしい。

その後は、正妃さまも疲れたのだろう、ベッドに横になると、そのまま眠ってしまった。

僕は、その寝顔にすら彼女の苦悩が見えて、とても胸が痛くなった。

そのまま、王女は部屋に残って彼女の看病をすると言っていたけれど、僕は他人が居るのも気を使うだろうと部屋を辞す事にした。

正妃さまが生きてきた王城は――まるで地獄のようだったと言った事があった。

けれど、それでも尚――王の事を愛してもいたのだとも――。

そんな彼女を、この苦しみから救えるものなら救いたいと思う気持ちが、沸沸と湧き上がる。

そんなのは傲慢なのかも知れないけれど――それでも、何か手助けが出来たら良い。

そう思いながら、僕は皆が居る部屋へと戻ったのだった。

 

こんな僕達に、良い知らせが飛び込んだのは数日後のことだった。

それは――大神官さまからのもので、この大神殿から王城までの地下通路が見つかったというものだった。

どうやら、僕達に漸く道が記された――そんな希望が、舞い降りたのだ。

 

 

 


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