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連載版 アラマーのざまぁ  作者: ジュレヌク


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第三話やはり、こうなりましたか

「出しゃばりで、高慢ちきで、本当に、可愛げのない女だ」



ハコイーリは、自分より成績も良く、常に諭そうとしてくるアラマーの態度が最初から気に入らなかった。




授業を抜け出そうとすれば、


『ハコイーリ様、それはなりません」』


と教師と共に追いかけてくる。




王宮で礼儀作法を守らなければ、


「ハコイーリ様、このようにすればよろしいのですわ」


と完璧なマナーを見せつけてくる。




兄と比べられることを死ぬほど嫌っているのを知っているくせに、


「ハコイーリ様、このままでは、兄上であらせられる王太子殿下の足を引っ張ることになります」


と説教をしてくる。



祖母が、孫にものを言うような言葉遣いは、馬鹿にされているような気分にさせられた。


当のアラマーにとっては、全て当たり前のことだった。


勉強するのも、美しい所作で食事をするのも、人の足を引っ張るような行いをしないのも。


それが出来ないことが不思議でならなかった。


だから、国の顔である王子がこのままでは、自国が笑いものにされると心配しただけだった。


しかし、怒られた者は、時として、怒られた内容より怒られたという事象について腹を立てる。


怒られるには、それなりの理由があるのにだ。


そこを汲み取れない人間には、なかなか改善は難しい。


特に、ハコイーリは、怒られ慣れていなかった。


幼い頃から叱ると癇癪を起こす為、使用人達は、彼の言う通り行動した。


単に、面倒くさかったのである。


そして、両親すら、機嫌をとるような言動をとり、その場をやり過ごした。


そんな中でも、唯一兄だけが、真剣に苦言を呈した。



「ハコイーリ、ケーキを投げちゃいけないよ」


「ハコイーリ、花を踏んではいけないよ」


「ハコイーリ、本を破いちゃいけないよ」



口を開けば、禁止事項のオンパレード。


だが、どれも普通の人間なら、やらないことばかりだ。


弟を心配した彼は、後ろをついてまわり、事細かに指導を試みた。


しかし、それを嫌ったハコイーリは、王太子の姿が見えただけで走って逃げるようになっていた。


そして、婚約後は、ハコイーリに関する面倒ごとは、全てアラマーに丸投げされるようになっていった。


もし、ハコイーリが、もっと自分を客観的に見ることが出来ていれば、己の不甲斐なさを理解することも出来たであろう。


しかし、楽な方、楽しい方に逃げた彼に、そんな改善の道は無かった。


未だに自分の立ち位置に気づいていないハコイーリは、鼻を鳴らし、傍に立っていた女性を胸に抱いた。



「まったく、ナガシメーヌとは、大違いだ」


「ハコイーリ様、恥ずかしいですわ」



『恥ずかしさ』など欠片もない勝ち誇った顔で、アラマーに視線を向けてくるのは、二年前に学園にやって来たナガシメーヌ・シタッタカー。


トリイール・シタッタカー男爵が、平民に産ませた婚外子だ。


派手派手しい、眩しいほどの金髪。


寄せて上げなくても零れ落ちそうな胸。


ぽってりとした唇は扇情的で、やや下がった目尻に、甘さが漂う。


元々、母と二人で市街の片隅で生きていた。 


生活は貧しく、母は、小さな仕事を幾つも掛け持ちして、ナガシメーヌを育ててきた。


彼女は、そんな貧乏生活が、死ぬほど嫌だった。


自分は、お貴族様の血を引く。


そう母に教え込まれて育ったのに、当時、父親からの支援はなかった。


ようは、捨てられたのである。


それが、教会で行われた魔力検査で光魔法の使い手であることが分かり、慌ててトリイールが引き取りに来たのだ。


微々たる金を母親に押し付け、二度と関わらないよう誓約書まで作る念の入れよう。


その後、付け焼き刃の礼儀作法を身につけさせ、1年遅れで特待生枠として途中入学させた。


その重要性から、王家も彼女を優遇し、第二王子を学園に慣れるまでのエスコート役に任命したが、それが大きな間違いだった。


2人は、『真実の愛』に落ちたらしい。


側から見れば、婚約者にはない豊満な肉体と奔放な思考回路を持つ女に、世間知らずなボンボンが見事罠に掛かっただけの話だ。


穢れを嫌う光魔法は、いかに素養を持って生まれても、行いによって効果は目に見えて薄れていくという。


それを証明するように、ナガシメーヌの魔力も、日を追うごとに消失していった。


最近では、力を発揮できないことを知られるのを恐れ、救護院での奉仕活動も拒否し始めている。


彼女の利用価値は、もう、爪の先程も残っていなかった。


学園内の噂では、二人は既に、男女の仲らしい。


それを裏付けるように、上から下までピタリと体を寄り添わせ、今にも破廉恥なことをしでかしそうな雰囲気を醸し出している。


これは、今に始まったことではない。


ナガシメーヌの入学直後から、二人は、恥ずかしげもなく学園内で逢瀬を繰り返し、事あるごとに邪魔者であるアラマーに言い掛かりをつけていた。


アラマーが冷静に対処し、受け流していたため、大ごとにならなかっただけだ。


この状況から第二王子の行く末など、猿でも分かる。


側近候補の令息達も次々に離れ、教師からの苦言にも耳を貸さない2人は、学院で完全に浮いていた。


今回、2人が無事卒業できたのも、学院側の忖度と思惑があったからだ。


一つは、二王子という肩書きに傷をつけられないという身分制度的配慮。


そして、もう一つは、留年させて他の年代の生徒にまで悪影響をおよぼすことを阻止したかったという自己防衛的対処。


この二点が守られれば、馬鹿な若造を二人くらい世の中に出すことは、大したことではないのだ。


そのことにすら気づかず、巷で流行る安っぽい恋愛小説のように、悲劇の恋人を気取るハコイーリとナガシメーヌ。


もう、誰一人、庇い立てする者は居ない。


ナガシメーヌをあわよくば側室にと思っていたトリイール・シタッタカー男爵ですら、騒動の大きさに怯え、ガタガタと震えている。


もし、この騒動がうまく収束していたとしても、平民出の娘が、王宮行事に水を差したのだ。


男爵家諸共、高位貴族の制裁で一瞬にして消え去ることは間違いない。


しかも、第二王子と自分の娘が、今この状況下においても態度を改めず、公爵令嬢を貶めているのだ。


こうなれば、アラマーが一方的に責められるような状況にはならないだろう。


ハコイーリが、ベラベラと一人悦に入り、己の持論を喋り続ける中、大広間には、白けた空気が流れ始めた。



『やはり、こうなりましたか』



予想を裏切らないハコイーリの茶番。


それに区切りをつけるため、アラマーは、姿勢を正した。




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