第八話 刀剣士大戦 肆
五十嵐は戦闘不能。
アロマとコアレは、窮地に立たされていた。
「――あぁ、自己紹介していなかったな、新米共」
明らかに自分たちに発せられた声だった。
「――二番隊隊長、神名志賀だ」
隊長。今苦戦して倒したばかりだ。それが――もう一人。
「……アロマ、逃げるか」
「無茶でしょ……それに五十嵐さんを置いていけない」
再び、沈黙。神名が不意に、刀を構える。
「……失礼」
その時、また轟音が鳴った。
「――危ねぇ、間に合った」
その目の前には、着物に「四」の隊番号が書かれた男。
――仲間だ。
「嬢ちゃんたち、よく頑張ったね。ちと、下がっててくれるかな。あ、他のところ行っててもいいよ」
その男は、刀を構えて名乗った。
「この俺――四番隊隊長、麗都斯波が、この戦い確かに引き継いだ!!」
それでも、アロマとコアレの二人は残るつもりでいた。隊長格とは言え――一体一だとどちらが勝つのか分からない。それに、今倒した九番隊隊長の市木センがいつ目覚めるかもわからない。
――そこに新たな味方が加わるまでは。
「……麗都、加勢しよう」
彼らの背後から現れたのは、六番隊の男だ。彼もまた――仲間。
「この六番隊隊長、五月雨ネクロがな!!」
また、名乗る。礼儀の一つなのかもしれない。
「……二対一か、関係ない」
麗都はまた刀剣を構えた。
「嬢ちゃんたち!わかったろ?俺らに任せとけってことよ!」
「……さっさと倒して副隊長の霧矢と合流しないとな」
アロマたちはその頼もしい背中を見て、立ち去ることを決めた。
その頃――十番隊隊長の刀也は、作戦を練り直していた。
「……思いの外分散して襲撃してきている――こちらを確実に消耗させるつもりか」
しかも隊長格が狙われているようにも見える。
そして、一番隊の襲撃の警戒を目的に置いていた十番隊の極隊たちが暇をしている。
「……あの地点は大丈夫そうだから、新たな指示を出すべきか……」
まだ姿を見せていない隊長格の動きが気になるところだ。宿舎の広間で
そこへ連絡が入った。
「――隊長!!」
十番隊の隊員、龍吾セラフだ。
「……どうした」
「千鶴副隊長とシンゴ隊員が――百鬼隊長、庄司副隊長と接触しました!」
息を呑んだ。
「――俺も合流しよう」
判断は早かった。
「――それでいいのですか」
「無理だ。その二人では勝てない」
「ですが現在――縷紅隊員、魁朱隊員、それからフリーの極隊三人を向かわせているところです」
人数差があれば、耐えることぐらいは出来るか。
「……しかし――」
刀也が口を開いたが、セラフが遮る。
「刀也隊長――現在、小規模集団戦が起きようとしています。それも人数不利――隊長はそちらに向かわれた方が良いと思うのです」
刀也は考える。
「……その小規模戦、大まかに誰がいるかわかるか」
「新革派は六番隊の霧矢副隊長と三番隊の深空副隊長、四番隊の履屋副隊長です。対する保守派は二番隊の太鼓副隊長、七番隊の小雨副隊長、その他大勢の各隊の極隊及び隊員です」
「……極隊の人数は」
「最低でも二十か、三十くらいかと。尚新革派は先程告げた者で全員です。隊長格の人数が多いとはいえ、限界があるでしょう」
刀也は頭を抱えた。
「百鬼の方――本当に大丈夫なのか?」
「勝てなくとも逃げることは出来るでしょう」
「――ならば」
刀也は、判断を下した。
「――ねえ!こっち、慎吾が向かった方じゃない?」
「あぁそうだな――寄り道して合流すっか」
コアレとアロマが路地を駆け抜けていく。しかし――彼らもまた、気配に気づいた。
「何……この重い空気感」
「――余程の強敵と戦ってるんだろうな」
「急ご!!」
十番隊の極隊は四人。一人は五十嵐禊、既に戦闘不能。そして――将雅トラ、紫香楽悠聖、刃萌。
彼らは最初の作戦では一番隊の警戒に回されていたが――そこには誰も来なかった。
「……おかしいな」
将雅が呟く。
「これ以上ここにいても、無駄かしら?」
萌が尋ねる。将雅と紫香楽は答えられずにいた。
そんな時、要請が入ったのだ。
「――極隊の皆様方!!」
龍吾セラフ。極隊ではないが――十番隊のエリート隊員だ。実力もそれなり。以前から連絡係を任されることが多い。
「一番隊隊長及び一番隊副隊長が、日下部シンゴ、愛川千鶴の元に出没しました!!大至急援護をお願いいたします!」
「――そっちに現れるか!!」
三人は同時に駆け出した。
「――一番隊のやつら、エグい覇気だ」
「まだ離れているだろうに――存在感がすごいな、流石」
三人は口々に一番隊の気配の大きさを揶揄する。
「――うっ、重たっ」
慎吾の元へ近づく。二対七。数では圧倒的優位の戦いが、始まる。




