第七話 刀剣士大戦 参
転生者を受け入れる新革派は三、四、六、八、十番隊。それに対し、転生者を嫌う保守派は一、二、五、七、九番隊。それぞれの意志を果たすために――戦争は起きる。
今、三番隊宿舎には五番隊隊長が、単騎で攻め入っていた。
「……隊長自ら来るなんて、ユニークだな」
三番隊隊長、月夜捌は戦闘態勢に移った。
「……お前を殺しに来るとしたら、俺だけだろう?」
「それもそうか」
五番隊隊長、子座蛇暢。彼は月夜と――同じ師の元で育った幼馴染だった。
別の地点では、六番隊副隊長霧矢ランが、二番隊副隊長と対面していた。
「――霧矢様か」
「……悪いけど――通してもらうよ!」
霧矢と二番隊副隊長の太鼓轍は同時に刀剣の力を解放した。
そして。十番隊極隊、五十嵐禊は、九番隊隊長、市木センと対峙していた。
「……去年と何も変わってないな。きちんと鍛錬を積んだのか?――五十嵐」
「…………」
五十嵐と市木は、去年も刀剣士大戦で戦った。だが――五十嵐は市木に瞬殺されてしまった。
今年は違うと、言いたかった。自分は強くなったと証明したかった。
それでも、このままだと何も変わらない。証明など以ての外だ。
力を僅かに消耗するが――刀剣を解放するしかあるまい。だが――自分が刀剣を解放すれば、市木も刀剣を解放するだろう。去年は彼の刀剣を見る前に倒されてしまったので、その能力や危険性がわからない。
「……」
誰か仲間が来てくれたら。数的優位に立てれば――勝てるかもしれない。
今この瞬間も一人で勝つビジョンを描けない自分に嫌気が指す。
それでも、彼の元に救いの手は伸びた。
「――五十嵐さん!!」
アロマとコアレ。彼らは九番隊の極隊を撃破し、加勢に来てくれたのだ。
「お前たち……!」
醜くても、泥臭くてもいい。卑怯だと言われてもいい。この大戦は総力戦だ。味方があってこその大戦だ。
「……数的有利だ。申し訳ないが――ここは勝たせてもらう」
「……三対一だろうと関係ない。勝つのは――保守派だ!!」
五十嵐が、刀剣を構える。
「――行くぞ、彌仔!!」
「……討ち果たすまでだ!!!」
対する市木も、刀剣を構える。
「――雨臥!!」
アロマ、コアレも同時に刀剣を解放する。
「冠城!!」
「夜摩嵐!!」
三人が同時に、向かっていく。市木は無表情だ。
最初に五十嵐が斬りつけ、アロマとコアレが続いて打ち込む。だが、間一髪で全て避けられる。市木の刀剣が三人を捉えていた。
「――これを喰らえ。千壜柳峠!!」
市木の刀剣から光の蔓が延びる。蔓は三人に打ち付けられ、最終段で爆裂した。
「ぐっ…………」
三対一をものともしない。何なら、慣れているのかもしれない。その剣捌きに感服する。
「……負けねえ!!」
歯茎は出さない。次は、三人同時には向かわない。
「アロマ!!」
彼女の刀剣が振り下ろされる。再び光の蔓が延び、彼女を打撃する。飛ばされたアロマを――コアレが受け止めた。そしてアロマを攻撃した直後の隙を、五十嵐は的確に突く。
市木は僅かに後退した。
「……見ているな」
「当たり前だろ」
三人がかりだろうと、一人では出来ないことをやらなければ勝てない。相手は隊長。こちらが一人で出来ることは相手も大抵出来てしまう。
連携だ、と五十嵐は思った。
「……連携、だけで勝てると思うか」
五十嵐は怖気付いた。まるで心を読んだかのような、市木の発言。
一撃だけでは及ばない。ならば二度目、三度目も。確実に蓄積させる。
「――市木隊長」
「お前の――お前らの全てを、ぶつけてみろ」
五十嵐は息をついた。戦場が一瞬、静寂に包まれる。
次の瞬間、五十嵐の姿が消える。一瞬にして市木の目の前へ。だが――市木は反応した。
また、刀剣同士がぶつかり、衝撃が逃げる。
「……クソッ」
これじゃ埒が明かない。
アロマとコアレの方を向く。二人とも体力は限界に近いはずだ。あまり無理はさせられない。
「――五十嵐サン……!」
コアレが声を出した。
「自分、まだやれるッス!考えがあります――任せてくださいっっ!!」
五十嵐は、コアレの真っ直ぐな瞳を正面から見た。
「――わかった」
視線で会話をする。市木が五十嵐に向かってきたが――コアレが間に割って入り、刀剣で攻撃を受けた。
今度はコアレが僅かに後退する。市木は瞬時に後ろに回り、コアレの首を狙って――刀剣を振った。
しかし、振られた刀剣は当たらなかった。気がつくと市木は地面に仰向けになっていたのだ。
「……やるじゃないか」
五十嵐がコアレを囮に、隙をついて市木の身体を押し倒した。しかも刀剣ではなく、純粋な力で。
そのまま瞬時に上に乗った。殺すことが目的ではない――刀剣の刃ではない、ツカの方で市木を殴った。
市木も鋭い力で五十嵐を振り切ろうとする。そこへアロマがやって来て――市木の両腕を刀剣で叩いた。
「……これは、詰みか?部下を囮にするなんて――なかなか面白い作戦だったな」
皮肉。
「負けたのはお前の油断が原因だと思うけどな」
五十嵐も返す。
「三対一――意識を向ける相手を瞬時に切り替えなくてはいけない。俺という一人だけを意識することは出来ない。だからコアレを介入させて複雑化させたことでお前の隙をさらに生み出したに過ぎない」
今更敬語は使わない。
「コアレ――それからアロマも。来てくれてありがとう。情けない話だが、君らがいなければ負けていた――」
――その瞬間、五十嵐の体が吹き飛ばされた。
コアレとアロマが後ろを向く。そこには隊番号「二」と書かれた着物を着た背の高い男が、刀剣をこちらに向けて立っていた。
「油断を誘ういい作戦だった。だが――勝った瞬間が、一番油断するものだ」
「……千鶴さん」
「……あぁ、気づいている」
五番隊の極隊を倒した慎吾と千鶴もまた、新たな刺客の気配を感じ取っていた。
「――来てるな、ヤバいのが」
彼らの元には――一番隊の二人組が現れた。そして、その地位は。
「……私が一番隊隊長、百鬼早紅夜」
「同じく一番隊の副隊長、庄司メラ」
千鶴が慎吾に耳打ちする。
「……一番隊は、刀剣士最強だ」
慎吾たちの戦いは、これで終わり――なのかもしれない。




