第四話 仲間
少し経った。正確に何時間、あるいは何日経ったのか、それはわからずじまいだ。
刀剣「洌鎌」を入手した慎吾は十番隊の隊員と共に鍛錬に励んだ。
そこでは何人か友人が出来た。特に仲良くしてくれるのは二人の男女――魁朱コアレと縷紅アロマだ。
その二人からも――これからの「目的」について聞いた。
「……八岐大蛇は確かに凶悪な軍勢。でもね――足取りは掴めない。いつも何処となく現れては隊員の命を奪う……災害に近いわね。八岐大蛇よりも先に対処しなければいけない問題があるのよ」
それが――
「……刀剣士大戦」
それについても詳しく聞いた。
「シンゴ、あなたも転生者だったわよね?人間界からの転生者を隊員として受け入れるのは決まって三、四、六、八、十番隊なの。そしてそれ以外の隊は転生者を刀剣士として迎えることに反対している」
「……だから、戦争が起きるというわけか?」
「そう。刀剣士同士でね、毎年」
何を以て「毎年」とするのかはわからないが。この世界にはこの世界なりの時間感覚があるのだろう。洌鎌も「半日」という表現を使った。
「……それ、止めれないのか」
「今のところは無理ね。毎年転生者を迎える側――「新革派」が「保守派」に負けて多くの死者を出してる。こっちは望んで戦争してるわけでもないのにね」
「……もし、俺らが勝ったら?」
「多少なりとも融通は利かせてくれるんじゃないの」
なら勝つしかないと、慎吾は思った。隊のためにも、自分の未来のためにも。
まずは対刀剣士の鍛錬を重ねた。洌鎌はパワー型なので、なるべく一撃で敵をねじ伏せたい。そのためには機動力や動きの緩急が必須だ。
「――首尾はどうだ?」
「千鶴さん」
友人のコアレと模擬戦をしていると、稽古場に千鶴が入ってきた。
「愛川副隊長!!俺はもう準備万端ッスよ!」
コアレは熱血系だ。盛り上げが上手くて話しやすい。
「……俺も、実践はまだだけど腕が鳴ってきた」
慎吾はようやく敬語を使わずに話せるようになってきた。だが今の千鶴との距離感を考えればやはり敬語が適しているような気もする。
「……あぁ、そうだ。シンゴは実践がまだだよな」
復唱する。
「――ならば、今すぐにでも行こう」
「――へ?」
「私がサポートする。化け物を一体倒してみよう」
確かに化け物に勝てないようでは、それに容易く勝てる刀剣士相手に戦えるわけがない。
「……わかりました」
「……また、敬語」
癖はなかなか抜けないもので、時折敬語に戻ってしまう。
町を抜けて、山を越え、林に入った。
そこでは巨大な狼の魔物が、別の魔物を捕食していた。
「……グロ」
「……惨いな」
早速慎吾は、刀剣を解放する。
「……洌鎌」
洌鎌の声が、響く。
「……奴をねじ伏せるのだな?」
「あぁ。頼む」
薙刀が光を放つ。刀身がさらに延びた。千鶴は何も言わずに見守る。
遠くから突く。斬り伏せる。化け物は忽ち塵と化した。
「……流石、上出来だ」
千鶴が褒める。勝ったのだと、自分に言い聞かせる。
「だが先に敵に攻撃されていたら危なかったな。最低限避けられるように、移動能力の向上スキルは必須だな」
ついに「スキル」というワードを使い出した。以前話していた「好きな能力を選んでつける」というモノのことだろう。とは言え「スキル」と言われてしまってはゲームっぽさが一気に押し寄せるのだ。
「……スキル」
思わず呟いてしまう。大好きな単語の一つだ。
「スキルの購入には通貨が必要だな。ほれ、あの化け物の毛皮を少し取ってこい。それが後に通貨と交換してもらえる資材となる」
一部が塵と化した化け物から毛皮を取ると、大きな鞄の中に入れた。
「……14000ゴールドです!」
大量の硬貨を受け取り、千鶴に連れられるがままスキル屋へと向かった。
「……移動能力補助――跳躍力や移動速度、スタミナといった機動能力を底上げするものですが――10000ゴールドで購入されますか?」
「……お願い、します」
かなりの額を取られるものだ。当然か。
千鶴と共にスキル屋を抜けて、再び宿舎へ向かった。
その日の夜。夜と言っても時計はないので、皆が寝る時間の少し前。慎吾たち十番隊は集まって作戦会議をしていた。
「……戦争開始の合図は、いつも決まって二番隊だよな」
「今年も恐らく大量の爆弾を降らせながらこちらへ来るでしょう。隊員以外は地下シェルターへの避難が最優先、隊員は水中シェルターで待機ですね」
刀也隊長と千鶴が話し始める。
「奴らも鬼じゃない。隊員を殺すことが目的ではないんだ――殺すことも厭わないというだけ。目的は我らを降伏させること」
「無理と判断したら退けばいい。後の者に任せよう」
上位の立場にいる隊員たちも話す。隊長、副隊長の次に地位の高い役職は「極隊」と言って、十番隊には全部で四人の極隊がいる。
そのうちの一人、五十嵐禊が話し始める。彼もまた若い男だ。
「僕たちはどういう配置につけばいいですか。やはり一番警戒すべき一番隊からの奇襲は見張るべきでしょうか」
「まぁそうだろうね。だが――極隊の人数も少ないし、人手を割く余裕はないのが事実だ」
その後しばらく議論が続いたが、慎吾には着いていけない話が多かった。
ようやく半分程を理解出来たのは、議論の最後に隊長がこのようにまとめた時だった。
「五十嵐、シンゴ、アロマ、コアレは九番隊に警戒。残りの極隊は三人で一番隊の警戒。その他の隊の警戒は先程言った通りだ。俺は全体を見て混ざる場所を決める」
戦争中は自由に動いていいとのことだ。味方のカバーリングが重要となる。
慎吾は不安だった。もし自分が仲間を死なせてしまったら――不快感に襲われるだろう。
それでも、味方を護ることを目標に、また稽古場へと移動した。




