第二十二話 八岐大蛇侵攻編
千鶴の捜索は続いた。依然として手がかりはない。
――八岐大蛇の根城に連れ去られたのでは、という結論が出る。その場所は「深淵ノ黄金城」。場所は突き止められているが、その危険性故に今まで刀剣士が踏み入ることはなかった。
だが――攫われたとなると話は変わってくる。
「……シンゴ、各隊に連絡だ」
刀也が言う。
「……これより、深淵ノ黄金城に潜入して千鶴奪還作戦を決行する」
「――無茶ですよ」
近くで話を聞いていた龍吾セラフが口を挟む。
「……あんな根城に入り込もうものなら、死人は一人二人じゃ済まされないですよ」
「……それでも、だ。刀剣士は皆死ぬ覚悟が出来ている」
刀也が言う。そして。慎吾も。
「――千鶴を助けたい。その為なら、命だって捧げる」
セラフはやれやれと言った感じで頷いた様子だ。
「……もちろん、気持ちはわかります。ですが他の隊が動いてくれるかはわからないですよ。千鶴さんが攫われたのは十番隊の事情。特についこの間まで保守派だった連中は」
「――先の特別稽古を通して、多少なりとも親睦は深まったはずだ。全ての隊でなくてもいい。どこか一つだけでも協力してくれれば――それでいいんだが」
「……わかりました。私が問い合せてみましょう」
ありがとう、と刀也は返す。セラフは隊舎を出て行った。
「シンゴ。隊舎の横にある塔の鐘を鳴らしてくれ。十番隊隊員を集める」
「承知しました」
しばらく経って、根城への遠征が始まった。驚くべきことに――全ての隊が、出動要請を受けてくれたのだ。
セラフの声掛けだけではない。セラフの声掛けを受けた百鬼隊長も掛け合ってくれたとのことだ。
そういうわけで、八岐大蛇と刀剣士の総力戦が始まろうとしていた。
「……八岐大蛇、というのは、八人なんですか?」
慎吾が刀也に尋ねる。
「……最上位の幹部が八人というだけだ。下級の者は数百いる」
それでも刀剣士全隊員よりは少ないはずだ。
根城は黄金城という名前ながらも、「城」ではなかった。あくまで「国」、「町」といったイメージだ。広大な「国」へと、刀剣士は攻め入った。
「おお……人数不利だからってわけじゃねぇけど、これだと面白くねぇよな」
入った途端、どこからか声がした。
「――分断」
その瞬間、一同の視界が暗くなった。
気がつくと、慎吾は砂漠のような場所に倒れていた。近くには魁朱コアレと縷紅アロマの姿。
「コアレ!!アロマ!!」
慎吾は叫ぶ。先程聞こえた「分断」という言葉――恐らくは寄ってたかって集まった刀剣士を、八岐大蛇がグループに分断したのだろう。
「……シンゴ?」
コアレとアロマが目を覚ました。
「……あれ、見て」
アロマが指を指した。その方向に、人影。
「……よくぞ気がついた!」
気を引き締める。見たことの服。恐らくは――八岐大蛇。
「……俺は八岐大蛇一般兵――紅鷹傘寿!!君らの名はなんだ!殺す相手の名は覚えておきたい」
慎吾たち三人は紅鷹を睨む。
「――日下部慎吾」
「……縷紅アロマ」
「魁朱コアレだ!」
「――お前を殺す!!」
慎吾の低い声が通った。
「……面白い」
紅鷹はニヤリと笑った。
「……ここは?」
紫香楽悠聖が声を出す。隣には相棒――将雅トラの姿。
「将雅――しっかりしろ」
「…………紫香楽?」
「恐らく分断された」
静かに状況を分析する。
そして、目の前に現れた。――確実に、味方ではない男。
「――誰だ」
紫香楽が即座に声を出す。
「ダ、ダ、ダレ?ダレ?ダレ?」
男の顔は仮面で見えない。
「……狂気だな」
「……ヴ、ヴ、ヴルルルルルァァァアアア!!」
鋭い咆哮。紫香楽と将雅はその男に刀剣を抜いた。




