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刀剣呪伝~力を宿して敵を討て~  作者: パチパチ火花
三章 刀剣の裏解放
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第二十話 修行、懐古

「……どうした?」

「……くっ……」

 

 女性刀剣士は男性刀剣士に比べて少ない。故に――特訓において重要視されない。百鬼や千鶴など、隊長格の例外を除いて。

 だからこそ。地位の高い女性刀剣士には、新入りの女性刀剣士へ特訓をつけることが義務付けられている。

 ――刃萌は、その一人だった。

「――今年はね、女性刀剣士が一人、男性刀剣士が二人加入する予定だよ」

 最初に刀也からそのように言われた時、少しだけ浮き足立った。十番隊にはただでさえ女性が少なかった。是非、仲良くしたいと思った。

「……萌。君には、その子のお世話係――所謂師匠役をお願いしたい」

「……御意、喜んで」


 そうして始まった――縷紅アロマと、刃萌の師弟関係。

「……初めまして、だね。縷紅アロマ隊員」

 最初に会った時から、憧れていた。コアレとセラフ――同期の隊員との関わりが少なかった当時だから、萌との会話はよく覚えている。

「――よろしくお願いします!刃極隊!」

「……まぁ言っておくけど、私はあんまり甘くないよ」

 しかし萌は――冷たい目を向けた。アロマは、そのように感じた。

 特訓はいつも一方的だった。走り込み、体力作り、打ち込み――全てにおいて、褒められたことはなかった。

 だが。萌の方も意地悪をするつもりは全くないというのは伝わる。

「……今の動き、ちょっとだけ無駄が多いね。戦いだと命取りになるよ」

 この「戦いだと命取りになる」は、萌の口癖でもあった。だがこの一言は、萌がアロマを大切に思っている事の証明でもあった。

 褒めては、もらえない。いつも、アロマの動きは指摘されるばかり。一方で、他の先輩隊員からは褒められる機会が多かった。

 アロマは気を引き締めていた。萌からはまだ、認められていない。一番褒めてほしい人から褒めてもらえるまで、努力を続けたい。


「――刃極隊」

 今。紫香楽と将雅が退場したフィールドに、萌とアロマは上がった。

「……縷紅、顔つきが大人になったね」

 微笑を浮かべる。

「……なぁ、萌って後輩にはあんな感じなのか?」

 近くでその問答を聞いていた紫香楽が静かに、慎吾へ尋ねる。

「え――俺はあんまり関わりがないんでわからないですけど、優しいってイメージよりかはかっこいい寄りかと」

「そぐわないな」

 怪我の治療をしている将雅も言った。

「……あいつは、明るくて優しい奴なんだがな――」


「――失礼」

 萌が突進する。速い。アロマは素早く反応して刀剣で受けた。

「ぐっ…………」

 アロマは努力家だ。いつも――萌に認められる方法を考えてきた。

 萌の知らない自分を魅せる。――機動力の特別稽古。霧矢ランと身につけた瞬発力を魅せる。一瞬にして萌の目の前へ。

 ――だが。速力は萌の得意分野だった。

「――まだ、遅い」

 気づくと萌は目の前から姿を消し――後ろに立っていた。力一杯刀剣をぶつけられる。


 まだ、終われない。

 負けてばかりじゃ終われない。


「……百鬼隊長、大丈夫なんですか?」

「……何がですか」

「いや……もしかしたら、裏解放発動前に試合が終わるかもなと」

「……そんなこと、ありませんよ。アロマさんの方から波動を感じます」


 アロマは深く息を吸って、また立ち上がった。


「――裏解放の波動を」


 白い光の柱が立つ。

 雪のようにしなやかで――美しい輝き。

「――煌めけ!!!」

 アロマが叫ぶ。萌は、目を丸くしている。

「…………」

 声も出せない。だが。

「……私も、だよな!!」

 萌の目に再び光が宿った。彼女の身体からもまた、紫色の光が立つ。

「やっぱり――また同時だ」

 慎吾は離れたところから呟いた。

「――縷紅!!行くぞ!!」

「刃極隊!!!」


 雪が辺り一帯を覆い尽くす。紫の波もそれに対抗する。だが――

「……っ!?」

 押される。白の方が僅かに密度が高い。白が紫に覆い被さる。

「……縷紅……」

 次の瞬間、弾け飛んだ。萌の身体は空中に投げ飛ばされた。


「……お二人も、見事でしたね」

 百鬼が呟く。

「……合格です」

 しかも、アロマの勝利。萌は静かに近づいてきた。

「…………的確に隙をついて大技を叩き込む動き――美しい流れだった」

 アロマは顔を赤くする。初めて恩師が、褒めてくれた瞬間だった。

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