第十七話 裏解放へのさらなる一歩
慎吾は百鬼から一枚の紙を受け取った。
「……それは合格通知書、です」
何の合格通知書なのか問い返してみる。
「……言わば第一関門の突破。裏解放専用の稽古メニューに移行することを認める通知書となっています。本日から導入されました」
慎吾は合点する。
「……明日以降はその通知書を元に、裏解放習得に向けた本格的な稽古メニューを組みます」
慎吾は頷いた。
「……百鬼隊長、質問なんですけど」
百鬼が目を丸くする。
「……どうして僕だけ特別扱いしてくださるんですかね?こちらとしてはもちろん嬉しいんですけど――申し訳ないと言うか」
百鬼は急に静かになった。
「……あれ、聞いちゃいけないやつでした?」
「いえ、以前も話しましたが、私はあなたを一目置いていますからね。ただ、もう一つ……」
少しだけ顔を赤くした。
「……あなたは、私が昔可愛がっていた転生者に似ていましたから。故人ですが――あなたのように熱心で正義感の強い子だった。あなたを見ていると彼を思い出す。不思議とこちらも力になりたいと思えてくるのです」
不思議な気持ちになった。慎吾は百鬼に向かって力強く頷きかけると、微笑んだ。
紫香楽と将雅。二人は十番隊での稽古中、刀也から合格通知書を受け取った。
「――なんです?これ」
「合格通知書といって、裏解放習得のための特別メニューへの参加を認めるものだそうだ」
「……やった!!」
「将雅の分もある。俺が見込みがあると判断した者には配るようにしているからな」
千鶴は食事の支度をしながら、その様子を羨ましそうに眺めていた。彼女は副隊長でありながら――現在稽古を受けることが出来ていない。そのことがもどかしかった。
そんな彼女の元へ、刀也は近づいてきた。
「………………千鶴」
「……えっ」
刀也が千鶴に渡したのも、合格通知書だった。
「でもこれ――私は最近稽古出来てませんけど」
「見込みがある奴に渡してるんだ。百鬼隊長にバレたら怒られるかもしれないけど、お前が裏解放を習得したらこちらも心強いからな。是非頑張ってくれ」
「隊長……!!」
千鶴は目を輝かせた。
コアレ、セラフ、アロマ、萌。十番隊の極隊及びエリートと呼ばれる隊士――「いつものメンバー」は、ほとんど合格通知書を手に入れたらしい。他の隊に至っても同じような形だ。ただ禊だけは、未だ寝込んでいる。
そうして迎えた裏解放習得特別メニュー。どうやら――ある程度隊ごとに分かれて特訓を行うらしい。
なので――慎吾、千鶴、アロマ、コアレ、セラフ、そして紫香楽、将雅、萌は、全員揃って特訓を行うことになった。
「……へぇ」
「久々だな。元気してたか?」
各隊に配属中は各隊に泊まることになるので、彼らは数日の間顔を合わせていなかった。
「……挨拶を交わしているところ悪いですが、早速特訓は始めさせていただきますよ」
「百鬼隊長、ご無沙汰しています」
「あら、慎吾さん。ということは――今日は十番隊の皆さんですか」
百鬼と仲良さげな慎吾を、十番隊の面々は驚いたような目で見つめる。千鶴だけは――ムッとした表情。
「まずはこの林を抜けて、専用のフィールドに向かいます」
九人は木々の隙間を抜けていく。何が待ち受けているのか、わからずに。
「――着きましたね」
百鬼を除いた八人が、百鬼を見つめる目に、力がこもる。
「……単に言えば模擬戦です。ここで皆さんには――順番に一対一の模擬戦をしていただきます」
案外普通の稽古だったので、落胆した。
「……ただし、皆さんが今までやってきたような生ぬるい模擬戦ではありません」
ここで再び気が引き締まる。
「……ここから、ぶっつけ本番で裏解放を実現していただきます」
「………………は?」
思わずコアレが声を漏らした。
「……まだ、やろうと思ったことすらないのに?」
「はい。出来ます。その境地には既にいるのです」
八人は驚いた。かなり人任せな訓練だ。
「……出来なかったら?」
「再度特別稽古に戻っていただきますかね。まぁ、まだあまり考えていません」
空気も引き締まる。
「……丁度偶数人いますので、二人ずつに分かれていただけますか?」
恐らく――対戦相手を決めるということだろう。
コアレはセラフと、紫香楽は将雅と組んだ。特別稽古の時と同じ組み合わせだ。アロマは萌と組んだ。アロマ曰く、萌は彼女の師匠らしい。そして――必然的に、慎吾は千鶴と組むことになった。
「……では、順に」
早速、コアレとセラフがフィールドに入る。
「…………やるか」
「……当たり前に、俺が勝って終わるぜ!セラフ!!」




