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刀剣呪伝~力を宿して敵を討て~  作者: パチパチ火花
二章 刀剣士大戦
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第十話 刀剣士大戦 陸

 各地では、戦いが収束し始めていた。

 三番隊宿舎、三番隊隊長の月夜捌(つきやさばき)子座(ねざ)蛇暢(じゃのぶ)の戦い。

 初めは互角だったその勝負も――気づけば。

「グッ……腕を上げたな、感心する」

「……去年までのように、新革派を負けさせはしない」

 月夜が優勢だった。去年まで、太刀打ちが出来なかった相手。でも今年は――今年こそは、勝ちたい。

「……ならば刀剣に、全てを込めろ」

「……言われなくともだ」

 二人は方向をあげた。

「――心月(しんげつ)!!」

「――蛇陽櫃(じゃようひつ)!!」


 小規模集団戦。刀也が合流したその戦いも、新革派が勝利を収めていた。

「……刀也隊長、慎吾隊員たちと合流しますか」

「あぁ。今すぐに目指そう」

 セラフと刀也はそのように結論づけた。今年は負けられない――


 その少し前。一番隊と十番隊の戦いもまた、激化し、収束に向かっていた。

 だが他とは違い――明らかに劣勢という形で。

「……舐めるなよ、十番隊」

 一番隊副隊長、庄司が冷たい一言を浴びせる。

「……舐めてなんか、ない」

 アロマとコアレはまだまだ新米。萌も庄司からすれば格下。勝ち目の薄い戦い。

 だが――勝ち筋を掴まなくては、何も始まらない。


 そして慎吾、千鶴、紫香楽、将雅と百鬼早紅夜の戦い。

 依然として攻撃は当たらない。そして遂に――百鬼が、能力を使った。

「……終わりにしましょう」

 その手から出現したのは――炎の波。

「……百鬼隊長の能力は、炎」

 慎吾は静かに呟いた。熱――ともあれば、先程まで攻撃を当てられなかった理由が一つだけ考えられる。こちらから見えている百鬼は、その位置にはいない。僅かに、ズレて見えている。

「……陽炎?」

 その瞬間。百鬼の手から放たれた炎が、前進を止めた。

「――何だ?」

 千鶴が訝しむ。そして。

「――見事」

 百鬼がそのように呟くと――慎吾の視界は弾けた。


「……ここは?」

「――よくぞ、たった一瞬の情報から私の能力を推測しましたね」

 白い空間。慎吾は百鬼と対面していた。千鶴や紫香楽、将雅、庄司たちの姿もない。

 ただ、その空間に二人だけ。

「……ここは?どこですかと聞いてるんです」

「――私の刀剣には二つの能力がありましてね。一つはシンプルな炎を操る能力。そしてもう一つは、試練」

 その言葉が引っかかった。

「……私の能力――陽炎による視界の情報と感覚の情報のズラし、に気がついた素晴らしき人物には、試練が与えられます」

「…………」

「その試練とは、私とのタイマンです」

 それがこの空間で行われるのかと、合点する。

「……私のもう一つの能力は、私の陽炎に気がついた人物と、一体一の仮想空間を生み出すこと」

 血の気が引いていく。千鶴と共に極隊を瞬殺したとはいえ――一体一では小瀬シンラにすら勝てなかった自分。

 刀剣士最強と一体一では、本気で命が危ない。


 その時だった。


 空が裂けて、光が広がる。庄司たちは瞬時、動きを止めた。

「チッ……こんな時にッ……!!」

 仮想空間内の百鬼と慎吾もまた、地鳴りを感じていた。

「…………?」

 百鬼が初めて無表情になった。

「……これは……?」

 慎吾は状況が飲み込めずにいた。

「……あなた」

「……日下部、慎吾です」

「慎吾くん、どうやら勝負はお預けのようです」

 百鬼は告げた。

「……どういうことですか」

「今の地鳴り――確実に外の世界で何かが起きた。仮想空間を消去して確認します」

「……はぁ」

 瞬時、視界が弾ける。気がつくと元の世界に戻っていた。傍には近くには千鶴たち、少し離れたところには庄司たちがいる。

 変わっていたのは、空の色だった。

「……シンゴ!」

 千鶴が駆け寄ってくる。

「お前……百鬼隊長と急に消えて――」

「副隊長、話は一旦後にしよう」

 慎吾が返す。空の色が眩い白に変わっていく。目も開けられないような強い光。

「……これは何ですか?」

 慎吾はようやく一同に訊いた。

「……恐らくだが、八岐大蛇の一味だろうな」

 庄司メラが答える。

「……今、か」

 本当にタイミングが悪い。

「……偶然ではないと思いますよ」

 百鬼が呟く。

「最近、刀剣士の中に八岐大蛇と繋がっている裏切り者がいるという噂も広まっています」

 慎吾たちの顔に動揺が走る。

「……大変なんですね」

 慎吾の悠長な一言。皮肉のつもりだった。

「……戦争なんてしてる場合じゃないじゃないですか!!」

 百鬼に。庄司に。そして千鶴たち、味方の十番隊にも。

「転生者だの何だので味方が争ってる場合じゃないでしょう?現にこうやって――その争いに乗じて襲撃に来る卑怯な連中も現れ出す!!この戦争に目的なんかないでしょう?誰も笑顔になんかならない!!」

 一同は何も言わなかった。ただ百鬼が、少しだけ悲しそうな顔をしているのが目に入った。

「――シンゴ!!」

 遠くから誰かが駆け寄ってくる。聞き覚えのある声。十番隊の刀也隊長だ。

「……刀也隊長」

「……気づいている。八岐大蛇だよな」

 刀也が刀剣を構えた。他の者も同じ。

 やがて、空の光が弱くなった。そしてその中心から、異形の怪物が姿を表す。明らかに巨大で、明らかに以前出会った化け物より強い。

「……刀剣十番隊、突撃だ!!」

 刀也が叫ぶ。

「……一番隊、迎撃準備」

 百鬼と庄司も呟く。するとそこへ一番隊の隊員が集まってきた。

 八岐大蛇の軍勢との戦いが今から始まる。

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