パーティー
ー夜が明けて、次の日の朝ー
「ちょっと!痛いじゃない!もうちょっと優しく出来ないの!?」
「ご、ごめんなさいぃ、あっ、ちがっ」
「いったいわねぇ、あんたホントしっかりしなさいよね!」
隣の部屋からだろうか?騒がしい2人の声を聞いて目が覚める。
目を開けると窓から差しこんだ日の光が部屋を照らしており、気持ちのいい朝だった。
昨日、ミネアさんが自己治癒力を上げる魔法を掛けてくれていたので随分と体の疲労は取れていたが、それと引き換えに凄く空腹を感じる、身体にあるエネルギーを全て自己治癒力に変換する魔法らしいので起きたら直ぐに食事を用意すると言ってくれていたが、自分で動けそうだし何よりこの空腹は耐え難いので自分で向かうことにした。
「お腹すいたな、確か食堂って、部屋を出て右の突き当たりって言ってたよね?」
ベッドから立ち上がり、そのまま部屋を出て右側を見る、が、視界に突き当りらしき場所は見えなかった。
想像以上の広さにたちつくしていると、背後から先ほどの声の主であろう人物から声がかけられる。
「あっ、起きたんですねぇ、良かったですぅ」
振り返ると、深い青色の髪にウェーブの掛かった髪を肩のところで切り揃えており、清潔な白衣を着ている、小さな女の子がそこには立っていた。
「おはようございます、えっとぉ、ミネアさんが言っていた医療部隊の方ですか?」
ヒロの問いに対して何故かオドオドしながらも小さく口を開き、小さな声で答えてくれる。
「まだ、医療部隊には入っていないです、その、私カイリーはまだその練習生でして、ごめんなさぃ」
「そうなんですね、カイリーさん?よろしくお願いします」
そんな挨拶をしていると、カイリーの後ろからチラチラ見えていた人がカイリーの横から顔を出す。
「ちょっとカイリーどきなさいよね、後輩に挨拶ができないじゃない」
カイリーの後ろから、長い金髪を頭の低めの位置で左右で2つに括ってまとめている、つり目の気の強そうな女の子が顔を覗かせていた。
待って、それよりも後輩?どうゆうこと?
「あの、後輩って?」
ヒロの質問が聞こえているのかそうでないのか分からないが、彼女はそのまま話を続ける。
「ふぅ〜ん、貴方がジールさんに拾われたって言う、なぁんか弱そうね」
「あ、アンジェちゃん、あんまり後輩を虐めたらダメだよぉ、またアンリさんに怒られるよぉ」
「あ、アンリさんはカンケーないでしょ?それに本当のことでしょ!」
「うぅ」
アンジェさんとやらに馬鹿にされたのでカイリーさんには、口喧嘩に頑張って欲しいのだが直ぐに黙り込んでしまった。
それよりも後輩ってどう言うことなんだろう、誰か説明して欲しい。
勝ち誇ったアンジェと下を向いて黙り込んでしまったカイリーさんを前にして、置いて行かれたので黙っていると、カイリーさんは何かを思い出したかの様に、腰にあるポーチをゴソゴソと触り始めた。
「そ、そういえば、ミネアさんが、そろそろヒロくんが起きる頃だから、その、食べ物を持っていくように、と」
腰についていた小さなポーチから、どう入っていたのかは理解出来ないが、3倍ほどの大きさのお弁当が取り出された。
物珍しそうにその鞄を見ていると、カイリーさんは視線に気づいたのか少し恥ずかしそうに聞いてきた。
「あの、そんなに見ないでください、その、これが気になりますか?」
「どうやって入っていたんだろうと気になって」
ヒロが聞くと、カイリーが話し出す前に割って入る様にアンジェが自分のことの様に自慢げに話し始める。
「すごいでしょ!?これは、あの有名な【魔道具製作部】の【ミラル】さんの作られた中でも最高傑作の【マジックバック】よ!」
言葉に抑揚をつけながら嬉しそうに話すアンジェに、少し気押されながらも話を聞いていが、アンジェはますます加速していく。
「このバックはね!なんと見た目のカバンの10〜20倍くらいは中にものが入るのよ!それにこの指輪に魔力を流すことで、何もない空間から物を出し入れできるのよ、もちろん中身は繋がっているからどっちに入れても、どっちからも取り出せるわよ!それにねっ!……」
そこからアンジェの魔道具の説明は長々と続き、アンジェが満足するまでお腹の虫は泣き続けていた。
今後、アンジェの前では魔道具の話をするのはやめておこう、そう心に誓った。
アンジェに解放されお弁当を受け取り、2人が帰った後、部屋の机の上にもってきてもらったお弁当を広げ食べ進めようとしていると部屋のドアが開く。
そこには、黒い外套を纏い少し着崩してはいるものの綺麗な服を着ており、腰に少し年季の入った剣を携えた男性がいた。
「おぉ、元気そうだな、えぇっとぉ〜名前なんだっけ?」
その男性は、部屋に入って来るなり僕の前に座りマジックバックから丸いパンをお取り出し食べ始めていた。
この状況に、唖然としていると男性は顔の前で、手を揺らしながら不思議そうな顔で聞いて来る。
「お〜い、聞こえてるか?」
「やっ、聞こえてます」
「なんだ聞こえてるんじゃねぇか」
ヒロが反応するとそのまま手を引きまた、パンを食べ始め、そのまま何も言わずにヒロを見つめ続ける。
「な、何ですか?そんな見られたら困るんですけど…」
「名前、まだ教えてもらってねぇからさ」
「あっ、すみません、ヒロです」
ヒロの名前を聞いて、満足した様にニヤッとし頷く、そしてここに来た理由である、本題を話し始める。
「よし、ヒロ、俺がリーダーをしてるリベラル第2パーティーに入れ!」
リベラル第2パーティーのリーダー?って事はもしかして。
ヒロはミネアに教えてもらっていた情報を思い出しハッとなり男性を見る。
「もしかして、貴方がジールさんですか?」
「おう、言ってなかったか?」
その言葉を聞いて、ヒロは立ち上がり深く頭を下げる。
「僕の命を救ってくださりありがとうございました」
「おいおい、やめてくれよ、それよりもどうするんだ?入るか?」
頭を下げるヒロを見て、どこか慣れていないのか、ジールは話を逸らす様に言う。
ヒロは、少し黙り込み、理由を聞く事にした。
「あ、あのどうして僕なんですか?素性のわからない僕をどうしてパーティーに?」
そんなヒロに、ジールは真面目な顔で答える。
「昔、あの村の人達に世話になったんだよ、特に世話になった夫婦がいたんだが…まぁな、俺は何も返してあげられてないからな、お前の面倒を見てやりたくなった」
どこか物悲しげに笑うジールさんに、心が痛む、どうやらジールさんとオーラキには、何かしらのつながりがあった様だ。
ヒロが感傷に浸っていると、ジールはマジックバックから一枚の手紙を取り出した。
「これは、俺が世話になった人から最近届いた手紙なんだが、どうやら少し前から異変はあったみたいなんだ、でも、このむ救助要請がリベラルに届いたのは、俺がヒロを拾った日の朝だった」
その話を聞いて、ヒロは少し父の行動を思い出す。
あの最悪の日から少し前、父が色々と調べ物をしており、家を空けることが多かった気がする、そして村が襲撃を受けた前日に、手紙を1通何処かへ出していた。
「もしかして、ジールさんの世話になった人って、【ノワール】って人ですか?」
ヒロの言葉を聞いて、ジールは驚いた様に返事をする。
「あぁ、そうだ、なんだ?知り合いなのか?」
「僕の父です」
ヒロがそう返すと、そうか、と一言嬉しそうに呟いた。
疑っていたわけではないが、本当に父の知り合いなのだろう。
すると、ジールさんが笑顔で続ける。
「じゃあヒロ、ノワールさんの倅なら尚更俺のパーティーに入れ!お前を鍛えてやる」
ワクワクしている様な、そんな明るい声で僕を勧誘してくれた。
父さんや母さん、村のみんなのことを思い決意が固まる。
「はい!ぜひお願いします、僕を鍛えてください!」
ヒロの元気な返事に、ジールはニカっと笑い部屋の入り口の方に聞こえるように声を出す。
「おーい、入って良いぞ!」
少しして、部屋の扉が開くと同時に、男女1人ずつの2人部屋の前にいるのが見えた。
人が入れるほど開くと同時に、男性の方が前に出て胸を張り、自信満々な表情をして名乗りをあげた。
「よぉ新人!ワシがジールパーティーの頭脳兼前衛担当のアクトや、よろしくな!ちなみに、冒険者レベルは3やから、めっちゃ強いで!」
自信満々な表情でこちらを見て来るアクトにペコっと頭を下げると満足そうに笑っていた。
見た目で見れば僕よりも数段年上なのだろうがなんだろうどことなく幼さを感じる、そして何よりその特徴的な燃えるように赤い髪をツンツンに尖らせていた。
腰には剣と、見えにくいが背中に体の半分隠れるほどの大きな盾を背負っていた。
彼が言う通り本当に前衛なのだろう、頭脳うんぬんは取り敢えずスルーしておこう。
1人で心に決め頷いていると、女性の方がアクトを避ける様にその隣に立つ。
彼女は凛とした顔立ちとそれを引き立てる、腰の高さまである深く暗いが鮮やかな桃色の髪を頭の後ろ低い位置で纏めており、おでこからその桃色の髪を掻き分けるように少し太い一寸の濁りもない黒いツノ?の様なものが生えていた、僕と目が合うなり簡潔に自己紹介をする。
「私はレイツェル、よろしくね、みんなからはレイって呼ばれてるけど好きに呼んでくれて構わないから」
低くそれでも透き通る様な声で自己紹介をしてくれたのだが、ツノが気になる、でも聞いても良いものなのだろうか?そう考えていると、ジールは自分のことを指差しながら口を開く。
「じゃあ、最後に俺だな、知ってると思うが俺はジールだ、一応、第二パーティーのリーダーだ、よろしくな」
自己紹介するジールを見て、なぜだかか分からないが他の2人が少し驚いた表情をしている風に見えたが気のせいだろうか…うん、気のせいだろう。
そんな自分を納得させていると、3人がこちらを見ていることに気づいた、どうやら僕にも自己紹介を求めているらしい。
「僕はヒロと言います、出身はボノーキという辺境の小さな村です、少し前に魔物に襲われて今はもう無いらしいですが…でも、もう2度とこんな思いをしたく無いし、誰にもさせたく無い!そんなみんなの安全を作れる様な、みんなを救える様なそんな冒険者になりたいです!よろしくお願いします!」
詰まり詰まりながらも、声を大きく張り最後に頭を下げた。
それを見て聞いた3人が各々どう思ったのか分からないが、最後まで真剣に聞いてくれたことだけは間違いない。
少しの沈黙の後、ジールは手を叩く。
「まぁ、このパーティーはみんな少し訳アリだが俺が信用できるやつで固めてるから安心して頼ってくれて良いぜ、よろしくなヒロ」
顔を上げるとアクトさんとレイツェルさんが頷いていた。
2人の顔を見るとどこか安心する、この2人も何かしらの困難を乗り越えて今この場に立っているのだろう、これからはこの人達の為にも強くなりたい、またいつかこの人たちに降りかかる試練を手助けできる様なそんな人になろう。




