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リベラル  作者: アヤベ


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12/14

試練の門

ヒロが転移魔法で連れ去られてから、1週間が過ぎた頃、蝶の一族の長の屋敷にて、朝にも関わらず騒がしい声が響き渡る。


「ヒロ、どうして逃げるの?何でも言う事聞いてくれるって言ってたじゃ無い、だから私と結婚しましょうよ」


蝶の屋敷にて、屋敷のお嬢様である者が、意中の男性を追いかける為に、声を出して走り回っていた。


「いや、だからそんなことしてる場合じゃ無いんだよ、早くもっと強くなって、アクトさんやレイツェルさんに追いついかないとダメなんだ!」


あれから1週間が過ぎた、ここに来て分かったことが3つある。

1つ、この村の人たちは、蝶の一族と言うらしく、その長の娘である【タテハ】は、僕のことを気に入ってくれているらしく求婚を迫られている。

2つ、その求婚から逃れる方法が、1つ、試練?を受けたら出れるらしい。

3つ、村全体に霧の様な物がかかっており、霧の外へ走ると気が付いたら元の場所に帰ってきている為に、霧を進むのは無理なのだろうと言うこと。

レイツェルさん達に鍛えて貰ったんだ、試練も楽々突破出来るかも知れないし、早くみんなに無事を伝えないと!


そこから少し歩いて試練の門が見えてくる、試練の内容は至って簡単である。

門を超えた先に霧が薄い場所があるのだが、そこを通って森に辿り着けたなら試練は終了、晴れて脱出となる。

これなら意外と直ぐ終わるかも知れない、この時まではそう思っていた。

この後に待ち受ける困難を知りもしないで。


ー3ヶ月後ー 


「ヒロ、また行くの?もうそろそろ諦めても良いんじゃ無い?そんなに私と結婚するのが嫌なの?」


タテハは、自らの明るい黄緑の髪を靡かせながら、綺麗な髪と同じ色の綺麗な目をこちらに向け、床に座りながら立ち上がった僕を下から見上げてくる。

正直結婚が嫌なわけでは無い、タテハの様な可愛い女の子からの求婚が嫌なわけが無い、ただ直ぐにでもみんなの元に帰りたい、こんな風に別れるのは嫌だ!まだお礼の一つも言えてないし何も返せてないのだ。


「タテハちゃん、ただ僕にもやらなきゃいけないことがあるんだよ、ごめん」


そう言い残し、試練の門へと足を運ぶ、すると、背後から声をかけられる。


「ヒロ、私は諦めないからね、絶対、あなたからも結婚を求められる程の女性になるからね!待っていてね」


そんな彼女の言葉に、緊張していたが少し頬が緩む。


そしてヒロは振り返り言う。


「ありがとう、じゃあ行ってくるよ」


それから、徒歩で20分近く歩いて試練の門へと到着する。

気合いを入れ直してその重厚感ある木の門を押し開け中に入る、僕が入ったことを確認してか、門が自ら閉まる。

またここに来た、試練の門を潜ってから明らかに空気が変わったのを感じる。

武器を構える静かにゆっくりと歩き始める。

門の中は村の外と比べて少し霧は薄く、少し先までなら目視で何とか確認できるレベルである。


ヒロは、周りに注意を払いながらも慣れた足取りで進んで行く。

この3ヶ月間、ほぼ毎日足を運んだのだ、道も覚え始めている、だが、霧が薄いとは言え、視界良好のわけじゃ無い、数メートル先にどんな危険な生物がいるかも分からない、それでも少年は歩みを進める。

全ては、リベラルに帰還する為に。


「キョルキョル…キョルキョル」


ヒロは、音が聞こえ身を屈める。


この音だ、周囲をより一層注意深く見る。

木、木、草、霧、木…視界にこれと言って珍しい目のが入らない、だが奴がいるのは分かる、あの何度も聞いた音が聞こえているのだ。


「キョルキョル…キョル」


剣を握っている手に汗をかいているのが分かる、それでも手放さない、そんなことを気にしている暇では無い、より一層強く握る。

すると、背後からガサッと大きな音が聞こえる。


「キョルッ!」


音に反応し振り返った、剣を出していたのでガードした、だがそれでも攻撃は防ぎきれずに魔物の突進で尻餅を付く。


「イダッ!」


反射で声が出る、直ぐに起きあがろうと手で地面を叩き立ち上がる、だが目の前には次の攻撃が迫っていた。


「マズイッ!」


魔物が大きな翼を突き立て突きを行う、剣で受け流し滑り込む様に魔物の懐へ入る。


「貰っ…グッ」


懐に入り後は剣を突き立てるだけ、そう思って油断したヒロに、爪の尖った鳥の様な3本の硬い足でカウンターの蹴りをお見舞いする。

腹部を強く蹴り上げられて、衝撃で少し後ろにのけぞり痛みがくる。

羽を使って空を飛び、その羽や硬い足を使ってのアクロバティックな攻撃、そして何と言っても体毛が白いので霧に紛れるカモフラージュ性能がかなり厄介な魔物であり、名前を【ホワイトデビル】と言われている。


痛みはある、けど出血はない、大丈夫だまだ動ける、この蝙蝠も何度も戦ってきた、多少は慣れがある。

一息付き周囲を見渡す、あった、これなら行けそうだ、そう思い木の枝を拾う。


「キョルキョル」


ホワイトデビルは音波を発する、視力が弱い為に、この音波の跳ね返りにより周辺状況を確認している。

そして直ぐにヒロの位置を察知する、した途端真っ直ぐに突進する。


「今だッ!」


ヒロは持っていた木の枝をホワイトデビルに向かって真っ直ぐ上から強く投げる、が、もちろん体勢を変えて避けられる。

だが、ヒロは既に構えに入っていた、投擲時に右上から左下に体を動かし、左手で持っていた剣を両手で掴み直し、逆の動きでホワイトデビル目掛けて剣を振る。

身を翻して飛んでくる木の枝を避けたホワイトデビルはその後の斬撃に反応できずに2つに切断される。


「ヨシッ!危なかった、フゥ、次だ!」


ヒロは少し脱力した後に、剣を握り直しそのまま走り出した。


止まっていても的になるだけだ、とにかく動いて…そう思ったのも束の間、そこからの記憶はなかった。

目が覚める、またこの天井だ、また失敗したのだろう、ここまの3ヶ月で進歩はホワイトデビルが討伐できる様になっただけ。

視界が悪いから、地の利が無い、そもそも魔物を知らないし僕の相手できる魔物なのかも分からない、言い訳は湯水の様に湧き出でくる、そんな自分に嫌になる。

進歩の少なさに焦りと歯痒さが募っていく、このまま挑戦続けても、本当に強く慣れているのだろうか、もういっその事楽になろうか、そんな事まで考えた、でもやっぱり出来ないよ。


「このままじゃ、ダメなんだよなぁ」


そんな弱音が漏れてしまう、そんな弱音が漏れてしまうほどに、ヒロは打ちのめされていた。

だが仕方がないことだろう、試練の門の中では、死ぬことは無い、門に条件付きの強大な魔法がかかっており、その条件が当てはまっている場合のみ死ぬことがない。

その条件とは、試練の門に挑戦する者である事、門の出口又は、死亡して試練の門からから出た場合はこの条件外である事、試練の門未到達者である事。

この3つの条件を持って不死の魔法は発現する。

死亡したら転移の魔法と不死の魔法が発動し、この屋敷に飛ばされるのである。


上半身を起こしそのまま座った状態でぼーっとしていた、これから何回挑戦すれば良いんだろう、何時になったらみんなのもとに帰れるのだろうか、約束は約束だ、連れてこられたことに文句は言えない、言えないがじゃあこの気持ちは何処にぶつければ良いんだ…。

 

ヒロが打ちのめされていると、部屋の扉が開く、目をやるとそこにはタテハがいた。


疲れた目で彼女を見ていると、彼女は声を掛けてくる。


「ヒロ、おはよう、あなたに伝えないと行けないことがあるの」


そんな、いつもとは違い畏まったタテハにヒロは、目をパチパチさせ驚いた様子で話を聞いていた。


「ヒロはここを出たがっていたじゃない?実は、私と結婚すればここを直ぐに出られるかもしれないの」


タテハのその言葉にヒロはバッと前のめりになり聞き返す。


「ほ、ほんとに!?」


タテハは頷くが、表情を少し曇らせる。


「でも、それは両親や知人に別れの挨拶をするための時間で1ヶ月しか与えられないの、それからはこの蝶の村で一生を過ごすことになるわ、過去にはこの事を隠して無理やり結婚を迫る様なこともあったらしいの」


「そ…うか」


彼女の話を聞いて少し心が揺らぐ、みんなに会いたいけど、それが最後の別れになってしまう、それに彼女の今の表情を見て思う。

本当に僕のことを好いていてくれているのだろう、だからこそ、こんなに暗い顔をしているのかもしれないと勝手に思う、だからこそ、彼女にこれ以上の罪悪感を与えない為にもこんな所で折れている場合ではない。


ヒロは、両の手の平で自分のほっぺをパンと大きな音がなるくらい強く叩く。

タテハは少し体を震わせる、そして驚いた表情で質問する。


「びっくりしたわ、急にどうしたの?」


ヒロはタテハの目を見て言う。


「大丈夫だよ、僕は絶対に試練の門を踏破して見せるよ、何年掛かっても必ずね」


そんなヒロの顔を見て、タテハは安心からか頬が緩む。


「ふふっ、私と結婚してくれても良いのに」


その言葉を聞いて、いつもと違う空気感に耳が赤くなる。


「ありがとうタテハちゃん、まだ頑張ってみるよ」


ヒロは恥ずかしさからかそそくさと立ち上がり、いつもの訓練へと向かっていった。

ヒロを見送った部屋でタテハは1人、自分の言動を思い返して顔を赤くして座り込み手のひらで顔を覆っていた。


「うぅ、ヒロのバカ、ちょっとくらいはさぁ…」



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