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リベラル  作者: アヤベ


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ーヒロ達が運搬依頼に出る、3週間ほど前ー


ギルの酒場のカウンターにて。


「何?また魔族が出たのか!?今度はどこだ?」


外套をのフードを被った茶髪の男が酒を片手に大きな声でギルに詰め寄る。


「ん?確か、和国って行ったっけな?」


ギルは鳥と野菜にタレをかけて焼いた物を食べながら、首を傾げて聞く。


「和国って、聞かねぇ名前だな、どの辺なんだ?」


ギルは腕を組み、空を仰ぎながら思い出す。


「確かぁ、大陸の北東あたりにある国っつってたか、大陸北側で唯一、魔族の侵攻を耐えている国だとさ、トネールから定期的に物資を運搬してる船の船長に聞いたんだよ、でどうするんだぁ?ジールさんよぉ」


茶髪の男、ジールはフードを脱いで言う。


「そうだなぁ……」


ー時は戻り現在ー


放つ時は、ヒュッと軽い音が鳴り、着弾時にはドゥゥン、と音を立てる魔族の魔弾がヒロ達に連続で襲いかかる為に、逃げることしかできず反撃の機会をもらえないでいた。


「アハハハ、ほーらほらもっと早く走らないとあたっちゃうよ〜、アハハ、君たち必死すぎい」 


魔族は上から下に魔法を放ち続けながら、ヒロ達の動く様を見て1人楽しそうにはしゃいでいた。

魔弾は途切れることなく、2秒に一回両手から一発ずつ放たれており、周囲をクレーターまみれにしながらヒロ達を追いかけ、破壊の限りを尽くしていた。


どうしたらいい?何か無いか?このまま逃げ続けて魔力が切れるのを待つ?いつ魔力が切れるかもわからないし、そもそも魔力切れを起こさないかもしれない、それにそろそろ体力が限界に近い。

息が上がってきて呼吸も荒くなる、次第に思考が回らなくなってきた、マズイ、どうすれば。 


ヒロの走る速度は徐々に落ちてきている、イズミもそのことに気づいているが自分も避けることに精一杯でヒロを助けに行けないでいた。

2人とも全力で避けていた、魔族はまだ、高笑いをしながら魔法を放ち続けていた。

そして、その時はやって来た、時間の問題だったであろう、思考に身体がついてこずにヒロの足が疲労からか、地面が悪いのか、わからないが回らなくなり地面に転倒してしまった。


「あがっ!」


痛みからか、衝撃からか自然と声が出る。


「ヒロくんッ!」


転倒したヒロに気付いた瞬間、イズミは力強く地面を蹴り駆け出した、だが、それを許す魔族ではなかった。

魔族は容赦なく2人に同時に魔弾を放つ。


あ、ダメだ足が動かない、あの魔法に当たれば確実に死ぬ、僕の人生もここまでか、ごめんなさい、ジールさん、レイツェルさん、アクトさん何も返せてなくて、まだまだやり残したこといっぱいあるし、もう少し…。


「まだ、死にたくなッ!」


ヒロがそこまで言いかけた途端に魔法が爆発する。


「そんな、ヒロくんッ!」

 

爆風で砂煙が立ち上り、視界が悪くなる。

イズミはヒロのいたところを眺めながら後悔に苛まれる、自分が連れてこなければこんな事にはなっていなかったのかもしれない、そんな事を考えながら地面に力無く座り込む。


「アハハハ、弱そうな方が死んじゃったね!アハハハ、君も直ぐ仲間の方に送ってあげるからね!」


魔族はお腹を抱えて笑い、一通り笑い終わった後にイズミに掌を向ける。

魔弾を発しようとした魔族がある異変に気づく。


「ん、何これ、氷?」


魔族の様子が変わったのに気付きイズミは顔を上げて砂煙の上がっていたヒロのいた方を見る。

砂煙が徐々に晴れるにつれ、氷壁がヒロのいた場所を守るように囲み立ち塞がっているのが目に入る。


「氷の…壁?こんなのいつの間に」


イズミが驚いて声を出すと、氷壁から人影が歩いてくるのが見える。

コツン、コツンと軽い音なのだが、何処か重く、一歩一歩力強く響く。

そしてその人影が立ち止まるのが音で分かり、一瞬の静寂の後に、眩い光を放つ。


「【code0】起動…貫け」


声が響いた瞬間、凄まじい魔力の収縮と共に少し残った砂埃を吹き飛ばしながら、作り出された先端の尖った氷の塊が魔族に向けて放たれる。


「え?」


イズミや魔族ですら反応出来なかった、瞬きをしていたわけでは無い、ただ、それだけの速度で魔族の体を貫いていた。


「ぐぅああぁぁっ!痛い痛い、なんだよどうなってるんだよ、血?この僕が!?」


一瞬のことで、何が起こったのか理解が追いついていない魔族が自分の攻撃された箇所を見て動揺していた。

その魔族を嘲笑うかのように、冷たい声が空間に響く。


「あら?挨拶がてらの魔法がそんなに痛かったかしら?拍子抜けね」


そう彼女こそ、リベラル第二パーティー所属、17才、名をレイツェル、これでに3人の悪魔の討伐に成功していることから…またの名を悪魔狩り、と呼ばれている。

その名の通り、彼女の額の角から流れる魔力は彼女の身体性能、魔力効率を大幅に上げることの出来る武器である。

彼女は軽口を叩きながらも、一切魔族から目を離さなかった、そう、決して油断することなく、確実に勝つために。

魔族は怒りのままに手をレイツェルに向け叫びながら、先程とは比べ物にならないレベルの大きさの魔法を準備していた。


「鬱陶しい鬱陶しい、君もう死んでいいいよ、この世に残らないくらいぐちゃぐちゃにしてやるからなッ!」


全長5メートルはあるであろう魔力の塊をレイツェル目掛けて放つ、それも5秒も経たずに生成されたものであった。

だが、レイツェルは、至って冷静に対処する、それも教えを解くように。


「そんな、“ただの”魔力の塊じゃ不安定になってしまう、その不安定な箇所を突けば簡単に…」


レイツェルは、横幅にして10センチ程の氷の槍のような物を生成し、その塊に射出する。


「破壊出来るのよ?」


「「な!?」」


その光景を見て、イズミと魔族の声が重なる。

18年生きたイズミも、150年は生きている魔族ですら初めて見るその光景に2人とも驚きが隠せ無かった。

魔族の放った魔法を、まるで風船に針を刺して割るように、簡単に消滅させてしまった。

魔法の弱点を突き破壊する。

口で言うのは簡単だが、そんな芸当が出来るのは世界に数人レベルだろう、流動し続ける魔力の塊から、一部魔力の薄い部分を探しそこを的確に突く、レイツェルがいかに魔力の才に優れているかが見て取れる、そんな芸当である。


「お前ッ!化け物かよ!そんな芸当僕でも出来ないぞ!それにその角、もしかして同族か!?」


動揺が隠せない魔族が、レイツェルの角に気付き言う。

レイツェルはその言葉で、少し眉間に皺がよる、そして冷静を装ったまま静かに言う。


「どうでしょうね?ただ、貴方にとっては魔族よりも恐ろしいかも知れないわ」


その言葉の後に、イズミと魔族、その両者が感じる。

確実に周囲の温度が下がったと、しかもそれが1人の小さな女性が原因なんだと。

そして、レイツェルは静かに一言呟く。


「凍てつけ」


瞬間、イズミの目には故郷の光景が重なった。

イズミの故郷【和国】は、一年中雪が降る様な雪国なのだが、時折雪の勢いと風が強く、吹雪く事があった。

気温が下がり、木々を薙ぎ倒さんばかりの風が吹き荒れ、空からは通常以上の雪が降る、自然の動物たち、魔物でさえも、その活動を制限される様な雪と風。

レイツェルの魔法とその光景が重なったのだ。

その魔法が魔族を襲う、魔族は飛ばされまいと踏ん張るだけで動けずにいた。

皮膚は凍り、徐々に魔族を後ろに動かし押しのけていく。

20秒後、魔法は止まる、そこには魔族を外側から内側まで凍りついているであろう魔族の姿があった。


「す、すごい、レイツェルさんだっけ?君本当に凄いよ」


イズミは嬉しそうに近づいて行く、ただ、レイツェルの表情を見て、立ち止まる。

イズミは思い出す、そう言えばヒロを連れてきたのは自分だったことを、そのヒロの仲間なんだと。


「ここにヒロを連れてきたのは…貴方?」


イズミは、その言葉に嘘をついてしまいたい、そう思う程の圧を感じた。


「そ、そうなんだ、本当に申し訳ないと思ってる」


イズミは、頭を下げ素直に謝ることを選択した、言い訳を並べて話を逸らすよりも、誠実な謝罪これに尽きるだろうと。

それが聞いたのか、レイツェルからはたった一言。


「そう」


とだけ告げ、ヒロの倒れている、氷壁へと歩き出した。

イズミは、息を飲み安堵すると同時に、ヒロの元へ駆けつける。

2人が近づくと、ヒロが氷壁の側で眠っているのが目に入った。

レイツェルが脈を確認して安堵すると、それに気付いたイズミも続けて安堵する。

ヒロを背負い、立ち上がり帰路に着く。


「おい、まだ僕はしんじゃいないよ、何帰ろうとしてるんだよ、ガハッ、クソが肺まで凍らせやがって、絶対に後悔させてやる」


帰路に着こうとしたレイツェル達の背後から、凍りつき再起不能レベルまで追い込んだ魔族の声がして、驚いて振り返る。

だが、その時にはもう遅く、もう真後ろまで魔族は迫ってきていた。


「なっ」


ヒロを背負い、防御に数秒遅れたレイツェルの顔面を目掛けて、魔族の拳がクリーンヒットする寸前、イズミが既に抜刀していた。


「ぐぅあぁぁぁぁっ!」


腕を切断されて痛みに悶える魔族を横目に、イズミが言う。


「大丈夫?当たってないよね?」


目の前まで迫っていた拳が上空へと飛び上がりそのまま地面かな落ちる、そんな光景を目の当たりにしながらレイツェルは少し困惑して、イズミに礼を言う。


「え、えぇ、助かったわ」


そして、腕を切断された魔族はと言うと、完全に怒り心頭の様子で、顔を真っ赤にしていた。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、テメェら絶対に殺してやるからなぁ!」


魔族が叫び残った手で自分の心臓を貫く、その光景を見て、レイツェルは叫ぶ。


「走るわよ!」


その掛け声と共に2人は、全力で駆け出した。

イズミは何が起こるかわからなかった、だが、隣を走るレイツェルの言葉をすんなりと信用できた。

魔族から2人が見えなくなった時、魔族の体は周囲の魔力を吸収して膨れ上がり、体積は5倍ほどになっていた。


「い、イルミードさま、すみません」


そして次の瞬間、周囲に大量の魔力を放出しながら、爆発を起こして破裂する。

その衝撃波は、遺跡全体を覆う程に大きく、遺跡があった場所に大きなクレーターを作り出す破壊力であった。

のちにネフィリ遺跡消失は、世界的なニュースとなり、魔族に対する恐怖や反魔族を進行させるには十分過ぎるほどの一大事件となった。

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