290日目①
朝、野営地を片付けて出発準備。昨夜合流した5人組は先に出発済み。
ブランシェが地図を広げる。今日中に監獄に到着できる見込みだ。
しかし、その前に一つ問題があった。
「ここが、『主』の住処だよん」
「冬場だけ出て来る大型の魔物、でしたわね」
ブランシェが以前、案内を引き受けることを渋った理由の一つが、その主だった。
監獄の近くの大きめの湖を指す。逆冬眠と言うべきか、冬だけ活動する、強力な氷の魔法を使う魔物。
「そ。クンバーカルナとかアジ・ダカーハとか、その辺の神話級の化け物じゃないケド。でも倒すのには、ケッコー苦労する感じ。あーしとエカテリーナの二人掛かりなら、まぁ倒せると思う……でもそれも、しっかり連携した上でなら。どーする?迂回ルートもあるよん」
ブランシェが地図の上で指を引く。大回り、1日余分に、時間がかかる。
「俺は、そのまま進んで欲しい。1日でも早く、1時間でも、1秒でも早く。でも……エカテリーナの判断に、従うよ」
逸る気持ちを抑えきれず、口を開いた。しかしウーノは、決断を譲った。戦うのは自分では無い。それにエカテリーナが危険と判断したなら、それに従う。戦友としての、約束だった。
顎に手を当てて、考え込むエカテリーナ。長いまつ毛を震わせて、地図を睨む。
「……わたくし達が主とやり合っている間、ウーノはどこに?」
「近くの洞窟。ここが安全スポットなんだよねん。主狩りの時、素材の運搬員とか非戦闘員は、ここで待機。ま、それこそ主をワザとここまで引っ張ってくるでもしない限り、安全かな」
悩ましい顔をするエカテリーナ。彼女は眉間にしわを寄せて、考え込む。
「……監獄周辺の、湖の深さを教えてくださいまし。どれくらいありますかしら」
「ふ、深さかぁ……うーん、調べたことないしなぁ……まあ、浅くは無いよん。深いとこだと、間違いなく足はつかない感じ」
「もう一つ。戦争で冒険者が引き抜かれ、魔物が増えているから魔境の危険度が増している、って話でしたわよね。正直、今までの道中、拍子抜けでしたわ。本当に増えてますのかしら」
エカテリーナの質問に対して、ブランシェはハッと目を大きく見開いた。
「そうじゃん!そう言えばそうだった!ううん!増えてるどころか、逆に減ってるくらい!おしゃべりが楽しくて、気が付かなかった!」
「ちょっと!しっかりしてくださいまし!何で魔境初回のわたくしが気が付いて、ずっといるはずの貴女が気が付いてませんでしたのよ!」
「いやー、うっかりうっかり……でも、何でだろうねー?2週間前くらいかな?ほったらかしになってる魔境の調査―って、いっぱい冒険者集めて合同探索したんけど、その時はうじゃうじゃ!昨日の亀、倒した辺りのとこから、中型の魔物がメッチャ増えてたんだけど……何か今回は、あんまりだったね」
「つまりは、ここ2週間で魔物の数が減るような何かが、あったと……ウーノ、ちょっとよろしいかしら。ブランシェ、貴女は向こうに行っててくださいまし」
「えー!密会密会!けしからん!」
エカテリーナはウーノに近くに来いと、手招き。一緒に顔を近づけて来たブランシェを追い払う。彼女は騒いでいたが、エカテリーナがデコピンするとひっくり返ってでんぐり返り。尻を突き上げて目を回していた。
「……あー、何かな?」
「十分な深さのある水場。多くいるはずの魔物の個体数の減少。そして、スーラフ側の流れ水の民……わたくし、どうしても嫌な連想をしてしまいますの」
「もしかして……ここでも蒸発委員会の、ってこと?魔物の個体数減少は……魔導戦車の部品取り、じゃないかって?魔境で魔導戦車を組み上げて、チェンストホの街を……」
ウーノは二つの怪物、ジャガーノート型とアジ・ダカーハ型の超大型魔導戦車を思い浮かべた。
ポツカ共和国との緊張状態にある、ラシスカ帝国とガマニア連合。その2国の関係悪化のためと思われる、ビウクニツとシュチェンでの陰謀。それがここ、チェンストホでも企てられている、と言うのだろうか。
「その通りですわ。ただ、チェンストホでは、何かしらイベントが無いか、調べましたわね。その時は安心しましたけど……でも考えてみれば、ポツカとラシスカの戦争を煽るのに、絶好の襲撃ポイントがありますわよね?ここから、離れていないところに」
「それって……魔境監獄を襲撃する、ってこと?でもこう言っちゃなんだけど、ラシスカ政府が見捨てた捕虜だよ、ミーシャちゃん含めあの中にいるのは。仮に期限より早く捕虜が殺されたとして、ラシスカ政府と世論がポツカにそこまで大きな反感を持つとは、思えないんだけど」
ウーノ個人としては、例えミーシャが含まれていなくても。徴兵され国家のために戦った者たちを、流れ水の民であるからと見捨てるのは道義に反すると思う。
エカテリーナもそう考えているだろうし、同じ考えの人も他にいるはずだ。
しかし、全体を見れば。行き過ぎたプロパガンダの結果、流れ水の民に国内の不満が集中している現在。彼女らが不条理に殺されたとしても、政府も世論も動かない気がした。
ウーノの推論に、エカテリーナは首を振る。
「わたくし達の視線だと、そう思えますわね。でも考えてみて下さいまし。ビウクニツでのスーラフの陰謀をラシスカの手で潰し、ポツカに対して多少なりとも貸しを作った。そしてその貸しを、大使のオバ様は捕虜の待遇改善や処刑期日の延期に充てる、そう約束してくださいましたし、実際既に、そう動いているはずですわ。でもそれってまるで、ラシスカ政府が捕虜を気にかけているようじゃ、ありませんこと?」
彼女の言葉に、ウーノは手を打った。
「確かに……実体はどうあれ、ラシスカ政府が捕虜解放に向けて動いてるように、見えるかも。となると、監獄にいる捕虜を超大型魔導戦車で襲撃すれば……いや、でも待って。もう一つ疑問なんだけど……そもそもあの超大型魔導戦車って……脅威なのかな?魔法使い2人いれば、時間がかかっても対処可能ってことだよね、過去2回の経験上。監獄に囚われている捕虜は流れ水の民、みんな風と水の魔法使いだ。それ相手に……」
「ウーノ、感覚が麻痺してますわね。自慢では無く、事実として言わせてもらいますわよ?わたくし、エカテリーナ、『雷女帝』は、ラシスカ軍でもトップ5の実力者。4大国全体を見渡しても、10本指に入ると自負してますわ。そん所そこらの魔法使い、4,5人分の働きは出来ますの。それを相手に、1人では時間がかかり過ぎ、2人でもそこそこ粘るって、とんでもないことですのよ?」
「……強いとは知ってたけど、世界有数の実力者なんだね、君は」
ウーノは改めて、隣に立つ金髪の女性を見た。
豪奢な金髪の毛先には、勇ましさを感じさせる赤。輝く紫紺の瞳はバッサバサの長いまつ毛に飾られて、高い鼻と血色の良い唇が、気品と瑞々しさを強調する。
高貴な美の体現者。その外面同様に内面もまた、女騎士然として凛々しく頼もしいと知っていれば、なおさらに眩しく感じる。
エカテリーナは得意げに胸を張った。しかし、すぐに表情を引き締める。
「その戦友ですのよ、貴方は。もっと威張ってくださいまし。まあそれはともかく、あのブレス攻撃。わたくしであっても厄介ですの。魔法使いと言えど、前情報抜きに類似のブレス攻撃を喰らえば、被害甚大。監獄の襲撃には、十分な威力ですわ」
エカテリーナの総評に、ウーノは頷いた。となると問題は情報共有だ。
ちらり、そちらを見る。少し離れた場所で周囲を警戒しているブランシェ。自分たちが話し込んでいる間、安全地帯でも気を抜かないためか、真剣な表情でキョロキョロと辺りを見回している。
「なるほど……それで、ブランシェには話す?この推測」
「確証の無い事実は、それが悲観的であればなおさら、言わない方が良いですわ。魔物が減っている、という事実も、いくらでも別の要因が思い浮かびますもの。個体数が増えすぎて、飢餓や縄張り争いが激化して逆に凹んだ。あるいは、ブランシェの知らぬ間に他の冒険者が集中的に狩りをしたか……超大型魔導戦車について説明する以上、スーラフの陰謀と絡めざるを得ませんもの。確証の無い内からその話をして、不和の種を撒きたくはありませんわ」
本来エカテリーナは、確証の無い噂話でも何でも話のタネにするタイプ。
しかし戦時中、話のタネにしたトンネルをスーラフ軍に逆利用され、それが直接的な敗戦の原因になったことで、その手の話をベラベラと喋る気にならなくなっていた。
ウーノには戦友なんだから何でも話せ、とシュチェンで言われたのもあって、話しているが。
「でも、ブランシェは国を捨てたと言ってたでしょ。彼女がスーラフ政府が戦争を煽る陰謀を巡らせているかも、と言われて、機嫌を損ねるとは思えないよ。むしろ、隠していたとばれた時が不安だ」
それに対し、エカテリーナは一瞬ブランシェを見た。こちらを気にしている様子で、一瞬目が合う。しかしエカテリーナは視線を離し、ウーノを覗き込むようにして言った。
「でも、スーラフは愛国教育が盛んですの。『平等、進歩、団結』。国家三原則として、国民全員に幼い頃から叩き込まれますわ。平等主義を謳う国民皆兵の軍事国家、それがスーラフ人民国……ウーノは『政府と国民は分けて考えるべき』とおっしゃいましたわね。でも、スーラフに関しては、それは難しいですわ。しかもブランシェの言動にも、どことなく……国への未練を感じますの」
ウーノは眉をひそめた。
「そうかな?」
「ええ。昨日、『兵士』として褒められた時、嬉しそうにしてましたわ。昨夜も、『ブランシェ特尉、報告させていただくであります!』なんて、ふざけ半分で名乗ってましたわね」
「そう言えば、そうだったね。ちょっと楽し気に」
「軍役を誇りに思わなければ、そんな言い方はしませんわ。『捨てた』と言いつつも、国への未練はあるように思えますの。食人に関する偏見を訂正する時の態度も、また。彼女個人を好ましく思っても……いえ、好ましく思うからこそ。ただの推測に過ぎない段階で、スーラフを疑うようなことを言って、機嫌を損ねたくありませんわ」
しばらくの沈黙の後。ウーノは色々と考えた末に、口を開いた。
「……俺は、言うべきだと思うな。スーラフ人だから信用できない、って言ってるようなもんじゃないか。それって、昨日謝った偏見と同じじゃ……」
「今更、スーラフ人が野蛮だとか、そんな偏見はありませんわ。落ち着いた環境で、じっくり話し合えるなら、対話が最善ですわね。でも……ここは魔境。もうすぐ、主と戦う可能性がある。そんな状況で、仲間割れの種を蒔くのは得策じゃありませんわ」
「それは、そうだけど……」
理想と現実。どうやって自分の中で折り合いを付けようか悩んでいるウーノを見て。エカテリーナは彼が断れないであろう言葉を見つけた。
「ウーノ。貴方は、ミーシャを目の前にして、待てますの?主を倒せば、今日会える。でもじっくり話し合って迂回して、再会は明日か明後日。それで、満足できますの?スーラフ人が、捕虜の購入を考えている、そんな状況で」
その問いに、ウーノは押し黙った。
待てない。絶対に、待てない。
「……分かった。君の判断に、従うよ。不安要素は、減らそう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今更二人で密談なんて、水臭いなぁ、もう!
……まあ、しゃーなし。あーしはあーしの仕事、進めなきゃね。
主を倒すにしろ、迂回するにしろ。どちらの選択でも困らないように、荷物整理と、地図を確認!
えーっと、この魔導具は取り出しやすい場所に……
『Égalité, Progrès, Solidarité(平等、進歩、団結)』
……まーた、聞こえた。
昨日の夜、小便に起きてから、定期的に聞こえてくる。
風に乗って届く、祖国の言葉。もう聞くことは無いと思っていた、何度も唱和したスローガン。
知らない男の声で、ずっと繰り返されていた。
「うるさい幻聴だなぁ……」
『これは幻聴では無い、ブランシェ特尉』
「はぁっ!?」
返事!?周囲を見回しても、人影無し。どーなってんのよ、これ……
『返答が無いので呼びかけを続けていた。祖国は、貴官を見捨てていない。今こそ忠誠を示す時だ』
「……あーしを見捨てて無い?笑わせんなし。あーしがどれだけ戦っても、血と汗を捧げても、労い一つなかったじゃん。軍が国に帰る時も、『現地徴集兵は現地解散せよ!』って言ってほったらかし。そんで今更忠誠?馬鹿にしてんじゃん」
趣味の悪い幻聴。まるであーしが、捨てた祖国に、未練があるみたいな言い草。
空を見上げた。
冬の魔境の空。薄い雲が、流れていく。
そうだよ。あーしは雲、一つの国に、縛られない。
頭を振って、バカげた幻聴を振り払おうとした。でも、声は聞こえてくる。
『現地解散は、全て今日の日の布石なり。ブランシェ特尉、これより先、スーラフ軍の魔導戦車が奇襲のため待機している。挟撃し、スーラフ軍の脅威である『雷女帝』を排除せよ』
「いい加減にしてよ!なんなん、さっきから!勝手に忠誠だのなんだのさぁ!あいつらはあーしの雇い主で、仲間で、そんで……」
『彼女奴等は貴官を排除しようと陰謀を策動している。仲間などでは無い。裏切りの準備をしているのだ』
「はぁ……幻聴にしてもまじムカツク。何よ、あーしこんなに人間不信だっけ」
寝不足かな?まじで。一回気絶でもしたら治るん?
そう思って、あーしは膝をついて、地面を叩いて硬化させたコブを盛り上がらせた。よっし、いっちょヘドバンすっか!
でも、さぁいざ頭突き!ってな寸前、声が聞こえて来た。
『……戦争を煽る陰謀……』
『……スーラフ人だから信用できない……』
『……秘密にして……』
『……不安要素は、減らそう……』
ウーノっちと、エカテリーナの声……
途切れ途切れだけど、あーしの悪口か、いや、まるで、始末する算段みたいな……
「な、何これ……違う、なんなん、この幻聴!」
『幻聴では無い、ブランシェ特尉。あの二人は、主との戦いの最中、背中を刺し貴官を排除するつもりだ。しかし、主は既に我らスーラフの魔導戦車に、改造済み。貴官に矛先を向けることは無い。挟撃し、敵を排除するのだ』
「止めて!何を、言って……!」
『雷女帝排除の暁には、人民英雌勲章を受勲し、軍籍復帰を認めよう。晴れて貴官も、スーラフの英雄として迎え入れられるのだ。忠誠を示せ。平等、進歩、団結!』
それっきり、幻聴は消えた。あり得ない嘘、信じがたい妄想を、垂れ流すだけ垂れ流した。
人民英雌勲章。ずっとあーしが求めていた、スーラフ人最大の栄誉を、餌にして。
「Égalité, Progrès, Solidarité(平等、進歩、団結)……」
ガマニアで生まれたけど、半分スーラフのあーしは、まともには生きていけなくて。逃げるように、15歳で成人して直ぐ、たまたま休戦期間だったスーラフに渡った。
毛先の金色は、クンバーカルナの魔法の証。大昔に、邪悪な巨人を倒した祖先の血を引く証。
ガマニア育ちのハーフでも、あーしはただ毛先が金色って理由だけで、スーラフに受け入れられた。
色々手続きが終わってすぐ、軍に入隊。ガマニア人をいっぱい殺せば、あーしがちゃんとスーラフ人だって、証明できると思ったから。
毎日毎日、叩き込まれる。平等、進歩、団結。国家への忠誠。個人よりも集団。集団よりも国家。
教導、訓練、実戦。勉強して、練習して、戦って。
窮屈だった。
でも、安心感もあった。
偉大な集団の一部になれる。自分は、価値のある存在なのだと。
居場所が、あるのだと。
でも、やっぱりハーフの半端者には、限界があった。
『ガマニア生まれには、真の忠誠は無い』
そんな陰口が、聞こえた。
どれだけ頑張っても、どれだけ戦果を挙げても。半端者なんだから、それくらい出来ないと生存価値が無い、って。
生まれは、変えられない。ガマニアでも、スーラフでも。
それで嫌気がさして、飛び出した。
ガマニアを飛び越えて、ポツカに流れた。
冒険者って仕事を知った。国籍なんて関係ない。実力だけが、全ての世界。
快適だった。陰口やイジワルも、力を見せれば黙らせられる。ちゃんと真面目に仕事をこなせば、みんなあーしを信用して信頼してくれた。
もう一生、冒険者で良いや。
そう思っていた。
でも、戦争が始まった。ただの戦争じゃない。今度は、スーラフがガマニアをやっつけて、ポツカを越えてラシスカまで雪崩れ込む、そんな大戦争。
『スーラフ人民国は、貴官の力を必要としている』
徴兵された。
捨てたはずの祖国に、また拾われた。
断ろうと思った。逃げ出そうって、そう思った。
でも……結局あーしはまた、軍服に袖を通した。未練があったんだと思う。
そんで今度は、ラシスカ人相手に、いっぱい戦った。恨みは無いけど、沢山殺した。
そしたら、褒められた、認められた。
今度こそ、勲章がもらえるかも。もしかしたら、最高の名誉の、人民英雌勲章が!
そしたらあーしは、ちゃんとスーラフ人になれる!
『勲章なんてちょっと豪華な装飾のあるだけのマヤカシ』なんていう人がいるケド。
あーしはそんな、ただピカピカしてるだけの、金のかかった子供のおもちゃみたいなバッチが、死ぬほど欲しかった。
文字通り、命を懸けても。
でも結局、戦争が終わってから受け取ったのは、はした金の金貨数枚。
死ぬほど欲しかった勲章は、一番低位の物ですら、もらえなかった。
一緒にスーラフに帰国することは、許されなかった。
『貴官は現地徴集兵であり、スーラフへの帰属は認められない』
あーしは結局、見捨てられた。
元に戻っただけ。
最初から、あの国にどこにも居場所なんて無かった。
そうだよ。だから今更……やな幻聴。幻聴に、決まってる。
「……シェ。ブランシェ」
「ひゃいっ!?」
声をかけられて、飛び上がった。
振り返ると、エカテリーナとウーノっちが立ってた。
「大丈夫ですの?随分、ぼーっとしてましたわよ」
「あ、ああ、大丈夫大丈夫!ちょっと考え事してただけだから!」
いつの間にか、ずっとグルグル、考えちゃってたみたい。
慌てて笑顔を作る。
でも、視界の端で。
ウーノが、少しだけ目を逸らした。
バツが悪そうな、表情で。
……何で?
……もしも、主があーしを狙わなかったら。魔導戦車に、なってたら。それってつまり……いやいや!
「主を倒すルートで、案内を頼みますわ」
「……オッケー!主、ぶっ倒しにイコ!」
幻聴が聞こえたなんて言ったら、余計な心配をさせる。
だから、あーしは黙っていた。
だいじょーぶ。どうせ幻聴だから。主が魔導戦車に改造されてるなんて馬鹿な話、ある訳ないじゃん。
だから勲章とか軍籍復帰とかは、あーしの願望が作り出した妄想。
主はあーしを狙うし、二人もあーしを裏切らない。
そうだ。
そうに決まってる。




