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ゆっくりでいい



エリアルの叫び声はうちの庭園中に響き渡った。


「もう正直会った瞬間問い詰めたくて仕方なかったんだから!それなのにソフィは平然としてたから猫かぶりも大変だったのよ」


聞かれるとは思っていたけど、そんなに我慢してたとは...。

いつものように振舞っていると見せかけて内心焦っていたエリアルを思うとなんだかおかしくて笑ってしまう。


「あはは、私も突然だったのよ。婚約者って知ったのもこの前あったパーティでだったし」


「え、そうなの?それは急すぎない!?」


「実は殿下とは小さい頃よく遊んでいたの。その時結婚しようって約束をしたんだけどね、殿下はそのことを覚えていてくださったのよ」


そう言うとエリアルは口をぽかんと開けたまま固まっている。


「つまり、子供の頃の約束が今叶ったってこと...?そんなことが今どきありえるのね」


「私もびっくりしたわよ。だってその約束も10年も前のことですもの」


「はぁ〜すごいわね。でもソフィは大丈夫なの?殿下も男の人よ?」


エリアルはそう心配そうな目で見つめている。

自分のことをこんなに思ってくれている友人がいることにすごく胸が温かくなる。


「まだ正直少し怖いの。でも殿下はゆっくりでいいって仰ってくれたから。それに殿下はすごく優しいから」


「ほぇ〜あの無表情殿下がね。全然想像できないわ」


エリアルは無表情な殿下しか見たことがないから余計心配してくれているのだろう。

あの状態だったら恐怖倍増ですものね。


「まぁソフィが殿下のこと大好きなのは伝わったわ」


「えっ」


「だって今までそんな幸せそうな顔見たことないもの。ちゃんと好きなんでしょ?」


うっ、そんなに私バレバレなのかしら。


「う、うん。好き...多分ずっと」


改めて言葉にすると恥ずかしさと実感が押し寄せてくる。


「ソフィにこんな顔させる殿下がずるいわ〜。それにしても一途な恋いいじゃない。素敵ね」


「うん。でも殿下にまだ自分の気持ちは伝えてないの」


「それはまたどうして?」


「ただ怖いのよ。殿下に気持ちを伝えたとして、もし私が殿下を傷つけてしまうことが起きてしまわないか。まだきっと殿下に触れられてしまったら足がすくんでしまうわ」


あの婚約の話をした時の殿下の手はすごく温かかったの。

でもそれと同時にあの嫌な記憶まで思い出してしまう。

殿下はあの時の人じゃないって頭の中では分かっていても体は拒絶してしまう。

きっとそれで私は殿下を傷つけることになる。

それがただただ怖い。


「そっか...ソフィは偉いね。ちゃんと考えてちゃんと殿下のことを思っていて。殿下はゆっくりでいいって仰ったんでしょう?じゃあきっと大丈夫よ。ソフィのことちゃんと分かっていてくれているわ。もっと殿下の今を知って好きが強くなる。そうすれば恐怖なんて消えているはずよ」


エリアルはそう私の手をぎゅっと握りしめながら言ってくれた。

その言葉に涙が出る。今まで溜め込んでいたものが。

不安でいっぱいだった心が解きほぐされるようだ。


「エリアル、ありがとう」


「ふふっ私は何もしてないわ。それに話を聞くのは当たり前でしょ親友なんだから」


そう言ったエリアルの笑顔は美しかった。

こんな親友をもった私は幸せものだ。



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