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アニエス嬢はご苦労されてます  作者: ちゃ畜
カサンドラの夏休みとお兄様
70/227

70、スキャンダルの姫ロゼッタとアニエスの戦い


「アレクサンダー様……来ちゃいました!」


 ロナ公爵家の執事であり家令のアーネスト別荘へ到着するまで、使用人の采配はすべてアレクサンダーの肩にかかっていた。

 だが彼の着任をもってその重責を手放し、アレクサンダーは本来の役目――アニエスの側に戻った。


 ところがである。


 帝国の大祭が始まったことで、状況は一転した。


 公爵の仕事が立て込み、アーネストは再び主の側を離れられなくなった。

 ……結果として、別荘の采配は再びアレクサンダーが振るうことになる。

 

 今朝もアレクサンダーが指示をあちらこちらに、パタパタと走り回って飛ばす中、表玄関の来客用の呼び鈴が鳴った。


「ああ、いいです。僕が出ます!」


 朝の準備に忙しい使用人を制止し、アレクサンダー自ら玄関へ向かう。


 ドアを開けた先に立っていたその先には――。


 ……なんと先日アレクサンダーに熱いキッスをしたロゼッタ姫その人!

 宝石のように綺麗な波打つピンクの髪を揺らし、アレクサンダーの顔を見るなり満面の笑顔になった。


「…………!!」


「突然押しかけてしまい、ご迷惑でしたでしょうか?

……でも、私は帝国の者。いつ去ることになるかも知れません。そう思うと、躊躇してはいられなくて……不躾を承知で、会いに来てしまいました!」


「いや、あの……」


「あら、アレクサンダー。どうしたのですか?」


 すると海に散歩に行っていたらしいロナ公爵夫人ディアナが、そこにたまたま出くわす。


「まあお客様なの……アニエスの知り合いかしら? せっかく来ていただいたのだし……中に入っていただいたらどう?」


「いえ、奥様こちらは……」


「(にっこり)今は屋敷に人も多く、騒々しいやもしれませんが……。どうぞ遠慮せずにゆっくりしてらしてね?」


「はい! ありがとう存じます!」


「……………」


 こうして奥様に言われてしまえば、アレクサンダーはロゼッタを中に引き入れるしかなかった。


「おや、貴女は先日の……」


 そう言い、次に声を掛けてきたのはセオドリックだった。本当いつもこの人物は、何というタイミングなんだろうか!?


「はじめまして、ロゼッタ・プル・トリーシャ・カラスです」


「そうでしたね。ようこそ! ……そうだ、もし宜しかったら……祭りの本番は夜なので、暇つぶしにこれから皆でカードをするんです。……貴女もいらっしゃいませんか?」


「まあ! 宜しいんですか?」


 そこでアレクサンダーがこっそりとセオドリックに詰め寄った。


「……どういうおつもりです。セオドリック様」


「何がだ?」


「なんで騒動の種を呼び込むんです……!」


「ああ! ……そうか、すまない! 私は可愛い女性を見ると息をするように誘う時があるんだ。朝だったから、まだ寝ぼけていてつい無意識だった」


「………………」


 まったく! これだからセオドリックは、これだから! ……である。


「まあ、大人しそうだし……アレクサンダーが彼女に注意を払えば大丈夫だろう?」


 こうして結局ゲーム室に彼女を連れて行く羽目になってしまった。


「ごめん、一人メンバーを追加しても良いか?」


 その声に、集まっていたメンバーは顔を上げ、ぎょっと驚く。


「うふ、お邪魔いたしま〜す!」


「なんで貴女が……」


 マリオンはそれこそ目を剥き青ざめる。


「ごきげんようマリオン様! 昨日ぶりですわね?」


「……こんな早朝からお訪ねになるなんて……随分と常識知らずですのね?」


「だって……アレクサンダー様のことを思ったら、身体がどうしようもなく熱を持ってしまって……いてもたっても居られなかったんです。ほら、もう、こんなに胸が張り裂ける思いで……」


 そういい、グラビアアイドル顔負けの胸をプルルンと揺らす……。


「んなっ!!」


「……羨ましいですわ。マリオン様は張り裂けることなんて絶対に無さそう……?」


 そう言いロゼッタはチラリとマリオンの胸囲をチラッと憐憫(れんびん)とともに確認した。


「……このっ!!」


「本当に何度見てもアレクサンダー様はなんて素敵なのかしら? こんな目も覚めるような美しい殿方に、私、初めてお会いしました……。そのせいか胸の高鳴りが全然止まりません」


 そう言うとアレクサンダーの手を取り、その豊かな左胸にその手を当て、ロゼッタは自分の両手を添えてギュッとわざと上から揉むように押し込む。


「…………!!」


 マリオンが……ついに声も出せなくなっている!


「ね? どきどき、どきどき、すごく早い。……アレクサンダー様の手が気持ちよくて……余計に……」


「っ……………!」


 アレクサンダーも動けずに固まってしまった。


「……な、何だか、現場がものすごい速度で修羅場を迎えそうよ……ノートン!」


 タニアがこっそりノートンに言う。


「はい……ありがたいのは、アニエス嬢が今は席を外しておいでなことです……!」



 そう。そうなのだ! この場にアニエスはいなかった。

 なぜなら。アニエスはひとり女神役の練習のために席を外していたのである。


 それに皆が付き合うと言ってくれたのだが、あまりに恥ずかしくて、それは本人が丁重に辞退した。


 で、今現在、アニエスは中庭でひたすら習った動きのおさらいを繰り返している。

 すると……。



「……図々しい話だよな。こーんなドブスが女神の役だなんてさ?」


 そう言いアニエスに声を掛けるは、従兄のカールだった。


「……私も全くもって同感ですよ。カール」


 答えてからカールを視界に入れないよう練習を続ける。


(……というか、何故にカールはここにいるのだろう?   

他の親戚と一緒に朝食を食べて、その後は買い物でも海でも、なんでも行けばいいはずなのに……)


「おいドブス。まだ、……あの二人とつるんでいるのか?」


 カールが急にそう言いだした。

 今度は何だろうかと思いつつ、アニエスは律儀に応える。


「そりゃあ家族ですから」


「……ドブスはあの二人のうち、どっちかと……その、好き合ってたり……するのか?」


 それにアニエスは「ここは、この動きで本当に良いのだろうか? あとで聞かなければ!」……とメモを取り取りつつ、片手間に対応する。


「……それについて、貴殿に知らせなくてはならない義理が、果たしてあるのでしょうか?」


「おい、特にエースは俺らに大怪我までさせたんだぞ!? それなのにまだ……仲良くする気か?」


 アニエスはさすがに動きを止めた。


「…………」


 思わず、知らず睨んでいた。


「もともとはお前が身の程知らずなのがいけないのに……! さらに、あいつと仲良くするのか? 調子に乗りやがって、たかだか養子の分際で!?」


 アニエスは我慢がならなくなった。


「……あの……そもそも、貴方のお父様と母は半分しか血がつながっていないし……ロナの分家でも何でもないのに、その件について貴方が首を突っ込めるほどの権限があるのですか?」


 アニエスは静かに一歩踏み出す。


 それに養子が養子が……というけれど、エースはロナの養子に選ばれるだけの十分な魔力と素質を有しているわ。普段私を『魔力無し』『魔力無し』と蔑み、ことさらに魔力の重要性を訴えるくせに……エースに対しては魔力を十分に有しいるにもかかわらず、そうやって蔑んでみせることに……自分自身の矛盾を感じたりはしないの?」


 気付けばじりじりと間合いを詰め、目の前にカールの顔があった。


「貴方はただそうやって……自分の優位性を姑息に保持したいだけでしょう!?」


 まさか……アニエスが自分に言い返してくるだなんて、夢にも思っていなかったカールは口をぱくぱくと動かしてすぐには返せない。


「……な、なんだよ、生意気に!! お前の昔の恥ずかしい姿を……殿下達の前で発表してもいいんだぞ!?」


 アニエスの目は昏く、動かず、静かだった。


「そうね、例えば従兄弟みんなで私を肥溜めに突き落としておしっこをかけてきたこととか? 私の髪の毛を焼いて遊んで『トウモロコシ』と笑ったり、顔以外を生き埋めにしたり、私の口いっぱいにミミズを突っ込んで、はやし立てたこととか?」 


 抑揚が抑えられ淡々とした口調。事務的にあったことを列挙する。


「……それから自分のおねしょを(なす)り付けてきたこともありましたね? ところで、おねしょ癖は治りましたかカール?」


 アニエスが小首を(かし)げた。それにカールは赤くなる。


「とっくの昔に治ってるよ!」


 同情するような目でアニエスはカールから視線を外さずに続ける。


「別に無理に隠さなくても大丈夫ですよ。……大人の夜尿症で悩む人は、存外多いですからね?」


 そう憐れむアニエスに、カールは顔を真っ赤にしてひどく憤慨した。


「ふざけるな! 本当に治ってる!!」


 そうムキになって地団駄を踏む。


「私一人を侮るのは別に構わない。けれどエースやアレクサンダーを侮るのなら――容赦はしないわ。数年という時間は決して軽くないの。“魔力が無い”からといって、出来ないことばかりでは無いのよ!」


 アニエスは捨て台詞のように()え、威嚇したような視線をさらにカールに投げかける。


「~~素直な所だけがお前の褒められるところだったのに……!」


 それでもなお、絡んでくるカールに、アニエスは真っすぐに見返して静かに続けた。


「別に、貴方が私に対して言うことが全て間違っているとは思わない。でもあれは素直なんじゃなくて、ただ怖くて、面倒で、諦めていて……『はい』としか言えなかっただけよ」


「…………」


「どんなに女神役が場違いに似合わなくても……私は一度引き受けたことは、必ず責任を全うする様にしているの。……もうお願いだから邪魔しないでください」


 それにカールは悔しそうで……少し悲しそうだった。


「……なんだよ、せっかく……!」


 アニエスに届くか届かないかくらいの細い声。

 それにアニエスは何も言わずに後ろを向くと、やがてカールが黙って去っていく気配がした。


「……………」


 内心どきどきと胸がずっと鳴っていた。緊張してアニエスの手足が震えている。

 きっと今ならカールにアニエスは何にも負けるところは無い……にもかかわらず、忌まわしい過去の記憶が恐怖となって足が(すく)んだ。


 でも今日は言い返せた。それはエースやアレクサンダーのおかげだろう。


 自分のことだけなら立ち向かうことが(かな)わなかった。


「高潔な竜よりも……人間にとって本当に恐ろしいのは、やっぱり人間なのかな?」


 竜は対外的に致命的な傷をつけることができるし、一瞬にして街を吹き飛ばせる。

 

 ……けれど人より高次の存在で、人間のようにわざと相手の内面深く傷をつけ、腐らせ、毒を残すような下らないことをしたりはしない。


 本来自分の味方であるはずの人間が、自分を排除しようとする力の方がずっとしつこく、根深く、厄介で、心を病ませる――。



 だが、そんな人間を救うことが出来るのも、また、結局は人間だった。



「私には、絶対の味方が二人もいるもの……今はまだ……ね」


 けれど、アニエスはそれに対しても決して楽観視はしない。

 今、アニエスは十三歳。

 大人になったら有無を言わさず、きっと離れ離れにならなければならないだろう。


 というか、そうでなければならない明確な理由がアニエスの中にはあった。


「…………」


 だから今のうちに早く力を付け、強くならねば……もう二度と『あの』惨劇を招かないために……。


 この想いがアニエスを決して二人にそれ以上深く踏み込まないための、ストッパーになっていた。


 それは意識的なところもあるし、無意識にそうする部分もある。

 けれどそれとは別に、自分では制御できないものが自分の中に"住む”のを、アニエスは実はタニアよりも前に自覚していた。


 それが彼らを引っ張ろうとするのをアニエスは慌てて止め、必死に踏ん張る。

 しかし、それは年々、強さを増してアニエスをさらに押し返すようになっていた。


 その正体は恐らくロナに関するもの。


 アニエスの抱える"祝福の呪い”とも言える宿命のひとつだった。


「……はあ、少し休憩しようかな?」


 アニエスはもらっていた資料をまとめ、中庭から戸口へと入り、そのまま食堂に行こうかとも考えた。


 だが……まだ皆がカードをしている可能性を考え、少し顔を出そうとゲーム室へと向かった。


 近くまで来ると、どうやら盛り上がっているようで騒々しい音が外まで漏れている。

 アニエスはノックをして、ドアを開けた。そこには……。


「離れてください!! このド淫乱ピンク!?」


「貴女のものでは無いのにどうして指図をするのですか? アレクサンダー様が、誰とどう仲良くなろうとそれは自由では……? たとえば男女特有の関係になろうとね」


「きい~~~~!! 信じられません。貴女は淑女として最低です!?」


 アレクサンダーを挟んで各国代表の国軍ミラクル・ビューティーな歌姫達が、言い争っている姿に、「あれ? 私寝ぼけている?」と、アニエスは自分の頬をつける。

 ………痛い、どうやらこれは現実の様である。



「……これは、いったい……?」


 あまりにカオスな状況に目が点になった。


「あ、あにえす……戻ったのね……!?」


 タニアはアニエスの姿を見つけ、ギョッとしている。


「これはいったいどういう状況なのでしょう? なぜロゼッタ様がこちらに……」


 それはセオドリックが説明した。


「朝に突然、彼女が訪ねてきたんだ。……どうやら相当アレクサンダーに入れ込んでいるみたいだな?」


 えっ!? とアニエスが驚く。


「またずいぶん積極的ですね。で、これは収束に向かっているのでしょうか……?」


 その質問にタニアは困り、首を傾げる。


「いいえ、むしろヒートアップしているわ……」


 頬に手を当て、眉間にシワ寄せて……。


「まあ、国を代表するアイドルに取り合いされるなど、男冥利に尽きるのではないか?」


 セオドリックはハッキリと他人事である。

 アニエスはそれを聞くと、はあっ……とため息をつき、ずんずんと場の中心へと入っていった。



「スト―――――ップ!! それまで!!」



 制止の大声とともに、アニエスは二人をガバッと離す。


人伝(ひとづて)ゆえ、この状況をまだ掴め切れてはおりませんが……お二人とも、どうか落ち着いてくださいませ!?」


「ああ……よりにもよってアニエスがこの場に出て行ってしまったわ!」


 タニアが嘆いている中、アニエスは二人から話を聞き出す。


「だってこの方が……!!」

「……というか、貴女こそ誰ですの?」


 確かに、ロゼッタは演習を見学していた皆が見ていて知っているが、……ロゼッタ側からすれば、皆がどうゆう関係なのかはサッパリだろう。


「私はローゼナタリアの『ロナ』公爵家長子。アニエス・ロナ・チャイルズ・アルティミスティアです。彼は子爵家と養子縁組することが決定しておりますが、もとは私の専属従者でその関係は現在も続いております。――こう申せば、ご理解いただけますか。ロゼッタ様?」


 それに、ロゼッタはパアッと顔を明るくした。


「まあ! そうなのですね!! うふふ。どうかよろしく! ……私アレクサンダー様がとても気に入ってしまったんですのよ?」


「……そのご様子ですね」


「ですので、どうか……彼を譲っては下さらないかしら?」


 ………………。


「えー、と……譲るとは、どういうことでしょうか?」


「彼が欲しいということですわ!」


「……意味合いにより多少受け取り方が変わってはまいりますが……最悪のものを想定してお答えするならば、彼は一個人であり、犬猫では無いので、『はい、どうぞ』と差し上げるわけには参りません!」


「いえいえ、もちろん勿論! アレクサンダー様は犬猫なんかじゃありません!」


「…………でしたら、どういう風にその言葉を捉えるのが正解かを、私にもご教授いただけませんか?」


「だって、……男女の主従関係ならばもちろん肉体の関係がおありなのでしょう? ですから、そのような関係に私とアレクサンダー様が至る許可をいただこうかな。と思いまして」



「「「………………………」」」



「え……と……帝国は大変先進的なお国柄とか……ですが、ローゼナタリアは例え男女の主従であっても、そういったことには基本なっておりません……どうか悪しからず!」


「まあ! そうでしたの。やだ……早とちりしてしまった!」


「それにそのような関係があったにせよ、私に話を伺うのはやはり間違っております。……大切なのはアレクサンダーの気持ちでしょう? 違いますか」


 アニエスはアレクサンダーを見た。それに、ロゼッタは口に指を当てて小首を傾げる。


「うーーーーーんん? それは、合っているけど全然合っていないのでは?? 男女に関係があれば、多少なりとも縛り合うのは暗黙の了解です! ……もしかしてアニエス様は……まだ恋を知らないのですか?」


 ……ズバズバ言うなああ!! この歌姫!


「申し訳ございません。その点に関してはロゼッタ様の言う通りで……私の情緒がそこまで育ってはいないのは確かだと思います」


 それに、ロゼッタはアニエスをジロジロと見回す。


「そうなのですね? 魅力的なのに、もったいないこと……いっそ身体から始まる関係もございましてよ?」


 そう、ニコリとする。それにタニアは思わずノートンに小声で叫んだ!


「……なんとも本当にぶっ飛んだ爆弾発言ね?」


「おっそろしくて、我々からは絶対に出ない意見ですね……!?」


 二人は思わず身震いした。

 くわばらくわばら!!


「……私のことは取りあえず置いときまして、あまりにいきなりでアレクサンダーもすぐにはこの状況を飲み込めないと思うのです。……必ず時間を取らせますので、本日はいったんお引き取りいただけませんか? こちらの連絡先も無論お教えいたします」


 ロゼッタもそれには納得したようで、笑顔で了承する。


「わかりましたわ! そういうことなら……」


 やっと引いてくれた。

 ……ほっ。

 アニエスが連絡先をすぐにメモしだすと、ロゼッタは不思議そうにアニエスを観察する。


「アニエス……アニエス……」


 観察しながら口ずさむ。そして、何か思い出したように手をポンと打った。


「!! あなたは皇帝陛下の実の妹で恋人で将来の妃でいらっしゃるアニエス様ですね? それでしたら確かにアレクサンダー様とは何もないはずだわ! ……でも、先程のご様子だと陛下とはまだ『ベッドイン』されていないのですね? あら、まあ! まだプラトニック!?」


 それにアニエスは持っていたペンを、おっそろしい握力でバキンと粉砕し、ゆっくりと振り返った。


「………プラトニックでも何でもかんでも、天変地異でも……それはありえません……絶対に……ぜったいに!! ……申し訳ございませんが」


 地獄の住人のような表情できっちり答える。


「まあ、皇帝陛下もそりゃあ素敵なのに……アニエス様は面食いでは無いようですね?」


 いや、だから、あのですねえ?!?


「本当に気になる方はいらっしゃいませんの?」


「私はまだまだ修行中の身ですので……」


「あっははは……まるで、お坊さんみたいなことをおっしゃるのね?」


「………………」


「過去にも素敵だなあ、憧れるなあ……とかは?」


「いえ、とくに」


 ふうんと言いながら、ロゼッタはその碧い瞳を静かに光らせ、ニヤリとした。





「……アニエス様、実はワイルドなタイプに弱いでしょう?」


 ぴくりっ。

 僅かではあるがアニエスに反応があった。


「「「……………………」」」


「んふふふ~! やっぱりねえ?」


「いえいえ……そんなことないですヨ?」


「筋肉質で、一見口が悪く、でも……なんだかんだ面倒見のいい真面目な方……とか、とか?」


「……決めつけでお話をされましても!」


「でも、いま確かに()がございましたね?」


「あの、ものを書いているのですよ? 今、私は?!」


 だが、ロゼッタはますます楽しそうにアニエスを観察する。


「ん、ふふふ……それとねぇーーー?」





「っもう、……帰ってもらえます――――――っ!!?」





 ついに家主の堪忍袋の緒が切れたため、ロゼッタは強制的にお家に帰還となった……。

 そして、本日のアニエスの一言。


「私、基本的に帝国の方が……苦手かもしれません」


 ボソリとそう、ぼやくのであった。








 従兄のカール。

 たぶん初恋こじらせてる、そして嫌われちゃう、不器用なんです。


 例のいじめですがカールの名誉のため言わせてもらうと主犯はカールより上の兄弟で、カールは一応止めていたが言うことを聞いてくれなかったという裏設定です。


 また、カール側の親戚は厄介なのにどうして公爵連れて来ちゃう? と思うかもしれませんが大人になると嫌な付き合いもしないといけなくなるという……。


 呼びたかった親戚はディアナの父だけなのに、肝心のディアナ父は病気だからと屋敷に置いて他の親戚が出張ってきます。


 で、来てしまったものは追い返せないという……お金持ちにたかってくる親戚は本当に厄介です。

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