表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜7章4節〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

344/344

310 心の奥に響く音



 その言葉に、思わずひとつ瞬きをした。


「俺が叶えてやれることは少ない。……だからこそ、実現させられる望みは全て、手段を選ばず遂げさせてやる」

「…………私、は」


 小さな頃の光景が、感情と共に浮かんでくる。


『お父さま、お母さま。明日の、わたしの、お誕生日の……!』

『――リーシェ』

『!』


 母は真っ直ぐにリーシェを見下ろし、凛とした声音でこう告げた。


『明日はお昼から王城で、皆さまとの会食があるでしょう。直前まで礼儀作法のおさらいをして、帰ったら復習の段取りですよ』

『…………』

『学問の先生方には、時間を変えてお越しいただきます。夕食の時間がいつもより遅くなる分、夜のお勉強は――』


 幼かったリーシェは立ち尽くして、ぽつんと返事をしたのである。


『……はい、お母さま……』

(ずっと、誕生日が苦手だった)


 それでも今回の人生で、少しだけ好きになることが出来た。

 そんな心持ちになれたのも、アルノルトが祝福してくれたからだ。


「……今の私は」


 目の前のアルノルトを見上げ、リーシェは微笑む。


「たとえ両親に祝福されなくとも、幸せになることが出来ます。私自身が選んだ人生を、誇りを持って歩める」

「……………………」


 そんな思いに、ひとつの疑問もない。


「リーシェ。お前は」

「?」


 アルノルトが何か言いかけたものの、小さく息を吐いて口を噤む。

 リーシェは首を傾げつつも、心の中で考えた。


(……そう。大切なのは私の両親についてではなく、アルノルト殿下のお父君と、お母君のこと)


 アルノルトの過去に大きく根差すのは、間違いなく彼の両親だろう。


(おふたりを知らなければ、アルノルト殿下とは対峙できない。そのためにも、フロレンツィア陛下からの情報が必要だわ)


 自身のことを考えている暇なんて、リーシェには無い。


「フロレンツィア陛下がお望みになるものについて、アルノルト殿下にお心当たりはありますか?」

「無いな。接点を持ったことすらも、数えるほどだ」

「……お小さい頃も?」


 もう一度、鐘の音が響き渡る。


「昔のことは、それほど覚えていない」

(……まただわ)


 アルノルトは膨大な知識を持っており、些細なことすらも記憶している。そんな彼が『覚えていない』と口にするのは、幼かった頃の話を尋ねたときだけだ。


(お母君のことを語るとき、だけではないのね。本当に忘れていらっしゃるのか、あるいは……)


 やはり幼い頃に、何か秘密が隠れているのだろうか。

 そのことが気に掛かるものの、休憩が長くなってきた。ガーデンパーティの参加者たちが、またリーシェたちに話し掛けたがっているのを感じる。


「リーシェ」


 戻るべきだと考えたのを見透かされたのか、アルノルトに小さく名前を呼ばれた。


「この会の後に、時間はあるか」

「はい、もちろんです」


 アルノルトにそんな質問をされるのは珍しい。リーシェが首を傾げると、アルノルトは更に意外なことを言った。


「お前に見せたいものがある」

「!」


 一体それは、なんだろうか。


「ひょっとして、ローヴァイン閣下からの献上品ですか? 北からの荷馬車がとても多かったので、何が積まれているのか気になっていました」

「そうだな。それも、お前が望むなら立ち会えばいい」

「というと、本題は別のもので……?」


 ますます首を傾げたリーシェに、アルノルトが目を伏せる。


「……さあ、なんだろうな」

「……?」


 随分と、珍しい返事だった。

 アルノルトが本気で隠し事をするのであれば、リーシェには見抜けないように振る舞うはずだ。けれども今のアルノルトは、はっきりと秘密を仄めかしている。


(それでいて)


 リーシェは真っ直ぐに、アルノルトの横顔を見詰めた。


(どこか、憂いを帯びていらっしゃるような……)



***




 そうして、一時間ほどが経った頃のこと。


(――やっぱり今夜もアルノルト殿下は、私を先に帰してくださった)


 ガーデンパーティが終幕となり、アルノルトよりも先に離宮へと向かうリーシェは、ひとりぼっちであることに安堵していた。


(オリヴァーさまはお客さまの応対中。侍女の皆も、今日は早めに退がっているはずだわ)


 アルノルトは閉会の少し前に、リーシェだけ会場から抜けるように言ったのだ。それぞれの賓客に挨拶を終えたリーシェは、その言葉に甘えた形である。


(だから今、この離宮にいるのは……)


 エントランスの扉を自分で開いて、リーシェはその先の人物を見据えた。


「……あら」


 エントランスホールに飾られた百合に混じって、華やかな香水の香りがする。

 シャンデリアの灯りの下、こちらを振り返った人物は、妖艶で美しい笑みを浮かべるのだ。


「お帰りなさい。花嫁さん」


 想像していた彼女の姿に、リーシェも真っ直ぐ微笑みで返す。


「お会い出来ると思っていました。――フロレンツィア陛下」


X(Twitter)で次回更新日や、作品の短編小説、小ネタをツイートしています。

https://twitter.com/ameame_honey


よろしければ、ブックマークへの追加、ページ下部の広告の下にある★クリックなどで応援いただけましたら、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ