戦いはコトバたくみに美しくあれ
雑居ビル群に広まった、大人な番町の失言はまたたく間に、この街の大学や高校に広まっていった。
SNSがない時代でも、人の噂話はすごい速さだ。口裂け女だってクチコミで全国に広まったように。
「番町アーケードなんて行かねーわ。」
「あそこは年寄り臭いから、買いたいのないし。」
「Oliveに紹介されたんだから守らなきゃ。」
どちらかと言えば女の子パワーがすごかった。
男の子は「好きな子に気に入ってもらえるならば」と「じゃ、うちらで番町の番長に対決だ。」と明日照果チケットを掲げるのだった。
フリーペーパーを作れと言われた8人。
「タイトルは明日照果だよな。」
「でも阿波野が火をつけちゃったから、番町への宣戦布告になっちゃうよ。」
「まさに、マッチのラベル。火がつきやすい。」と笑う。
内容は昔の学生運動みたいな戦いの記事になりそうだった。権力や財力で一方的な再開発、若者の文化を壊すのは許さない!
ってなっちゃうのが嫌だった。
「明日を照らしてないよな」
小泉は「専務の策を若者に試してくれないか?」
フリーペーパー、明日照果が発行した最初で最後の1号。
特集1は「マッチラベルファッションでクリスマス!」
これはラベルの絵柄をプリントしたTシャツやジーンズ、キャップやトートバッグをそれが大好きな学生がコーディネートして撮影したものをレイアウトした。ふだんから着ている子たちも街なかスナップで登場した。
文面には出ないが「雑居ビル群の再開発を止めるために参加してくれ!」と大学生たちがふれまわったのが効果的だった。
特集2は「この街の冬、見たい風景はコレ!」
街路樹が茂るこの街は、冬はさみしいばかり。アーケードは明るいけど、学校や公園に続く街路樹を全部クリスマスツリーに変えちゃおう!
この街を空から眺めたイラストに街路樹がイルミネーションで輝いている。阿波野が描いた街路樹が光る街、クリスマスツリーに付ける電線ライトがイラストを囲う。写真の電線ライトを雄貴が専務からもらったMacとPhotoshopで合成したのだ。今と違って性能は低いから、ガサガサな感はあったが、熱意のフルカラー印刷でなかなか良い。
「この夢に明日照果チケットで投資を!見返りは、最高のデートスポットを貴方に!」
これが決め台詞だ。本を出したこともない玲央が書いた。玲央は人生で一度も彼女はいない。




