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おとなはみんな、自分が正義と思うのさ。

作家の玲央はボソッと言った。

「じきに飽きられちゃうよ。なめ猫みたいに。」

なめ猫とは子猫が不良の格好をしたファンシーグッズのことだ。とんでもないブームになり偽物も出回り、急に終わった。

「使うに使えない売上、どうすんの?」

「ベンチャーキャピタルの応援ルールがある限り使えないし。」


レトロなマッチラベルを模した明日照果チケットは、やりたい夢を掲げたアイデアに投資出来るルールで、集まったチケットは現金に交換し応援資金として還元するのだ。

でも全然、夢を掲げる人が現れない。

「発行枚数の売上だけでもあれから600万円は越えた。」

「何かに気がねしてんのかな?」松島が答えた。

「商売の夢を語るにも番町の許可がいるしな。」

デザイナーの広瀬も思い出した。

「番町に話さずに商売を始めたら小さなラーメン屋でも続かなかった。どこからともなく、あそこはマズイって噂が流れた。」


「さすがに大学生や高校生の若い子には優しいんじゃないのか?」と小泉は聞いたが

「そんな甘くないよ。番町の連中は15年後をいつも見てる。」

「若い子もすぐに大人になるってことか。」


宝井率いる番町アーケードは今年のタナボタ祭りについて会議していた。

「今年はね、宝井商事の傘下として支えて頂いている地元企業様に」

「宝井商事が一律300万円の投資を致します。」

「これは毎年恒例ですが、傘下の皆様には番町アーケードのお店が繁盛する新商品開発をより頑張って頂きたい所存です。」

「グループ傘下の京北新報で1ヶ月に渡り紹介記事も。ページたくさん割きますよ。」

ひと息ついて宝井は

「この街、平和で大した事件ないから。ページ余っちゃうから。」

と茶目っ気で言い、笑いを誘う。

こんな一面が魅力でもあるのだろう。

まさに番長である。


でも今年はひと言多かった。

「あのね、端っこの焼け落ちたアーケードあるでしょ。あそこは再開発で駐車場にしてなくしちゃうから安心してね。若い子もいずれいつも通り番町アーケードに戻ります。」


「って、こないだ言ったらしいぞ。」と広瀬は雑居ビルの事務所、明日照果で仲間に教えた。

広瀬は広告デザイナーだから、アンドーチェーンだけでなく、番町アーケードのお店や企業とも仕事をしているのだ。

「ま、明日照果の場所はどこでも大丈夫だよ。」と沼仏。

沼仏は問題が起こった時に一手に責任を負う代わりに売上の20%をもらう「何もしない社長」である。

「でもこの一角に集まる、個性的な雑貨屋やカフェや古着屋は」

「格安の家賃だから成立してんだよ。エリアごと事故物件みたいな評価だから。」

8人の仲間は、トーンダウンしてしまった。

遊びも終わりか〜と。


みんなが小泉を見る。

「こんな時のアンドーチェーンだよね。」

小泉は「勝手に期待されてもなー。」と頭をかく。

そもそも、こいつらを集めたのは私、小泉だ。歳はちょっと兄貴分なだけだが、親みたいな気分でもある。

「じゃ、専務が望んでたフリーペーパーを作らないか?」

「なんだよそれ、面白そうじゃん。」

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