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第2話 裏世界の支配者になれ!~試練開始。任務を果たせば、世界を創り変える力を手に入れる~

「……で、君はいったい何者なの?」


夏玖微は、右肩にちょこんと座っていた小さな“もち団子”のような生き物を、左手でひょいっと持ち上げた。


その小さな生き物は、うるうるとした大きな瞳をぱちぱち瞬かせ、無垢な表情で彼女を見つめる。

だが返ってきたのは、疑いと困惑が入り混じった視線だった。


一瞬、微妙な沈黙が流れる。


次の瞬間――

その空気を破ったのは、夏玖微だった。


彼女は目の前の、頬がぷにっと丸い小さな団子をじっと見つめる。


(……さっきから、つついてみたかったんだよね)


思い立ったが吉日。


ぷに。


「ご主人さま、つつかないで――!」


小さな団子は手足をばたばた振り回して必死に抵抗する。


「なにこれ、すごく可愛い……!」


横で見ていた陸念安が思わず笑い、

続いて“邪悪な手”を伸ばした。


――しばらくして。


ようやく解放された小さな団子は、教卓の上にぺたんと倒れ込む。


完全に燃え尽きたような顔だった。



「……で、結局あんたは何なの?」


夏玖微がじっと見下ろす。


小さな団子はよろよろと立ち上がり、軽く身なりを整えると、

小さな胸を張って言った。


「ご主人さま。私は裏世界の汎意識体です。名前は――」


「ストップ。」


夏玖微が手を上げて遮る。


「私のことを“ご主人さま”って呼ぶなら、命名権くらいあるよね?」


小さな団子はぽかんとした。


「裏世界の存在なんでしょ?

だったら……名前は“リリ”。」


その瞬間――


「私はリリです!」


小さな団子と夏玖微の声が、完全に同時に重なった。


空気が一秒止まる。


夏玖微は目を細めて満足げに言った。


「やっぱり私、天才かも。」


横で陸念安がそっと視線を逸らす。


「……その自信、どこから来るの?」


「いいじゃん。」


夏玖微は肩をすくめた。


「これくらい図太くなかったら、学校生活なんてとっくにメンタルやられてるよ。」




「それで、リリ。どうしてここに現れたの?」


陸念安が興味深そうに尋ねる。


「はいはい!ついに本題ですね!」


リリは嬉しそうに胸を張り、腰に手を当てた。


「ご主人さま。あなたはすでに――

裏世界の継承儀式を起動しています!」


期待に満ちた目で夏玖微を見る。


「……なんか地雷っぽい響きだね。」


即答だった。


「地雷じゃないです!お願いですから見捨てないでください!」


リリは慌てて叫ぶ。


「継承すれば絶対お得です!」


「断れる?」


「断れません。」


「じゃあ聞く意味ある?」


「……」


リリは数秒黙り込んだあと、小さくつぶやいた。


「……お願いです。」


その姿があまりにも可愛くて、

夏玖微の心は少し揺れた。


彼女はため息をつきながら言う。


「……わかったよ。」


「やったー!」


次の瞬間――


夏玖微の手の甲に刻まれた紋章から、

大量の情報が流れ込んできた。


【任務】


Sランク:この「領域」を浄化する

Aランク:この「領域」の支配権を取得する

Bランク:迷失者を現実世界へ送り返す


【報酬】


……



「……迷失者って、私のこと?」


陸念安が静かに尋ねる。


「はい。あなたは裏世界の“迷失者”です。」


リリが頷く。


夏玖微は横目で彼女を見た。


「帰りたい?」


陸念安は答えなかった。


「別に、帰りたくないならそれでもいいよ。」


夏玖微は軽い口調で言った。


「その場合は――私が付き合う。」


言った本人は、深く考えたわけじゃなかった。


けれど。


陸念安は驚いたように目を見開く。


(……味方がいる)


そんな感覚が、突然胸に落ちてきた。



彼女は夏玖微に小さく微笑むと、

すぐにリリの方へ向き直り、胸の中に溜めていた疑問を一気にぶつけた。


「リリ。ここって、いったい何なの?」


リリはすぐには答えなかった。


代わりに窓の外へ視線を向ける。


廊下の奥で、

空間がゆっくりと歪んでいた。


「あれは、幻じゃありません。」


リリが静かに言う。


陸念安の呼吸がわずかに止まる。


「……あれは、あなたと関係があります。」


「……どういう意味?」


リリは首をかしげた。


「本当に知らないんですか?」


そして、周囲を指差す。


「ここは、人の心の中にあるものが“形になる場所”です。」


少し間を置いて、


「あなたが今立っているここは——」


リリは続けた。


「あなたの『領域』です。」


「そして、あの黒い影は……」


その言葉を聞いた瞬間、

陸念安の顔がさっと青ざめた。



少し重い空気が流れた。


リリはすぐに話題を変える。


「ご主人さま、任務達成をサポートするために、管理マニュアルの体験を開くことができますよ!」


「目を閉じて、意識を心の奥に沈めてください。

それから、頭の中にある黒い装丁の本に触れてみてください。」


夏玖微はリリの言う通りにした。


次の瞬間。


黒い装丁の本が、彼女の右手の中に突然現れた。


彼女はその本を開き、

中の情報を素早く目で追っていく。



《裏世界管理マニュアル》


【能力】


マーキング(権限:一時開放)


世界渡航(権限:一時開放)


取引(権限:一時開放)


裏世界結合(0/1)(権限:ロック)


……


【所有物】


裏世界管理マニュアル


一番可愛いリリ


【管理インターフェース——人物】


#陸念安#


情報:迷失者。高校生。迷失歴十五年。

迷失原因:極度の絶望により、世界の境界が破損。


能力:影複製

所有物:B級領域



《裏世界管理マニュアル》を読み終えると、

夏玖微は軽く手を振った。


すると黒い装丁の本は、

空中で静かに消えていった。


陸念安がすでに十五年も迷失していると知り、

夏玖微は小さくため息をつく。


「……あなたの話、聞かせてほしい。」


少し間を置き、彼女は続けた。


「どうしてここに来たの?」


その言葉を聞くと、

陸念安はわずかに俯いた。


どうやら過去のことは、あまり話したくないらしい。


それを見た夏玖微は、

少しだけ声の調子を柔らげた。


「じゃあさ……」


「代わりに、私が一つ話をする。

聞いてくれる?」


陸念安は静かに頷いた。


夏玖微はゆっくりと語り始める。


「昔、ある女の子がいた。」


「その子は小さい頃から家族がいなくて、

本当に幼い頃に、山で一人の老人に拾われた。」


「そのとき女の子は、ずっと一人ぼっちだった。

見知らぬおじいさんに抱き上げられても、泣かなかった。」


「むしろ——笑ったんだ。」


「やがて成長するにつれて、

女の子は気づき始める。」


「おじいさんは、他の人とは少し違うって。」


「いろんな奇妙な道具の使い方を教えたり、

よく“遊び”に付き合ってくれた。」


「ただしその遊びは——

どうやって自分を倒すかを教えるものだった。」


「おじいさんは変わった知識をたくさん教えたけど、

同時に、この世界で一番その子を大切にしている人でもあった。」


「二人は山奥で暮らしていて、

ほとんど外の世界と関わりはなかった。」


「それでも、おじいさんはいつも遠くまで出かけて、

山の外からいろんなお土産を持ち帰ってくれた。」


「毎年の誕生日には、

必ず“謎解きゲーム”が用意された。」


「女の子は何段階もの試練を乗り越えて、

最後のプレゼントを手に入れる。」


「それは一年の中で、

一番幸せな時間だった。」


少し間を置いて、夏玖微は続ける。


「でも——中学に入ると、

女の子は山を下りて学校に通うことになった。」


「おじいさんの教育は完璧だったから、

山育ちでも成績は優秀だった。」


「だけど——」


「親がいないことは、すぐにクラス中に広まった。」


「クラスメイトは彼女をからかい、

やがて仲間外れにするようになった。」


「女の子は、とてもつらかった。」


「それでもおじいさんは、いつも言っていた。」


『いつか分かる日が来る。

どうしてこんなことに出会うのかを。』


『でもその前に、

自分で向き合うことを覚えなさい。』


『それはすべて、試練だからだ。』


「やがて女の子は、

そういう声を気にしなくなっていった。」


「性格も少し大雑把になって、

悪口や嘲笑にも動じなくなった。」


「そして——」


「それなりに良い高校に合格して、

新しい生活が始まった。」


「成績もよくて、見た目も悪くない。」


「“友達”もできた。」


「すべてが、うまくいっているように見えた。」


「でもある日——」


「一人の男子が、彼女に告白した。」


「女の子は彼を好きじゃなかったから、

丁寧に断った。」


「でもその男子は受け入れられなくて、

クラスメイトを巻き込んで彼女を孤立させ始めた。」


「最初はただの悪口だった。」


「でも次第に——

それは実際の嫌がらせへと変わっていった。」


「ある日、彼女はトイレで囲まれた。」


「その瞬間——」


「ついに、我慢の限界が来た。」


「彼女は反撃した。」


「その結果、

彼女を囲んでいた生徒たちは全員、床に転がることになった。」


「騒ぎは大きくなって、

学校は三者面談を開いた。」


「でも相手の親には多少の権力があって、

結局、問題はあっさり片付けられてしまった。」


「それからは、

あからさまないじめはなくなった。」


「代わりに——

もっと陰湿なやり方に変わった。」


「向こうはいつも言い訳を用意している。」


「でも彼女が反撃すれば、

“いじめる側”にされてしまう。」


「だから彼女は——」


「毎日のように傷ついていった。」


「そして、ある日。」


「突然押された拍子に、

バランスを崩した。」


「その瞬間——」


「世界が、ひっくり返った。」


夏玖微は少し言葉を止める。


そして、陸念安を見る。


「気がついたとき——」


「彼女はもう、

『裏世界』と呼ばれる場所にいた。」



教室の中は静まり返っていた。


聞こえるのは、

互いの呼吸の音だけ。


長い沈黙のあと。


陸念安が、小さな声で言う。


「……あの。」


彼女は指をぎゅっと握った。


「私の話も……」


少し迷ってから、続ける。


「聞いてくれる?」

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