第81話:破壊の聖者
ついにこの話までたどり着きました!
ここでちょっと一つ明かしておきたいことがあって……なろうでの俺のユーザー名「ケン・アラタカ」なんやけど、これ本名ちゃうねん(笑) 本名はクリスティアン(Cristian)っていいます!
この物語は昔からずーっと頭の中にあったから、このキャラの名前をそのままペンネームにしてたんよね。
というわけで、この話でついに「本物のケン・アラタカ」が登場します!wwww
【ケン・アラタカ視点】
俺の名前はケン・アラタカ。
現在はウォーリック王国の騎士として仕えており、上官たちの話によれば、俺はウォーリック王国騎士団全体で最も強い代表騎士らしい……まあ、少なくとも魔導王様が不在の間に限った話だがな。あの称号を冠するお方々に比べれば、俺なんて取るに足らない存在だ。
自分の強さをひけらかすのは昔から好きじゃない。
何しろ俺は、剣一本で山を真っ二つにできるような人間たちに囲まれて育ったんだ。彼らに比べたら、自分はいつだって……至って普通だと思っていた。
俺の母親は、古のザリア王朝の血を引き継いでいた。
今や物語の中にしか存在せず、生存者もほとんど残っていない一族だ。父親については、あまり多くを知らない。長い期間家を空けていることが多く、彼に関する記憶のほとんどは酷くぼやけている。
おかしなことに、親父は俺に凄腕の剣技も、軍事の奥義も教えてくれなかった。
その代わり、見知らぬ奇妙な言語を教えてくれた。
「これは日本語というんだ」
親父は何度も何度もそう繰り返していた。
長年、俺は彼が捏造した独自の言語なのだろうと思っていたが、やがてそれが全く別の場所から来た言葉なのだと理解した。なぜあそこまで熱心に教え込もうとしたのか理由は明かしてくれなかったが、今思えば何か深い理由があったのだろう。
俺の幼少期は、要塞都市ミレイヤで過ぎ去った。
今でも目を閉じれば、あの巨大な城壁、修練場、そして日の出とともに響き渡る剣同士がぶつかり合う音を思い出せる。普通の子供なら怯えてしまうような場所かもしれない。
だが俺にとっては、そこがただの「我が家」だった。
そこには、人類が知る限り最強の戦士たちが共に暮らしていた。
ザリアの一族だ。
物語が大袈裟に語っていると思う奴がいるなら、そいつは間違っていると断言できる。
彼らは伝説で語られる以上に、遥かに凄まじかった。若者たちは倒れ伏すまで稽古に励み、大人は己の技術を磨き続け、老人は軍隊丸ごとを滅ぼせるほどの化け物であり続けた。
誇り高い氏族だった。
あまりにも、誇り高かった。
だが、決して偽善者ではなかった。
誰かを認める時は、心の底から敬意を払った。
そして、誰かを蔑む時も……
決して隠すことなく、堂々と見下した。
俺は混血だったため、ザリアを象徴する圧倒的な力を完全に受け継ぐことはできなかった。純血のザリアではないと釘を刺してくる者もいれば、まるで本当の家族であるかのように接してくれる者もいた。
彼らに恨みを抱いたことは一度もない。
歳を重ねるにつれ、あの人たちはただ、世界の中の誰よりも激しい熱量で生きていただけなのだと理解した。
憎む時は……
魂の全てをもって憎んだ。
そして愛する時は……
その人のために命だって投げ出すことができた。
だからこそ今でも、彼らの中で育ったことを俺は誇りに思っている。
俺の人生は、ずっと変わらず続いていくはずだった……
親父が予想外の決断を下さなければ。
十二歳の誕生日を迎えたまさにその日、親父は俺を連れ出し、ミレイヤを去らねばならないと告げた。
それはお願いではなく、
命令だった。
王国の王都へと旅立ち、騎士アカデミーに入学して帝国騎士としての訓練を始めるようにと。
正直なところ……
去りたくはなかった。
だが俺は、親父の決断に口答えするような息子でもなかった。
そうして、俺の新しい日常が始まった。
アカデミーでの最初の数ヶ月は、思っていた以上に過酷だった。夜が明ける前から夜遅くまで訓練が続き、ようやく終わる頃には立ち上がっている体力すら残っていなかった。
そんな時期に、俺は資材置き場の片隅に忘れ去られていた古い一本の槍を見つけたんだ。
ごく普通の槍だった。
柄には亀裂が走り、刃はボロボロに欠けていた。
他の誰かならゴミ箱に放り投げていただろう。
だが俺は、なぜかその槍が哀れに思えた。
俺は自分の手でそれを修復した。
刃を磨き上げた。
柄を取り換えた。
先端を研ぎ直し、まるで新品のように仕上げた。
伝説の武器なんかじゃない。
それはただの……俺の槍だった。
少なくとも、あの夜までは。
覚えているのは、何時間も雨の中で訓練を続けて酷い高熱を出していた時のことだ。まぶたを開けていることすらやっとだった頃、猛烈な轟音がアカデミー全体を揺らした。
そして、それが起きた。
一本の雷光が、中庭に直接落ちたんだ。
そして槍を手にしていた俺を直撃した。
終わった、と思った。
だが、目を覚ますと……
起き上がって手にした武器は、もう以前の姿ではなかった。
その表面全体が密度の濃い黄金の輝きを放ち、まるで雷そのものが内部に閉じ込められたかのようだった。もはやありふれた武器ではなく、古い伝説から抜け出してきたかのような神器――『黄金の槍』へと変貌を遂げていた。
あの日以来、その槍が俺の手から離れることは二度となかった。
訓練、任務、試験を重ねながら年月が過ぎた。少しずつ騎士として成長し、俺は現在の自分へと至った。
そして……
多くのことを変えてしまうことになる、一人の少女と出会った。
彼女の名前は……
ロゼット・ベイカー。
初めて彼女を見た時、アカデミーの中で迷子になったのかと思った。
あまりにも真剣な表情で歩いていたので、自分がどこから来たのかを思い出そうとしているように見えたんだ。彼女は名門貴族の令嬢だったため、多くの候補生たちは敬意から……あるいは厄介事に巻き込まれるのを恐れて距離を置いていた。
俺はただ噂を聞いているだけだった。王宮で聖剣を握っただの、上層部が彼女に注目しているだの、いつか偉大な騎士になるだの。
嘘をつくつもりはない。
猛烈な嫉妬を感じた。
なにしろ、この世界の戦士なら誰もが英雄カマエルの遺品に触れることを夢見る。それなのに、あの少女はまるでどこからともなく現れて、その所有者になってしまったんだからな。
俺が古い槍を何度も直しながら泥臭く訓練を積んでいる間、彼女は既に伝説の剣に選ばれていた。
まあ、俺の槍だって雷を受けて堂々たる姿に生まれ変わり、誇れるものになってはいたがな。
人生というのは、つくづくタチの悪いユーモアを持っている。
数週間が経つ頃、俺はその新人候補生に基本の多くを教える担当になっていた。
身構え、体捌き、間合い、規律……果ては異なる武器同士の模擬戦で、正しく槍を扱う方法に至るまで。
最初、彼女はほとんど口をきかなかった。
短い言葉で返事をし、軽く首を傾げ、まるで他のすべてが存在しないかのように再び訓練に戻る。
ずっとそんな調子なのだろうと思っていた。
間違っていたよ。
周囲に心を開き始めた頃、あの冷たそうな外見の下に全く別の少女がいることを知った。
優しく、何かに興味を持つと相当な分からず屋で、認めたがらないものの気も強かった。勝負に負ければ夜遅くまで稽古に打ち込み、失敗すれば正しくできるようになるまで何度も何度も同じ動作を繰り返した。
負けることが我慢できなかったんだ。
そしてそれは、奇妙なほどにザリアの者たちによく似ていた。
まあ……実際、誰もが伝説の氏族に憧れていたわけだが。
憧れない奴なんて巡り合えないだろう?
あの王朝の男たちも女たちも、何世代にもわたって人類を守り続けてきたんだ。
歌に詠まれ、童話に書かれ、歴史書に刻まれた名前。多くの者にとって彼らはヒーローだった。他の者にとってみれば、さらに恐ろしい化け物を倒せる化け物だった。
ローズもまた、彼らを心から尊敬していた。
彼らにまつわる物語を聞くたび、まるで新しい世界を発見した幼子のように、途切れることなく質問を投げかけてきたものだ。
そんな時、今でも完璧に覚えている出来事が起きた。
ある日、親父がアカデミーの俺を訪ねてやってきた。
頻繁に姿を見せるような男ではなかったので、俺は彼と過ごせる時間を一分一秒惜しんで大切にした。
彼はほとんど偶然のような形でローズと知り合い、驚いたことに、二人はまるで昔からの知り合いであるかのように言葉を交わし始めた。親父は無口だったが、誰かが彼の好奇心を刺激した時は何時間でも会話を続けることができた。
会話の途中で、彼は自分の故郷について口にした。
人々が全く異なる言語を話す、遥か遠い場所から来たのだと。
「日本語」という名の言語。
ローズは、めったに見せないほど瞳を輝かせた。
「私にも教えていただけませんか?」
親父は軽く笑った。
「役に立つような知識だとは思わんがね」
だが彼女は食い下がった。
一度。
二度。
十度。
結局、親父は折れて承諾した。
おかしなことに、本当にその言語を習得したのは俺じゃなかった。
ローズだったんだ。
未だに信じがたい。
俺はあの男の息子でありながら、せいぜい二三の単語を口にするのが精一杯だったというのに、彼女は音や表現、言い回しをあり得ないほどの飲み込みの早さで暗記していった。二人が何を話しているのか全く理解できないまま、会話する姿を呆然と眺めていたことが何度あったことか。
もどかしかった。
まるで別世界の光景を見ているようだった。そして、少しだけ面白くもあった。
立ち去る前、親父は俺を連れ出した。
城壁の向こうへ日が沈み始め、風がアカデミーの旗を揺らしていた光景を今でも鮮明に覚えている。
「まだお前に話していなかったことがある、ケン」
俺は何も言わずに彼を見つめた。
「お前は本来、この世界の様式に則った名前を授かるはずだった。だが、私が選んだ名前を付けようと決めたのはお前の母親だ」
俺は眉をひそめた。
「どうして?」
彼は答えるまでに数秒の時間を置いた。
「お前がもう一つの場所にも属しているのだということを、決して忘れてほしくなかったからだ」
その言葉の意味を俺は理解できなかった。
今日に至るまで、理解できているとは言えない。
親父については分からないことが多すぎる。
彼が答えてくれなかった問いがあまりにも多すぎる。
そして年月とともに、どんな説明よりも重くのしかかってくる静寂があまりにも多すぎた。
その訪問以来、俺は長い間親父に会うことはなかった。
そして……
悲劇がミレイヤを襲った。
ローズと出会ってから二年が経過した頃、国境付近から懸念すべき報告が相次いで届き始めた。
偵察兵たちは異様な動きを報告していた。伝令たちが休みなく行き交っていた。
軍事会議室からは緩やかな会話が消え去り、将軍や参謀たちが一晩中地図を囲んで議論する緊急会議へと取って代わられた。
魔神の軍勢が集結している。
その知らせは野火のように広まった。
真っ先に動いたのは、いつだってザリアの者たちだった。
人類の防衛線を構築するために俺たち残りの王国が半島へ軍を動かす間、彼らが敵を食い止める壁となるはずだった。
誰も彼らを疑わなかった。
何しろ……
彼らはザリアなのだから。
俺たちは彼らが到着まで持ちこたえてくれると信じて、数日遅れて出発した。
だが、ついにミレイヤへ辿り着いた時……
……既に遅すぎた。
二度と親父に会うことはなかった。
死んだのだと思う。
証拠はない……だが、疑いようもない。
彼は最後のザリア王子の親衛隊長だった。
ミレイヤが落ちたのなら、彼のような男が自分だけ助かるために持ち場を離れるなんてあり得ない。そんな生き方は絶対にしない男だ。うちの親父は、逃げ延びた重荷を背負って生きるくらいなら、剣を握りしめたまま死ぬことを選ぶような馬鹿な奴だった。
彼はこの世界の存在ではなく、マナも絶大な力も持っていなかった。だが彼の頭脳と戦略は極めて重要だった。いつか俺に話してくれたところによれば、彼の戦略は『エイジ・オブ・エンパイア』というゲームから得たものらしい。
エイジ・オブ・エンパイア……それが一体何なのか、さっぱり分からんがな。
それが、彼が俺に残した最後の教訓だったのだろう。
ミレイヤの戦い。それは俺の故郷の廃墟で行われた、人類の軍勢と魔族の軍勢による激突だった。
ザリアの古の故郷、要塞都市ミレイヤ。
惨劇の後、輪をかけて異様な知らせが届き始めた。
ローズが人生で最も重要な任務を言い渡されたと聞いた。誰も詳細は教えてくれず、ただ上層部によって命じられた極秘作戦であり、人類の未来がそれにかかっているということだけが伝えられた。
すべてが上手くいくと信じたかった。
なにしろ……不可能な任務を成し遂げられる奴がいるとすれば、それは彼女だ。
だが、悪いことというのは、不思議と重なるものだ。
直後、さらに酷い噂が流れ始めた。五人の魔導王が戦い……そのほとんどが戦死したと。
たった一人だけが生き残ることができたのだと。
それを聞いた時、胃が締め付けられるような感覚を覚えた。
あの化け物のようなお方々ですら倒れるというのなら……一体どんな敵を前にしているというんだ?
月日はゆっくりと流れていった。
ある日、王都に駐屯していた俺たちの元へ、ローズが帰還したという報告が入った。
嘘はつけない。
心から嬉しかった。
少なくとも自分にとって大切な人間の一人が生きているのだと思えたから。
だが、その安らぎはほんの一瞬しか持たなかった。
ほぼ同時に、恐ろしい気配に関する報告が届き始めた。大陸の様々な場所で感知されている、おぞましい魔気のオーラ。
魔王の復活。
悪寒が走ったのを覚えている。
直感が、その二つの知らせが繋がっていると告げていた。
それが気のせいであってくれればよかったのに。
しばらくして、俺はミルバー共和国への偵察任務を命じられた。そこで俺はその国の奇妙な指導者と会談を行った。彼こそが、彼が主張するところの真相のすべてを明かした人物だった。
その異様な人物こそ、軍神だった。
彼の一言一言が、胸を直接殴りつけられるパンチのようだった。
ロゼット・ベイカーは……
……人類を裏切った。
託された任務に失敗しただけではない。
その男の言葉によれば……
……彼女は魔王そのものの味方となったのだという。
俺は数分間、黙り込んだまま動けなかったのを覚えている。
信じたくなかった。
ただ……
……信じられるはずがなかった。
俺の知るローズが、そんなことをするはずがないのだから。
だが、それからさらに多くの報告が届き始めた。
さらなる証言。
さらなる目撃者。
次から次へと。
そして少しずつ、その嘘……あるいは真実が……大陸全体を包み込んでいった。
その時、俺はアカデミーの仲間たちのことを思い出し始めた。
何年も共に訓練を重ねた奴ら。
自分たちが人類の未来を守っているのだと信じて戦場で死んでいった奴ら。
それから母親を思い出した。
次に親父を。
そしてザリアの者たちを。
ミレイヤの街を。
別れを告げる墓標すら残さずに消え去っていった、あのすべての人々を。
そして初めて……
ローズに対する怒りを覚えた。
憎しみから生まれた怒りじゃない。
失望からくる怒りだ。
もしすべてが本当なら……
……あのすべての死は、何の意味もなかったことになってしまうのだから。
ミルバーでの遠征は俺にとって失敗に終わり、ロゼット・ベイカーという今や世界の裏切り者となった女は逃亡し、魔王については何も分からないという悪い知らせを抱えてウォーリックへ戻るしかなかった。
誰も彼女の居場所を掴めないまま、月日は流れ続けた。
それが起きるまでは。
ある日……
世界全体が揺れた。
あの咆哮を今でも覚えている。
どの王国に居ようと関係なかった。農民であろうと、貴族であろうと、騎士であろうと。まるで空そのものが咆哮したかのように恐ろしい気配が大陸を駆け抜けた時、俺たちは全員同時に顔を上げた。
誰も説明する必要なんてなかった。
魔王が目覚めたのだ。
間もなくして、ヘッセン王国から報告が届き始めた。
すべての手がかりがそこを指し示していた。
そこで上層部は一つの決断を下した。
神術士様に次ぐ、人類最強の五人の戦士によって特別遠征隊を編成する。
任務は単純だ。
ロゼット・ベイカーを捕獲すること。
そして、魔王に対する決定的な伏兵を準備すること。
そうして俺たちは旅立った。まあ、俺はカミーユ女王陛下に直訴して、魔導王様方に同行できるよう命じてもらったわけだが。
陛下は承諾してくださった。
それからの出来事はあまりにも急速だった。
俺たちは彼女を見つけ出した。
捕獲した。
その時点では魔王の気配を感知できなかったため、ヘッセン王国との外交問題を回避し、ウォーリックの厳格な騎士道精神を遵守するためにヘッセンの領土を離脱した。
決断は、彼女を護送すること。
裁くこと。
そしてあの場所から遠く離れた地で判決を執行すること。
誰もその勝利を祝わなかった。
俺ですら。
なぜなら、鎖に繋がれ、頭を垂れ、両手を拘束されて歩く少女を見つめながら……
……俺は今でも、剣の構えを何度も直しにやってきた、あの不器用な少女を思い出していたからだ。
ザリアの物語を聞いて目を輝かせていた少女を。
親父のあの奇妙な言語を覚えるまで食い下がっていた少女を。
なんて皮肉なんだろうな。
運命は結局、かつて自分の隣で訓練していた人間を断罪人の前に座らせてしまった。
そして今……
幾多の戦争を経て。
幾多の失いしものを重ねて。
そして答えのない幾多の問いを抱えて……
俺はここにいる。
かつて仲間だった彼女が処刑される瞬間を待ちながら。
俺が好意を寄せていた少女。
憧れを抱いていた少女。
そして、もしかしたら……
……打ち明ける勇気を持てなかった、もっとずっと深い感情を抱いていた少女の最期を。




