表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に恋をして、世界に裁かれた  作者: ケン・アラタカ
第一章:東京の女騎士
8/12

第7話:学園の中世騎士


【ローズ視点】


 二日が過ぎた。リュウジン先生の家に来てから。ずっと――不思議なもてなしを受けている。


 清潔な服。温かい食事。そして、眠る場所。……まだ、慣れない。


 キヨミさんは、木の剣をくれた。


「剣術、好きでしょ?」


 と。……たぶん、見られていた。箒で素振りしていたところ。


(……みっともない……)


 でも――仕方ない。何かで、鍛えないと。  優しい贈り物だった。……でも。本当は。私の剣がいい。ヘヴンソードが。


 階段を降りながら、訓練に向かおうとした時――声が聞こえた。下から。強い声。


「行きたい」


 ヨシダの声。低く、はっきりと。


「……お前は変わらないな」


 リュウジン先生の声は、落ち着いている。


「いい。好きにしろ」


 少し間。


「でも、一人じゃ行かせない」


「は?」


 苛立ちが混じる。


「誰か必要だ。万が一のために」


 足音。行ったり来たりしているようだ。


「キヨミは当直もあるし……」


 顎に手を当てている気配。


「誰かいればな……」


「いらない」


……なるほど。そういうことか。静かに引き返そうとした――その瞬間。  木の剣が、手から滑る。


(あ……)


 コロコロコロ……!  


階段を転がる音が、 やけに大きく響いた。


ガタン!


 床に落ちる。……最悪だ。


「ローズさん?」


 リュウジン先生の声。近づいてくる。  しゃがみ込んで、剣を拾う。できるだけ、堂々と。


「え、えと……リュウジン先生……」


「ローズ……です……」


(……何を言っている、私は)


 ヨシダはそのまま、動く玉座(ゴーレム)で去っていった。


 その後――リュウジン先生は私に、お茶を出した。温かい、落ち着く味。


(……おちゃ……)


 そして――頼まれた。ヨシダについていって、近くで見てほしい、と。  断る理由はない。恩がある。それに――おかしな頼みでもない。……たぶん。


 騎士としての本能が、勝手に動いた。それに。


(がく……えん……?)


 情報がある場所。悪くない。


「アイツは頑固だからな――」


 リュウジン先生の声。……でも。私は、考え事をしていた。


「聞いてるか、ローズ?」


「え?」


 しまった。聞いてない。


「は、はい! 了解りょうかいです!」


 とにかく答える。……こうして。ここに来た。学園。


 朝の光が、白いカーテンから差し込む。私は窓際に座る。


……制服。


 リュウジン先生に言われて、着ている。動きにくい。でも――目立たないらしい。


 教室の中。ざわざわ。椅子の音。足音。妙な場所だ。でも――整っている。  隣で、ヨシダが話しかけている。


「えっと……おはよう……」


 声は小さい。……弱い?  周りは。一瞬見る。すぐに逸らす。聞こえないふり。


「新しいやつ?」


「なんか変……」


「白くない?」


 ヨシダは。怒らない。ぎこちなく笑う。うなずく。……何もなかったみたいに。  その笑顔。強くない。でも――嘘じゃない。


(……諦め?)


 一方で。私は何もしていないのに。視線が集まる。


「誰?」


「外国人?」


「かわいい……」


 何人か、近づいてくる。ニコ。


「髪、きれいだね」


「どこから来たの?」


……落ち着かない。戦場なら、視線は危険。ここは――違う。  軽くうなずく。窓を見る。空。静かすぎる。


 ヨシダは、馴染めない。私は、何もせず馴染む。……どっちが悪い?


 少しだけ、彼を見る。皆を見ている。一つ一つ。覚えようとするみたいに。……まるで。時間がない人間みたいに。


 胸が、動く。


ドキ……ドキ……


 違う。同情じゃない。……なんだ?  なぜ、ここにいる。なぜ、笑う。ここに、居場所がないのに。


 机の端を握る。……人間、面倒だ。立ち上がる。


ガタッ。


 空気が止まる。シーン……。


「どこ行くの?」


 男の声。無視。


「すみません……」


 ヨシダのところへ行く。その瞬間。


「来るな」


 冷たい声。止まる。


「リュウジン先生が……」


 言いかける。


「俺は」


 ヨシダ。


「何もいらない」


 短い。硬い。刺さる言葉。


……。 胸が、締まる。拳を握る。


……理解できない。ずっと冷たい。我慢していた。でも――必要ない。あの態度は。


 一人の男が近づく。


「おい、新入り」


 空気が重くなる。


「問題あんのか?」


 視線が集まる。


「聞いてんのかよ!」


 手が伸びる。首へ――その前に。掴む。


ガシッ。


 手首を。強く。


「やめろ」


ギリ……。男が顔を歪める。


「い……て……!」


 声が響く。怒りが、上がる。その時――見た。ヨシダの目。


……違う。 静かな。沈んだ光。


……。 理解した。これ以上は――悪くなる。


 手を離す。男は下がる。文句を言いながら。  ヨシダは。動かない。ただ。私を見る。


……。 背を向ける。教室を出る。


 もう――いたくない。視線。ひそひそ声。全部、背中に刺さる。


(……なんで……ここ……)


 子供の世話なんて。するためじゃない。……何してるんだ、私は。くそ……。  騎士として。命令に従った。それだけで。ここにいる。


……馬鹿だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ