表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に恋をして、世界に裁かれた  作者: ケン・アラタカ
第二章:新世界への到達
24/27

第23話:ローズの願い

【吉田視点】


ローズが目を覚ましてから、一日が過ぎた。

それからというもの――彼女は、どこか変わってしまった。


あの頑固で、人懐っこくて、どこか抜けていた少女の面影は薄れ、代わりにそこにいるのは、より静かで、より鋭く、そして距離を感じさせる存在だった。

まるで胸の奥で、誰にも見えない戦いを続けているかのように。


もっとも、無理もないのかもしれない。

ここ数日で起きたことは、どれも現実とは思えないほど異常で、恐ろしくて……未だにどこかで夢なんじゃないかと疑ってしまう。


望。

あの落下。

ローズ。

そして、この世界。


それに――まだ塞がりきっていない傷のように、脳裏にこびりついて離れないもの。

兄貴――龍神の死。


あの時のことは、今でもはっきりと思い出せる。

真実を知った瞬間。どうやって死んだのか。どれほど理不尽に、呆気なく終わってしまったのか。

あの記憶は、一時期……ただただ、死にたいという気持ちを強くするだけだった。


けれど、今は違う。


(帰りたい……)


無事に、元の場所へ。

自分のためじゃない。

ローズのために。


ここがどんな場所であれ――はっきりしていることが一つだけある。


(この世界は……俺たちを歓迎していない)


彼女の言葉を思い出す。

そんなことを考えていた時だった。


「吉田。少し外へ出てくる」


不意に声をかけられ、視線を上げる。

すでに立ち上がっていた。

乱れた髪を軽く整え、岩壁に立てかけられていた黒い剣へと手を伸ばす。


その動きは、あまりにも自然で――

まるでそれが、最初から自分の一部であるかのようだった。


「少し周囲を見てくる。ここがどこなのか、確かめたい……それに、少し頭も冷やしたい」


落ち着いた声だった。

黙ってその姿を見つめる。

話し方も。立ち方も。剣の持ち方も。

どれも以前とは違う。


(……まるで、兵士みたいだな)


「一緒に行けたらよかったんだけど……まだ、ちゃんと動けない」


思わず漏れた言葉は、情けないくらい弱々しかった。

彼女は数秒ほどこちらを見つめると、顎に手を当てて少し考えるような仕草を見せる。


「焦る必要はない。自分のペースで慣れていけばいい」


そして、ほんのわずか間を置いてから――


「赤子でもできることだ。あなたにもできるはずだ」


……


(それ、今言う必要あったか?)


内心でため息をつく。

彼女はくるりと背を向け、そのまま洞窟の出口へと歩き出した。


小さな焚き火の炎が揺らめき、彼女の影を歪ませながら岩壁に映し出す。

その影は、ゆっくりと細くなり――やがて外の闇へと溶けるように消えていった。


そして――

一人、取り残される。

……いや。


完全に一人、というわけでもなかった。

足元では、小さな温もりがもぞもぞと動く。


あの獣の子どもたちが、体温を求めるように脚へと擦り寄ってきていた。

小さな体が規則的に上下し、安心しきった様子で眠っている。


母親の姿はない。

朝からずっと外に出たまま、まだ戻ってきていなかった。


あの巨大な生き物が何なのか――正確には分からない。

けれど、ここに運ばれてきてからというもの、妙にこちらに懐いているように感じる。


ほとんど毎日、何かしらの獲物を咥えて戻ってきては、それを目の前に置く。

まるで餌を与えるみたいに。


(……餌付けされてるのは、こっちの方かもしれないな)


苦笑が漏れる。

奇妙な状況のはずなのに――

どこか、落ち着いている自分がいた。


だが今日は、その戻りが遅い。

岩にもたれかかりながら、ぼんやりと洞窟の奥を眺める。


焚き火の火が、ぱちぱちと乾いた音を立てて揺れている。

外とは違い、ここはひんやりとした空気に包まれていて、肌にじっとりとまとわりつく。

その静けさが、逆に意識をぼやけさせていく。


瞼が重い。

ほんの少しだけ、目を閉じるつもりだった。


(少しだけ……)


そう思ったはずなのに。

気がつけば――意識は沈んでいた。


どれくらい眠っていたのか分からない。

けれど――


不意に、音がした。

最初は夢の続きかと思った。

遠くで、何かがぶつかるような鈍い音。


だが、それは一度では終わらない。

再び。

そして、何度も。


次第に輪郭を持ち始める。

足音だ。

しかも、一つじゃない。

複数。

砂を踏みしめるような、重く速い足取り。


それに混じって――

叫び声。

人の声。


(……人間?!)


一瞬で、眠気が吹き飛んだ。


物語はまだ始まったばかりで、ようやくエンジンがかかってきたところです。まずは今の章の次に来る大きな長編を書き終えることを、第一の目標にしています。もしそこまで描き切っても手応えが足りないと感じたら、次はアイドルをテーマにした新プロジェクトに挑戦しようと考えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ